上村雄彦先生写真

真の国際人を輩出する、
これが私たちの使命


国際総合科学部 国際都市学系 グローバル協力コース 教授

上村雄彦(うえむらたけひこ)Takehiko Uemura

小さくまとまらずに常に上をめざす人間になって欲しい

ディベート、ペアトーク、授業にも工夫を凝らす

上村雄彦先生 インタビュー写真1

現在、大学に身を置き、研究する立場にあります。テーマとしているグローバル・タックスの研究は、世界の実情、各国の利害、政治的背景など多くの事への理解を深めないと成り立ちません。そこで授業では、たとえば世界の貧困問題の原因について、まず一人で考え、原因を抽出したメモを用意させます。そして他の学生とペアを組み、そのメモを交換し、質問をしあったり、議論をしたりして貧困問題の原因を探る。最後に、そこで出た答えを全体で教習して、課題解決の方向性を見いだす、という参加型手法を用いています。また、横浜市立大学が推し薦めるグローバル人材育成の考えから、そのほとんどを英語で行っています。そのほかにも、ディベートなども行いますので、生半可な気持ちでは授業に参加できません。しかし、それぐらいのことをやってはじめて、力がつくわけですし、上をめざそうという気持ちになってくるものです。

また、世界の現状といったときにはどうしても悲観的になりがちですが、一方で世界には不思議なくらいうまく行っているところがあることにも注目しています。例えば軍隊をなくしたコスタリカ。あの紛争の多かった中米でどうして軍隊なしで平和なのか? 世界でも貧しい部類に入るはずのブータンの人々はなぜあのように幸せなのか? ソ連崩壊後、食糧もエネルギーもほとんど入ってこなくなったキューバの国民が、どのようにして一人の餓死者を出すこともなく安定した生活を送り続けているか? など、興味深い事象はたくさんあります。そのほかにも、デンマークやスウェーデンなど、先進的な取り組みをしている国々がたくさんあり、授業ではこれらの国々のことも取り上げています。

根幹にあるのは、このままでは本当に近い将来人類の生存が危ない、そして将来ではなく、現在とても多くの人々が格差、貧困などに苦しんでいるという危機意識です。この意識が深く学生に浸透し、それをエネルギーに世界に貢献できる人間、人種、性別、国籍やイデオロギーを超えたところでこうした危機について世界の人と議論し、実際に解決に結びつけていく人材を育てていきたいと思っています。

そういった意味では、まさにメインのテーマとしているグローバル・タックスも根本にはそうした精神から発生したシステムですので、学生たちにはこれも含めてぜひ研究を深め、将来は地球規模課題の解決に果敢に挑戦する人材となってくれれば何よりです。

入ってみてわかる、横浜市立大学の大きさ

上村雄彦先生 インタビュー写真2

2009年から本学で教鞭をとっていますが、着任してすぐに、横浜市立大学は小さな大学でありながら、その実力や行動範囲はとても大きいものである事に気づきました。まず、国際都市横浜にあり、東京とほどよい距離を保ちつつ、鎌倉といった古都も近く、新旧の様々な事柄を見聞きできます。さらに、本学では海外調査実習(Keyword-3)という制度があります。半年かけて英語力や英語での論文作成能力を磨いた学生をニューヨークやジュネーブの国連機関に連れていき、その学生が論文のテーマについて各機関の方々にインタビューをし、最終日には現地の大学で研究成果のプレゼンと現地の学生たちと議論するといったことまでやっています。現地では、「世界から多くの大学生が国連を訪れてくるが、ここまでやっている大学は見たことがない」と何度も言っていただけました。学生自身にとっても、これは何ものにもかえがたい経験となり、その後のキャリア形成に非常に良い影響を与えています。

もうひとつは、本学のグローバル人材育成の一環で、2016年4月から「YCUグローバル・スタディーズ・プログラム」というものを立ち上げます。これは、本学で英語で行っている講義や演習を「見える化」し、グローバル・スタディーズとアジア・ジャパニーズ・スタディーズに整理して、所定の単位をおさめれば、英語だけでも修了書を出すというプログラムです。これにより、海外から留学生を増やすとともに、国際色豊かなキャンパスをつくって、本学の学生たちの留学など海外に飛び出す気持ちを高めることをめざしています。

このように、本気で世界に羽ばたきたいと考えている高校生にとって、本学はその期待に沿うプログラムを用意しています。

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横浜市立大学では、海外フィールドワーク支援プログラムという、学生の海外活動を支援する制度があり、海外調査実習での国連派遣もこの一環として行われる。参加者は「国際機構論」を英語で受講し、集中的に語学力をつけながら、必要な知識を得て、その後、平和、環境、開発など参加希望者の関心に応じてグループ分けを行い、実習時までに毎月準備会を開催するなど、徹底した事前学習を行う。現地では国連職員や国連代表部の方々にインタビューを行い、議論を深めることにより、地球規模問題の解決のために、国連がどのような取り組みをしているのかということについて深く理解することを目的としている。

編|集|後|記

上村先生は、TVにも出演されていて、インタビュー前にも出演した番組を2本ほど拝見することができました。ひとつの番組では大物コメンテーターを相手に持論を展開されており、先生の研究に対する自信と熱心さに心を打たれました。実際にお会いすると、経歴の凄さを感じさせない実に気さくな感じで、話も面白く、人をすぐに惹き付ける力のある方だと思いました。休日には映画鑑賞をされるそうで、ジブリ系の映画から社会派の映画まで、何でも来いだそうですが、社会派の映画ではついつい授業に活かせるところはないかと考えてしまうようです。あとは、テニスと海釣りが趣味とのことですが、先生が海釣りファッションをされているところはなかなか想像できませんでした。

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