当科のご紹介

大学病院としての高度な治療を通じて、患者さんの視機能に少しでも多くの光明を与えることを目指しております。
疾患別に専門外来を設け、各分野の専門医師が正確な診断、治療をご提供いたします。特に、網膜硝子体疾患分野では手術を必要とするすべての疾患を対象に治療を行っております。

患者さんへ

 ・患者さんご自身またはご家族から初診予約が可能です。
・紹介状をお持ちの方は、初診受付時間内であれば当日受診も可能です。(初診受付時間 平日8:00~10:30)

・下記の患者さまは、紹介状なしで受診可能です
 ①網膜剥離の診断を受けている患者さま 
 ②24時間以内の急激な視力障害を自覚する患者さま 
 ③他院で治療後に経過が思わしくなく症状で心配されている患者さま
 
紹介状なしで受診可能です。直接眼科外来に電話(045-261-5656 午前9時半から12時まで)をください。症状により一般病院や医院をご紹介することもあります。また当日、長時間の診察時間になる可能性や選定医療費が追加されます。
 
※受診にあたっての注意点
診察の際、散瞳して眼底検査を行います。散瞳効果は6時間ほど継続します。お車での来院はお控えいただきますようお願いいたします。また当科受診の際は、診察状況により大変お待たせする場合がございます。あらかじめ、ご理解いただきますようお願いいたします。

主な対応疾患と診療内容

黄斑サージカル

20年以上の手術経験と学会誌や講演会で公開している様々な科学的知見をブレンドして、患者さんに一流の手術を提供し、できるだけ満足していただけるよう努めています。
当科の硝子体手術では、光毒性をゼロに抑えた3Dデジタル硝子体手術を導入し、短時間、低侵襲の手術を目指しています。(Horigome Y, Kadonosono K;Retina.2022)

視機能の中心となる黄斑に加齢、または続発性に膜が生じ、視力低下、歪みの原因となります。黄斑上膜は高齢化に伴い急速に増加しています。当科では年間180件以上の黄斑上膜に対する硝子体手術を行っています。

黄斑円孔は5千人に1人が発症します。当院では年間80件程度の手術を行い、円孔閉鎖率は99%、視力改善率は90%以上です。
一般的な手術では円孔閉鎖が期待できない症例に対しては我々が開発した網膜自家移植手術を行い(Grewal DS, Kadonosono K, et al;2019. Tanaka S, et al; RETINA,2020)、どんな難症例でも対応いたします。

加齢黄斑変性や動脈瘤破裂による大量の黄斑下出血は高齢者に多く発症し、治療にとても苦慮します。そのような患者さんには我々の開発した組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)網膜下注入や空気注入が有効です。(Kadonosono K, et al; Ophthalmology,2015)
黄斑変性に伴う黄斑化出血術後は黄斑メディカルチームが術後のフォローを行います。

現在、網膜剥離の罹患率は7千人に1人ととても増加しております。その理由は強度近視眼の増加です。当科では網膜剥離手術を年間350件程度行っております。初回手術の網膜復位率96%、3段階以上の視機能改善率は80%以上です。再生医療研究の治療や最新の手術テクニックを応用して、復位だけでなく視力改善を目指しております。
網膜剥離の病状、年齢などに応じで、術式を選択します。(レーザー光凝固術、網膜復位術、硝子体手術)
術後は選択した術式により、数日間うつむきなどの姿勢制限が必要になります。

COVID-19の流行により診療や受診の遅延により、近年PDRが増加傾向にあります。PDRに対する手術は硝子体手術の中でも極めて難しい手術になります。当科では内分泌糖尿病内科と協力し、総合的なPDR診療を行える環境を整えています。年間手術件数は100件以上(Ⅰ型糖尿病は約20%程度)、平均視機能改善率は70~80%です。
増殖糖尿病網膜症手術は硝子体手術の中でも極めて難しい手術となります。当院では抗VEGF治療併用し硝子体手術を行います。常に最新情報を取り入れ高い治療成績を目指しています。病型、病状により、術後はガス、シリコンオイルなどを使用します。術後はうつむきなどの姿勢制限が必要になります。また経過により、追加治療を検討する場合もあります。

