中村幸代先生写真

少子高齢化社会における
母性看護の重要性


医学部 看護学科 母性看護学 教授

中村幸代(なかむらさちよ)Sachiyo Nakamura

現場で役立つ研究なら、世界にも発信していきたい

母性看護の学びが人気である理由

中村幸代先生 インタビュー写真1

さまざまな事情で各地の産院が厳しい現状にあることは前に述べました。そうした背景を考えると母性看護や助産師の道をめざそうとする看護学生は少ないのではと思われるかもしれません。ところが意外なことに、看護学科の中でも母性看護の分野はとても人気があります。先日も母性看護領域のゼミがあったのですが、ゼミの学生の多くが助産師や母性看護について興味を示していました。その理由について考えてみました。

看護の仕事を実践するにあたって、「おめでとうございます!」という言葉が毎日何度も耳にできるのは産科だけではないでしょうか。新しい命とたえず向きあい、命の誕生と共にいる仕事というのはそう多くはありません。お産は女性にとっても家族にとっても貴重なライフイベントです。お産のことは何十年たっても覚えているものです。そのような、人生最大のライフイベントにかかわることができることが母性看護の最大の魅力ではないでしょうか。

実際に産科に在籍すると、新しく生まれる命はエネルギーに満ちており、生命の不思議や尊厳を感じることができます。特に厳しい条件の中で、妊婦さんとその家族が無事に出産を迎えられたときの感動は格別ですね。お産は、女性と胎児という2つの命が同時に危機にさらされ、お母さんと赤ちゃんが同時に誕生します。時には、厳しい出産や残念な結果に立ち会うこともありますが、そうした経験も含めて、人間として妊婦さんと一緒に成長できる、そんな喜びに満ちた世界です。是非、多くの学生に助産の道を選択して欲しいと思います。

さらに、母性看護の学びを極めようという方には、研究の道もあります。私が大事にしているのは、机上の空論ではなく、社会のニーズにあった研究の実施です。一方で、看護はアートであるとも思います。特に、経験に裏付けられた臨床助産師の勘や経験からの根拠や技は非常に重要です。この部分をあえて大切にしていきたいと思います。そして、これからの母性看護学は少子化社会に向けて様々な提言を求められる学問になっていくと思いますし、これまで以上にさまざまなジャンルの人たちとの共同が必要になってくる領域となるでしょう。そこで私は、母性看護学研究会を立ち上げました。母性看護学は『息づく命の伝承』にかかわる領域です。命の誕生が歩んできた歴史と新たな英知の創生を目指しています。母性看護学の未来を彩る研究を考えていきたいと思います。http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~bosei/

自らの描く理想を実現する大学

中村幸代先生 インタビュー写真2

私は今進めている妊婦の冷え症の研究をさらに進めていきたいと思っています。具体的には、臨床の現場と研究をもっと深く結びつけていくことですね。また、妊婦の冷え症は日本だけの問題ではなく、海外にも当てはまることがわかっています。調査をするとわかるのですが、例えばブラジルの妊婦さんにも、気づいてないだけで冷え症があります。こうした現状は日本と同様に認知されていないのが現状です。そのため、最近特に力を入れているのが、「Hiesho」の海外への発信です。将来は海外にもアプローチしていき、「Hiesho」の学会をつくるというのが私の夢であり目標ですね。

そんなことを実現させてくれる土壌が、この横浜市立大学にはあります。私は、もともと横浜市立の2つの附属病院で助産師として働いていました。横浜市での勤務経験が助産師として、大学教員として、研究者として、私自身の原点です。ですので、私自身が何よりこの横浜市立大学が大好きなのです。また、この大学は、高度な研究が行われていながら、地域との交流(Keyword-3)も盛んで、さまざまなボランティア活動なども活発な大学です。そんな雰囲気であるせいか、学生たちは皆素直で優秀ですね。

地域に根ざし、地域に愛される大学というのは、ありそうでなかなかないと思います。教員も学生も皆横浜が大好きなのが、見ていてもよくわかります。そうした環境面も含めて、横浜市立大学で学ぶことは、必ずプラスになるはずです。

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横浜市立大学の大きな特長のひとつが地域との交流が盛んな事である。金沢八景キャンパスには、地域貢献センターが設置されており、学部を超えた地域貢献活動のサポートをしたり、市民に向けての情報発信が常時行われている。医学部においても、医師紹介活動や市民医療講座が定期的に行われており、市民が大学を利用することが極めて自然に行われている。

編|集|後|記

中村先生は、取材のときにも笑顔の絶えない明るい方でした。また、独自の研究をされているせいか、いろいろなアイデアの引き出しをお持ちのようで、聞いている方がビックリしてしまいます。そんな先生の趣味はなんとキャンプとのこと。富士山の麓でテントを張るぐらいのことは普通にやっていらっしゃるそうで、心の洗濯やエネルギーチャージをしているとか。また、帰宅したときに玄関に必ず迎えに来てくれる最愛の家族であるワンちゃん猫ちゃんをみて、癒されているそうです。(写真参照)

ペットのワンちゃん猫ちゃん

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