vol.8 地球内部の構造を明らかにして、防災に役立てたい 国際総合科学群 地震学 教授 吉本 和生(よしもと・かずお) vol.8 地球内部の構造を明らかにして、防災に役立てたい 国際総合科学群 地震学 教授 吉本 和生(よしもと・かずお)

地震に興味を持った学生と、この分野を成熟させたい

横浜市の観測データを一般に公開しています

 大学では、地震研究センターとして、横浜市の「強震計ネットワーク」の管理運営にも携わっています。横浜市では、市内の地震計で観測されたデータを集約して、約40カ所のデータを気象庁に配信しているほか、市のホームページでも情報を公開しています。これらの地震波形データは、申請すれば一般の方でも利用することができます。
 関東平野の堆積層の研究も、当初は横浜市の地下構造を詳しく調べることからスタートしました。研究を進めるうち、長周期地震動を正確に予測するには広域にわたる分析が必要なため、首都圏に広がったという経緯があります。これらのデータに基づく地盤構造のモデルで、横浜市や周辺地域の防災に貢献できればと思います。
 学生は研究室に入ると、地震に関する基礎知識を学んだ後に、データ解析などを通じた研究をスタートします。卒業生の就職先は教員や地方公共団体の職員など様々です。就職に役立てようという理由ではなく、地震そのものに興味を持って研究室に来てくれる学生が多いので、彼らの純粋な気持ちを大切にしてあげたいと思っています。

コミュニケーション能力を磨き、社会人としての自立を

 学生には、若いうちにコミュニケーション能力を磨いてほしいと思います。人と対話やディスカッションをしながら、一緒に物事を作り上げていくプロセスは、社会でどんな仕事をしていても不可欠なものです。 私自身も様々な方の協力がなくては、数値シミュレーションを行うことも、たくさんの地点から観測データを得ることさえも不可能でした。多くの人とのコミュニケーションを通じて研究の幅が広がりましたし、これからも若い研究者や学生と一緒に、地震研究の分野を盛り上げることができればうれしいです。
 研究室の学生に、私は常に「自立してください」とだけ言うようにしています。そして、自立するためには何が必要なのか、自分自身で考えて行動できるようになってもらうことを望んでいます。

【My Favorite】
 私は金沢八景キャンパスから歩いてすぐの場所に住んでおり、週末には健康維持を兼ねて、1時間ほどのジョギングを楽しんでいます。大学周辺は勉強や研究をする人にとっても、ゆっくりと落ち着ける環境であり、風光明媚な景色を見ながら走ることが気分転換にもなります。
 地球物理学では、フィールドワークも重要な手法の一つです。私も地球を研究している身として、自然との接点は常に持ち続けたいと思っています。自然あふれる金沢区を走っていると、足の裏から地球を感じているような気持ちになりますね。