NORIE MIWA & YUKARI TAMURA Seminar03 NORIE MIWA & YUKARI TAMURA Seminar03

研究セミナー特集

Seminar03 「プレイスメイキングと子どもの居場所づくり」 まちづくりの現場からこどもの居場所を誘発する仕掛けづくり

開催日 / 2016年11月29日(火) pm18:00〜19:30
開催場所 / 横浜市立大学 金沢八景キャンパス YCUスクエアY401
対談者 / 三輪律江 准教授
ゲスト / 田村柚香里 氏(ワークヴィジョンズ・プロジェクトマネージャー)

1. 三輪 律江 准教授による講演

三輪 律江 准教授

NORIE MIWA三輪 律江 准教授

三輪 律江 准教授

 (株)坂倉建築研究所、横浜国大を経て平成23年4月より横浜市立大学国際都市学系まちづくりコース准教授。博士(工学)。専門は建築・都市計画、参画型まちづくり、こどものための都市環境、環境心理学。
 大学では「市民まちづくり論」を教えているが、複数の自治体において建築・都市計画系審査会、市民協働関連の委員を務める一方、子育ち支援やまちづくりNPO理事なども複数務める。
 これまで商店街を中心にしたタウンマネジメントプロジェクトでの組織づくりやまち学習ワークショップを通じた世代間交流、荒廃した公園の再生事業を実践し、最近では「乳幼児生活圏」構築に向けた保育所×地域つながり力アッププロジェクトや多世代近居による郊外団地再活性化事業、中高生まちづくりインターン(神奈川県との協働事業)などに取り組んでいる。

プレイスメイキングとは

セミナー写真1

こんばんは、YCUの三輪です。この授業は、大学院の都市社会文化研究科の公開セミナーという形で一般の方にも来て頂いています。

このあとゲストの田村さんにお話していただく内容というのは、近年話題になっていますプレイスメイキングということについてになります。プレイスメイキングとは、ただのハードとしての場ではなく、ヒューマンスケールでまちを見た時にその空間の居心地が良くなり楽しいコンテンツが生まれ育ち、賑わいが生まれ魅力が増し、そしてまちの価値が上がっていくことそのものを指しています。

このプレイスメイキングという考え方にある価値の転換だったりとか地方の土地の新しい価値を生み出すといった「まちなか再生」というキーワードの中に、私が研究テーマとしています「子どもの居場所」というキーワードが非常に織り込まれていました。その点で、別の学会のシンポジウムで意気投合というか、私もすごく共感を持ちました田村さんにお話をしていただきたいという風に思い、今回このような機会を作りました。

今日のセミナーは「プレイスメイキング」を居場所づくりというキーワードでお話しさせていただきたいと思っています。その根底のところは都市における子どもの居場所の都市計画的な課題だったり、これからどういう風にしていかなくてはいけないかというところにありますが、まず最初に少し私の方で「都市においての子どもの居場所のこれまでとこれから」というテーマでお話しし、あとでその事例・実践例などを田村さんにお話ししていただくという流れにしていきたいと思います。

セミナー写真1

都市においての子どもの居場所のこれまでとこれから

これまでの都市計画でまちを作っていくという時によく話にすることなのですが、都市計画というもの自体が、人口増加ということと、コミュニティの人口構成が安定しているというのが前提で、今までは作られてきました。例えば公立の小学校があるとその都市の人口構成は安定しているとされて進められてきたんですけれども、これからの社会においては、局地的に人口が減少していくまちが出てきます。また、保育所を探すとか、就学前の子ども達が集積するような場所というもののニーズがここまで一般化するなんて誰も想定していませんでした。現在の子ども達は学校選択制や私学進学等学校が選べるようになりましたが、そういったような学校教育というところと子ども達の生活圏の関係が混乱している中で、「子育てするまち」ではなく、「子どもが育つ・育っていくまち」という観点からもう一回まちを見直していき、これから何をどういう風に作り直さなきゃいけないのか、という段階に来ています。

人間のライフサイクルの中で、どれだけ地域にコミット(積極的に関わる)しているかを表す図を作成しました。画面で見て頂くと、例えば図の真ん中にあります0〜6歳の子どもというのは親に依存して生活するものですが、ではその0〜6歳の子どもとお母さんの活動半径というのはどれぐらいなのかというと、大体300mぐらいになります。これは生活圏の最小単位としてコンパクトで一番わかりやすくて、お母さんと子どもはその活動半径の中での地域との関係みたいなものをすごく求めるんですね。この活動半径というのは成長するにつれてどんどん広がり、逆に地域との関わりは薄くなっていくのです。女性・男性で違うのは、女性の方は出産と同時にお子さんと一緒に地域とコミットしやすいということですね。

今「孤育て」と言う表現がされていたりするように、その時の地域のコミットの手法というものが、社会学だったりとか児童福祉の方で割と話題になっていますね。女性の方はこの時期に地域と接点を作れるチャンスがあるので、そのまま地域と自然に関わっていけるようなマインドが作れると地域にとってすごく良いんですね。

一方、男性の場合はというと、当然地域とコミットする機会が今までの社会の中、ライフスタイルの中ではなかったので、セミナー写真260代ぐらいになってきて、再び地域に帰ってきたりする人とそうでない人とかがいます。こういう地域のコミット具合と行動圏の整理をしていくと、人が地域とコミットする時期としては、0〜6歳の時期がすごく重要だというのがわかると思います。

で、その300m以内の環境・生活圏をどのように構築するか、ということにトライしているのですが、私が意識しているのはその中に居場所となる環境を作っていくということです。居場所っていうのは実は、主体的に関わっていくというキーワードが入ってくるんですね。ただ場所が提供されて、それを使うだけではない。感覚的にはわかるかと思いますが、提供されただけでは全然居場所にはならなくて、それは多分自分がその場所に介在する仕組みだったりとか、それをサポートする人がマネジメント的にセットになっている、そういう仕組みが存在している場所は、居場所というものになっていくと思います。

つまり、0歳から小中学生ぐらいの頃までにどのぐらい主体的に関われる仕組みを持って、どういう風に地域にコミットしていくかということが、実は街にとってはどういう風に変化を与えていくかを考えるということに繋がります。なので、まちづくりの中で子どものことを考えるということが、とても大事な視点になるかと思っています。

今は、こういう都市と子どもの居場所というのが問題になっている時代。それを戦略的にどういう風に進めていけばいいのかというのを考えていく時、ちょうど佐賀県で今日のゲストの田村さんが都市計画やまちづくりといったほうの専門家として活動されており、子どもの教育などの専門ではないにもかかわらず、結果的にそれに近いものになっているというのが分野を超えてすごく面白いなと思い、今日はぜひお話しを伺おうということになりました。

セミナー写真2