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脳神経内科

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

疾患情報

脳や脊髄の運動ニューロンが障害をうけ、手足・のど・呼吸筋などの筋肉が徐々にやせて力がなくなっていく病気です。一方で、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。
多くの場合は、手指の使いにくさや肘から先の力が弱くなることで始まりますが、話しにくい、食べ物がのみ込みにくいという症状で始まることもあります。やがては全身の筋肉がやせて力がはいらなくなり、歩けなくなります。のどの筋肉の力が入らなくなると声が出しにくくなり(構音障害)、水や食べ物ののみこみもできなくなります(嚥下障害)。呼吸筋が弱まると呼吸も十分にできなくなります。
指定難病に指定されており、全国では約1万人の患者さんがいます。中年以降いずれの年齢の人でもかかることがありますが、最もかかりやすい年齢層は60~70歳台です。まれにもっと若い世代での発症もあります。疾患の原因について結論は出ていません。多くの場合は遺伝しませんが、およそ5%は家族内で発症することが分かっており、家族性ALSと呼ばれています。

診断

運動ニューロンには脳・脊髄に上位運動ニューロン、手足の中などを通る末梢神経に下位運動ニューロンがあり、それぞれの障害の存在を、神経学的検査(診察)、電気生理学的検査(筋電図)、神経画像所見を総合して証明します。これらの所見と、進行性の経過、また他の疾患の除外を行い、診断します。

治療

残念ながらALSを治す薬はありません。進行を少し遅らせることができる内服薬としてリルゾール、エダラボンという薬剤が認可されています。
この病気は常に進行性で、一度この病気にかかりますと症状が軽くなるということはありません。 体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸筋も働かなくなって多くの方は呼吸不全で死亡します。人工呼吸器を使わない場合、病気になってから死亡までの期間はおおよそ2~5年ですが、中には人工呼吸器を使わないでも10数年の長期間にわたって非常にゆっくりした経過をたどる例もあります。その一方で、もっと早い経過で呼吸不全をきたす例もあります。特に高齢者で、構音障害・嚥下障害で始まるタイプは進行が早いことが多いとされています。大切な点は患者さんごとに経過が大きく異なることであり、個々の患者さんに合わせた対応が必要となります。最近では認知症を合併する患者さんが増えていると云われています。
ALSにともなって起こる筋肉や関節の痛みに対しては毎日のリハビリテーションが大切です。また、話しにくい、手の力が入らないなどの症状が進行すると家族や他のヒトとのコミュニケーションが大変になります。早めに新たなコミュニケーション手段の習得を行うことが大切です。