白内障

黄斑メディカル

ドライアイや角膜感染、円錐角膜、など多岐にわたる症例を当院客員教授でもある東邦大学医療センター大森病院の堀雄一教授をお招きし、角膜専門クリニックとして診療、治療を行っています。当クリニックでもっとも多い症例はドライアイです。重症度に応じて人工涙液涙点プラグや人工血清点眼などを選択します。角膜感染に対しては、原因菌にあった抗菌点眼を使用しますが、重度の角膜潰瘍や角膜穿孔に至った症例に関しては、角膜移植などの手術を行う場合もあります。そのほか円錐角膜に関してはクロスリンキング手術も対応しています。

ぶどう膜炎は多彩な症状を呈し、継続的な治療が必要となることが多い疾患です。また、白内障や緑内障を併発し、外科的治療が必要になることもあります。その場合、当科のそれぞれの専門クリニックと協力し治療にあたります。
ベーチェット病やサルコイドーシスなど、病態に応じて理宇枚膠原病内科や呼吸器内科、神経内科などと連携し、精査、治療にあたります。入院での点滴加療のほか、網膜硝子体専門施設として緊急性の高き外科的治療も対応可能です。
当科では元・横浜市立大学眼科講師、現・吉野町眼科院長の中村聡先生医をお招きし、通常の眼科診察、検査に加え必要に応じて、採血、CT、MRIなどによる全身検索もおこない的確な診断、治療に努めています。

視神経疾患、甲状腺眼症、重症筋無力症、斜視など視神経や眼球運動系に障害をきたしうる疾患を対応しています。疾患に応じて外来や入院でのステロイドパルス療法などを行います。神経内科、内分泌内科、脳神経外科領域など他科にかかわる疾患が原因と考えられる場合は、協力して治療にあたります。
斜視に関しては、外眼筋の動き、両眼視機能検査をおこない、斜視タイプを判断したうえで、プリズム眼鏡での矯正や必要に応じで斜視手術も検討します。手術は局所麻酔での日帰り手術となります。
当院では佐伯眼科クリニックの今津先生をお招きし、毎月第4木曜 午後に診療を行っています

子供は成長していく過程で視機能を獲得していきます。その過程で何らかの理由で視力発達が不十分となった場合は生涯にわたり視覚障害を残す可能性があります。そのため、小児期の眼の病気は早期発見早期治療が非常に大切となります。しかし、小児眼科の分野は診察や診断が難しく、専門的なスキルをもつ医師は少ないのが現状です。
当科では元・福沢市民病院眼科部長、現・大船いのうえ眼科院長の井上克洋先生にお越しいただき、0歳児から様々な眼疾患を専門的に診察します。近視、遠視などの屈折異常やそれらに起因する弱視、斜視など早期に診断し、アイパッチや眼鏡を用いて治療していきます。状況に応じて斜視手術も検討いたします。また、小児の場合は視力検査や立体視検査など、検査が難しいことがよくありますが、当院では熟練した視機能訓練士が丁寧に時間をかけて検査や眼鏡処方を行います。

主な検査・設備機器

手術

当院ではHDR(High Dynamic Range)を搭載した眼科用リアルタイムシステム「NGENUITY🄬3Dビジュアルシステム」を使用し、糖尿病網膜症、網膜剥離、黄斑疾患をはじめ様々な疾患を対象に硝子体手術を行っています。このシステムを利用することで、広角、高解像度、被写深度の深い映像(奥行ある見え方)で手術を行うことができます。また、HDRカメラにより、眼内照明を最小限に抑えることで、網膜光障害のリスクを最大限に軽減することが可能となりました。

当院では黄斑手術や血管内治療など精密な治療を必要とする硝子手術の際にパッシブ型ロボット「iArmS」を使用します。前腕を固定することにより手首が安定し、より精密で安定した操作が可能となりました。

硝子体手術時に使用する機材です。25Gの高回転数の硝子体カッター、ハイパービット🄬デュアルブレードプローブ(20,000cpm)を使用し、術中に起こりうる合併症を最大限に抑えることができます。また従来と比較し硝子体切除効率も高く、短時間手術が可能となりました。さらに術中は常に安定して眼内圧を保つことにより、より安全な治療を行っています。

白内障手術に使用する機材です。強力な破砕力と眼圧安定性システムが搭載され、手術中の合併症リスクを低減させることで、手術の安定性、効率性が大幅に向上ました。

検査

当科では光干渉断層計、眼底写真、蛍光眼底造影検査などさまざまな検査機器を用い、診断と治療評価を行っております。

光干渉断層計(OCT)

