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研究セミナー特集

Seminar07 アドバンストエクステンション講座 街の顔・魅力的な駅周辺地域を考える 地域経済や街のにぎわいの観点から

※本講座は地域の方の生涯学習の一助として行われる公開講座です。
開催日 / 2019年11月30日(土)開催
開催会場 / 横浜市立大学 金沢八景キャンパス YCUスクエア4階 Y401教室
講演 / 中西 正彦 准教授、 影山 摩子弥 教授、 大島 誠 准教授

本アドバンスドエクステンション講座は本学大学院都市社会文化研究科の3名の講師陣によって展開されました

  • MASAHIKO NAKANISHI中西 正彦 准教授

    横浜市出身。1994年、東京工業大学工学部卒業。修士課程を経て、2000年、同大学院社会理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。学術振興会特別研究員などを経て、2002年より東京工業大学助手(その後、助教)。2013年より横浜市立大学大学院都市社会文化研究科に所属。
    専門は都市計画。特に土地利用コントロールに関する制度論・計画論。

  • MAKOYA KAGEYAMA影山 摩子弥 教授

    早稲田大学商学部卒。
    1989年、横浜市立大学商学部にて専任講師、助教授、教授を経て、2005(平成17)年より国際総合科学部教授。2006年より横浜市立大学CSRセンターLLCセンター長を兼務している。研究テーマとして「経済を生活の論理およびシステムという観点から明らかにする方法の解明」、さらに「NPOやCSRの必然性や協働の意味をシステム論的に解明する」等をあげ、精力的に活動を行っている。

  • MAKOTO OSHIMA大島 誠 准教授

    早稲田大学大学院、横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期グローバル経済専攻単位取得、満期退学。博士(横浜国立大学、論文博士、経済学、2008年)。関西学院大学、徳島大学大学院を経て2013年より横浜市立大学講師、准教授として勤務。専門は財政学、地方財政論、公共経営論、都市政策論。近年は主にPFI(Private Finance Initiative<民間資本主導>)方式に関する研究、公共経営と民営化に関する研究、地域環境政策に関する研究を中心に活動を行っている。

  • 中西 正彦 准教授の写真 中西 正彦 准教授の写真

    中西 正彦 准教授

  • 影山 摩子弥 教授の写真 影山 摩子弥 教授の写真

    影山 摩子弥 教授

  • 大島 誠 准教授の写真 大島 誠 准教授の写真

    大島 誠 准教授

身近な地域の話から、日本が抱えるまちづくりの課題を知る

今回のアドバンストエクステンション講座は、急激に進む超高齢化・少子化の中にあって、我が国が取り組むべき、これからの都市計画やまちづくり、駅前開発、さらには公共機関と民間企業の連携といった、極めて現実的な課題について、本学大学院・都市社会文化研究科の教授および准教授計3名が交代で講師を務めて行われました。また、参加者の方の年齢や性別、立場もさまざまであり、中には仕事で都市計画に携わっていらっしゃる方も参加されており、皆非常に真剣な眼差しで聴講されていました。
 今回の講座の概要や進め方は次のようなものでした。まずは都市計画に関する法律から課題、実態までに詳しい中西正彦准教授が全体の進行役を兼ねつつ、座学に入っていきます。配られた資料には「街の顔・魅力的な駅周辺地域を考える」と題されており、駅周辺というものがどのような人達によって、どのように開発されてきたかについての考察が行われました。明治時代に始まった都市開発は鉄道と駅がセットであったことが説明されます。具体的には阪急電鉄が早くから都市開発を行っていたこと、東急電鉄はもともと田園都市開発という会社がルーツであり、駅周辺の開発がはじめから見込まれていたことなどが紹介されました。身近なエリアのお話が多いので、思わず引き込まれてしまう、そんな講座が進んでいきます。そして、中西准教授の専門でもある都市計画や土地区画整理事業のお話になっていきます。そして、まさにこの時期に、本学の最寄り駅でもある金沢八景および、シーサイドライン駅周辺の大規模再開発が行われている最中であり、すぐそこにに研究題材があるので、皆でフィールドワークをしましょうと語られました。
 そして講座は進み、地方財政や都市計画における官と民の連携と言ったことに詳しい大島誠教授のお話へとバトンタッチされます。大島教授は自身の研究テーマでもある、新しい開発形態「PFI=Private Finance Initiative<民間資本主導>型の開発」について、現在戸塚駅西口駅前開発でとられているこの手法の効果と課題などが紹介されました。これは、公共施設などの建設や維持管理、運営などに関して民間の資金やアイデア、経営手法を取り入れ、商業施設などと併せて高質なサービスを提供できるようにするというもので、経済波及効果が期待できる反面、資金調達方法に難しさがあり、また、どこまでを公共とみなすべきかが曖昧になるといった課題もあることなどが話されました。
 そして午後2時頃より、街づくりと経済、生活、システムの結びつきについて研究されている影山摩子弥教授が登壇し、近年の少子化、超高齢化に伴って、各地の商店街がどのように衰退していったか、また、それに対する対策がどのようなものであり、効果があったかどうかといた、我が国が抱える大きな課題に関してのお話がありました。特に印象的であったのが、最近の調査で日本の単独世帯の比率が40%であるということ、つまり一人暮らしが非常に多いことで、商店街であれ、観光地であれ、そこに落ちるべきお金がなかなか増えないといった問題が指摘されました。

再開発の姿を目の当たりに!金沢八景フィールドワーク

座学が一旦終了し、中西教授が再び登壇。先ほど紹介された金沢八景駅前再開発を実際に見るという、フィールドワークへ出発ということになりました。大学院の教授とともに行うフィールドワークというものがどのようなものか、多くの聴講生の方は興味津々の様子です。大学正門を出るとすぐそこに、以前はなかった金沢八景駅へ登る真新しい長い階段とエレベーターがあります。その横にある古い民家の佇まいとの違いが早速目につく、不思議な空間でもあり、今まさに古いものと新しいものがどのように変わっていくのか、共存できるのかどうかといった疑問が湧いてきます。中西准教授と2名の教授陣、そして聴講生がひとかたまりになって、駅の反対側、再開発で大きなビルや新しいターミナルができているところを見学しながら、どのような経緯と目的でこの再開発が始まったのかについて、ガイドブックやマップを示しながらの解説が行われ、それを聞きながら目の前の再開発の光景を見学するという貴重な時間が過ぎていきました。講師の話を聞きながら、それぞれに想いや感想、アイデアを考え、後ほどディスカッションをしましょう、という提案を胸に、皆で大学構内に戻っていきました。

グループディスカッション

金沢八景駅前再開発を見て、また講師陣の話を聞いて、自分がどのように感じ、どうしたらより良い駅前を作れるかを語り合い、金沢八景駅前開発についての改善提案をグループで考えて発表しましょう、というワークショップが行われました。互いに面識のない方々がグループを作り、代表の方が発表するという、本格的なプレゼンテーションスタイルであり、それぞれに活発な意見交換が行われました。
 さまざまな提案が行われましたが、金沢八景が持っている自然の美しさや東京や横浜の中心街とは異なる独特の趣を大切にした上での開発、コミュニティとして優れた機能や工夫を考える必要性があるなどの意見が出され、とても有意義な雰囲気の中、あっという間に時間が過ぎ、閉会となりました。
 ここで得られた知識や見聞をそれぞれの地元に持ち帰り、周りの人たちを巻き込んで街づくりを住民の立場から考え、発信していくことが大切な時代に入ったのではと思える、そんな充実した1日となりました。