太田塁先生写真

市場の質の向上が
世界を救う


国際総合科学部 経営科学系 経済学コース 准教授

太田塁(おおた るい)Rui Ota

ひとつ先の可能性を読み取れる人材になろう

経済学は積み重ねの学問

太田塁先生 インタビュー写真1

私の授業の様子を少しお聞かせしましょう。近年は理系の学びが脚光を浴び、文系の学問の人気が減少し、中には文系不要論まであるそうです。実は、理系と同様に文系の学びはとても奥が深く、人間形成の上でもとても役立つものです。ゆえに、私はこうした風潮に対向し、文系の学び、なかでも経済学の学びの重要さを学生たちにどんどん伝えていこうと考えています。

私は現在2つの授業を担当していますが、1年生向けの授業では、なぜ経済学を学ぶ必要があるのかについて教えています。これからの日本や世界を背負う人材は、より高い判断力を具えていなければならず、そのためには資源配分といった意思決定など、経済学の基本理論を理解することがとても大切です。逆にいえば、経済学を知っていると社会で使えるということでもあります。また、3年生向けの授業では、主に国際貿易論を教えていますが、ここではグロ−バル社会の本質について考察しています。グローバル社会、あるいはグローバル経済というのは、相手のある社会であり、経済であると私は解いています。今現在、相手がどのような状況にあり、何を求めているか、自分たちはそれに影響されずにはいられないということです。経済学でよく語られるゲーム理論(Keyword-3)や戦略的思考といったことは、いずれもこのように他者との関係性の理解のうえで考えられています。この段階での経済学は、文系であっても、統計学や数学など、理系的な要素も多々含まれ、たいへん興味深い学問であることがわかると思います。

また、経済学は理論の積み重ねの学問でもあります。ひとつ一つのステップをきちんと理解する必要があります。そのため、自作の教材をパワーポイントで作成し、それをスライドで見せながら、活発な意見を学生に求めていきます。さらに、そうした教材はWEBからダウンロードしてプリントアウトすることもできます。私の授業では、比較的宿題も多いのですが、そうした宿題にも、プリントアウトは役立つはずです。

国際都市横浜で学べる幸せ

太田塁先生 インタビュー写真2

私は横浜市立大学に来てまだ日が浅いのですが、やはり横浜というのは古くから栄えた国際都市だけに独特の雰囲気がありますね。こうした雰囲気の中にいるだけで、国際人としての感覚がある程度養われていくと思います。

また、学内には多くの留学生がいますので、そうした海外の仲間との交流も盛んなようです。大学の規模自体は小さいかもしれませんがジャンルを超えて質が高い大学です。iPS細胞や遺伝生物学などの分野では世界のトップを走っていますし、先生の中にはTV等のマスコミで貴重な意見を発信されている方もいらっしゃって、各界からの注目度も高いはずです。 それを証明するような事実として、TIMES HIGHER EDUCATIONによる学生数5,000人未満の2016年世界大学ランキングで、日本の大学としては第2位、世界でも16位になっています。

そうした環境にいるのですから、ここで経済を学ぶ学生たちには、本気で勉強して欲しいと思います。特にこれからは市場の質の向上こそが将来の世界をより豊かにするのではと思います。ぜひ、私の持論でもある、ひとつ先の可能性を読み取って、社会をリードする国際人をめざしてください。

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戦略的意思決定に関する理論であり、「合理的な意思決定者間の紛争と協力の数理モデル」の研究に関する理論。本来は純粋な応用数学のものであったが、「自分の最適な行動は他者の行動によって変わり、他者にとって最適な行動は自分の行動により変わる」というゲーム理論の基本の考え方は、個々の企業活動から国家間の経済戦略にまで応用でき、特に経済学への貢献度が大きい。その他にも、生物学(進化的に安定な戦略)や工学といった自然科学、心理学、社会学、政治学などへの応用も多く見られる。

編|集|後|記

太田先生はとても物腰が柔らかく、いかにも紳士といった感じのする方でした。先生が研究されている経済のお話はニュースでよく聞く食品偽装の問題や自動車・電気メーカーの置かれている現状、さらには中小企業が抱えるさまざまな課題など直結しており、人ごととは思えませんでした。こうした研究ニーズに真っ向から取り組んでおられる姿勢がひしひしと伝わり、とても勉強になりました。そんな先生の趣味を尋ねると、映画が大好きとのこと。特にアメリカ留学中にはかなり映画を見まくったご様子でしたが、教育熱心な先生らしく、映画を見てもつい授業の題材と結びつけてしまうそうです。

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