股関節鏡視下手術

当院で行なっている股関節鏡視下手術

適応疾患としては大腿骨寛骨臼インピンジメント(Femoroacetabular impingement; FAI)や股関節唇損傷、そして人工関節置換術が適応とならない初期変形性股関節症が主な適応となります。これらの疾患は単純X線像では一見大きな異常所見がないように判断されることが多く、従来は外科的治療の対象とならないことがほとんどでした。
しかし、近年の画像診断の進歩とともにこれらの診断が可能となり、さらには関節鏡手術の飛躍的な進歩により外科的アプローチも可能となってきました。

FAI症例の単純X線像と関節鏡所見
X線像ではわずかな骨性隆起(矢印、cam病変)を認める。鏡視所見にて骨頭頚部移行部のcam病変を認める(矢印)。

FAIは成長期における過度なスポーツ活動などが原因の一つであり、大腿骨頭頚部移行部の骨性隆起(cam病変)により大腿骨と寛骨臼縁の衝突(インピンジメント)が生じ、その結果として関節唇損傷、さらには軟骨損傷が誘発され、最終的には変形性股関節症へと進展することが明らかにされています。
FAIに対してはこのcam病変を切除することが根本的な解決となりますので、関節鏡視下に骨軟骨形成を行います。

股関節鏡手術による骨軟骨形成(cam切除)。コンピュータナビゲーション支援下に正確で安全なcam切除を実現している。

また、股関節唇損傷は単純X線や従来の通常MRI撮像法では診断困難であり、原因不明の股関節痛として経過観察される例も少なくありません。
リハビリテーションなどによる保存治療に抵抗性の場合には関節鏡による関節唇縫合が奏功します。

関節唇損傷に対する鏡視下関節新縫合の様子。

通常、約1〜2週間程度の入院で全荷重歩行を獲得してから退院します。
股関節鏡手術は施行可能な施設はまだ限られておりますが、当院では2名の股関節学会股関節鏡視下手術技術認定医を中心に、世界に先駆けてナビゲーション支援下股関節鏡視下手術を行なっています。

ナビゲーション支援股関節鏡視下手術の様子。通常の関節鏡モニターの隣にナビゲーションモニターを配置して3次元的位置情報を確認しながら手術を行う。