近赤外光を利用し、網膜の断層像を得ることができる検査です。非接触、非侵襲的に検査が行えるため、患者さんへ負担をかけることなく、網膜の情報を得ることができます。
加齢黄斑変性、黄斑上膜、黄斑浮腫などの黄斑疾患の診断や術後評価に役立ちます。
また網膜神経線維層欠損、視神経乳頭周囲神経繊維層厚の検出し、緑内障診断、評価にも有用です。

当科ではいくつかのOCTを取り揃えており、疾患に応じて使い分けています。

黄斑疾患や緑内障の診断、評価に優れたOCTです。また網膜血流や構造を非侵襲的に可視化するOCTアンジオグラフィ(OCTA)機能も搭載しており、造影剤を使用することなく、患者さんに負担をかけずに高解像度の画像が撮影可能です。

共焦点レーザ走査型眼底検査装置(HRA)とスペクトラルドメインOCTを融合させた三次元画像解析装置で、他に類を見ない高画質な眼底画像が得られます。フルオレセインとインドシアニングリーンを蛍光色素とする蛍光眼底造影が可能です。

従来と比較しさらに広範囲(23㎜)にかつ硝子体から網膜、強膜境界部とより深部までを撮影可能なOCTです。網膜剥離や糖尿病網膜症など黄斑疾患以外の診断や治療前評価に有用です。またOCTAも広範囲撮影が可能なため腎不全などで造影剤の使用を避けたい糖尿病網膜症や静脈閉塞症の患者さんの血流評価を低侵襲に行うこと可能です。造影剤を使用しないため、繰り返し検査を行うこともでき、病態評価に非常に有用です。

眼底写真

眼底の血管、網膜、視神経など調べる検査です。眼底写真は、体の血管を観察できる唯一の検査で、高血圧、糖尿病など全身疾患の評価にも有用です。基本、散瞳下で撮影しますが、未散瞳でも撮影可能な機材もあります。

画角200度と眼底全体の約80%をわずか0.3秒で撮影し、従来の眼底カメラでは撮影の困難であった、周辺網膜も撮影が可能となりました。赤色レーザー光を脈絡膜に緑色レーザー光を網膜に反射させ、それぞれ取得した画像を合成して眼底写真のようなカラー画像がえられます。

画角45度と黄斑部と視神経を中心に撮影可能です。

蛍光眼底造影検査

造影剤としてフルオレセインおよび、インドシアニングリーンを用いて、眼底の網膜血管や脈絡膜血管の血流評価を行います。糖尿病網膜症や、網膜血管閉塞症、加齢黄斑変性、ぶどう膜炎など様々な病気の診断、治療方針を決定する際に有用な検査です。当科ではいくつかの機材をそろえており、疾患によって使い分けています。

従来のOptos同様、画角200度と眼底全体の約80%を撮影することが可能で、かつ造影検査も可能な機材です。糖尿病網膜症や、ぶどう膜炎、静脈閉塞症など網膜全体の評価の際に使用します。

加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫など、黄斑部病変の評価に有用です。

視野検査

上下左右の見える範囲と光の感度を調べる検査です。
主に緑内障、視神経疾患、頭蓋内疾患、心因性疾患などで使用し、病状によって2種類の視野検査を使いわけます。

視野全体の評価を行います。 検査時間:片眼10~20分

中心視野30度、または10度の視野評価を行います。緑内障では自覚症状のないわずかな視野欠損も評価可能です。  検査時間:片眼5~10分程度

レーザー

後発白内障や、緑内障などに使用します。

網膜裂孔、糖尿病網膜症、網膜静脈分枝閉塞症、中心性脈絡網膜症などの治療に使用します。グリーン、イエロー、レッドの波長を疾患や病態に応じて使い分けます。

関連情報

施設認定

診療実績

2020年からCOVID19が流行し始め、手術制限がかかったこともあり全体の件数は減少傾向にありましたが、2023年度からは徐々に手術件数も従来の件数に戻りつつあります。

  620
  194
  964
  36
  4827
  90
  306
  1
  1
  143
  603
  114
  779
  45
  4669
  113
  212
  4
  4
  92
  710
  93
  904
  32
  4442
  80
  208
  9
  1
  146
  1022
  79
  1225
  34
  4184
  128
  226
  12
  6
  41
  853
  176
  1142
  24
  4118
  107
  201
  10
  1
  150

対応疾患・診療内容の詳細