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ベーチェット病診療研究センター

ベーチェット病

ベーチェット病の原因

原因は未だ解明されていない

ベーチェット病は難病に指定されて以来、研究班により原因などを探求されてきましたが、明確な原因は未だ不明です。
有力な説として、何かしらの遺伝的素因に、ウイルスや細菌といった環境的な素因が加わることで、白血球など免疫系の機能が異常を来し炎症を引き起こすことが挙げられています。

遺伝的素因の中でも特に重要視されるのが、HLA-B51抗原という白血球のひとつの型です。
このHLA-B51抗原をもっていると、ベーチェット病を発症する相対危険率が8倍にも上がります。

ベーチェット病と深く関係する「HLA-B51抗原」とは?

私たちの体は細菌やウイルス、花粉といった外来の物質(抗原)に常にさらされています。これらの物質(抗原)が体内に侵入した際に攻撃・排除してくれるのが免疫です。
HLA(Human Leukocyte Antigen: ヒト白血球抗原)は、こうした外来物質(抗原)を
最初に捉えて、その情報を体内のTリンパ球(免疫の中心的存在)へと伝える役割をもっています。つまり免疫系を作動させるためにHLAはとても重要な役割を果たしているということです。
HLAは機能的に大きく2つのクラスに分けることができ、全体では10種類以上になります。それぞれのHLAには様々なタイプがあり、所有しているタイプによって病気に対する免疫応答に差がでます。

ベーチェット病患者の場合は、このHLAのB抗原の中でもB51という型をもっている人が多く存在しています。このHLA-B51抗原とベーチェット病の相関関係は、人種などに関わらず様々な民族で認められています。

「シルクロード病」とも呼ばれる環境的素因

遺伝的素因が考えられる一方で、環境的な素因の影響も挙げられます。
ベーチェット病は、トルコやイタリアなどをはじめとする地中海沿岸諸国から日本や中国などを含む東アジアといったシルクロード辺縁諸国に多発する疾患で、別名「シルクロード病」とも呼ばれています。このことから、これらの地域に共通して存在するウイルスや細菌、農薬などの外来抗原、あるいは天候など環境ストレス因子などがベーチェット病の発症に影響を与えているのではないか、と考えられています。

ベーチェット病の症状

ベーチェット病の症状ベーチェット病の症状
ベーチェット病の症状(水木信久先生随筆より引用)

ベーチェット病(Behçet’s disease)は、全身の諸臓器に急性の炎症が起こる難治性の炎症性疾患です。ベーチェット病は、初めてこの病気を報告したトルコのイスタンブール大学皮膚科Hulsi Behçet教授が病名の由来であり、日本では、1972年に当時の厚生省が国として初めて難病に指定した8疾患のうちの第1号です。
ベーチェット病の主な症状として以下の4つが挙げられます。

①口腔粘膜のアフタ性潰瘍

4つの主症状のなかでも必発といえるのが口腔粘膜のアフタ性潰瘍です。口唇や舌、頬粘膜、歯肉などに円形の潰瘍ができ痛みを伴います。しかし、これだけでは診断に至らず、病院に来る方も少ないです。そのため、アフタ性潰瘍に加えて皮膚症状や眼症状が現れたときに初めてベーチェット病が疑われます。

②皮膚症状

皮膚症状としては、前腕や下腿に結節性紅斑様皮疹といわれる紅く腫れた発疹がみられます。また、皮下にしこりのようなものができ痛みを伴います。
顔や頸、胸部、背部などに、ニキビのような皮疹ができることや、皮膚が敏感になって"かみそりまけ"などを起こしやすくなることもあります。その他にも、血栓性静脈炎という、主に下腿の皮膚表面に近い血管に沿って赤くなる症状がみられることもあります。

③外陰部潰瘍

男性の場合は、陰茎や陰嚢、亀頭に、女性の場合は膣粘膜や大小陰唇に痛みを伴う潰瘍がみられます。

④眼症状

ベーチェット病においてもっとも重要な症状といえるのが、この眼症状です。
ほとんどの場合、両眼が侵され、何度も繰り返すうちに視力が0.1未満になってしまうなど視機能障害を起こし、失明に至るケースも多いです。ただし、現在は薬の開発も進んでいるため、失明まで至ることは減っています。

これら4つの主症状に加えて、消化器病変や血管病変、関節病変、男性の場合は副睾丸炎などが現れる場合もあります。また、神経症状がでることもあり、全面に神経症状が現れる病型を「神経ベーチェット病」と呼びます。男性に多く、喫煙との関連も注目されている病型です。

ベーチェット病の症状はどのように起こるのか?

ベーチェット病は、誘因となる何らかの外来抗原が皮膚や粘膜などから侵入し、それによって免疫系が過剰に反応するため、症状が起こると考えられています。
免疫が過剰に反応してしまう理由として、先に述べたHLAが関係してきます。このHLAは、入ってきた抗原の情報を伝達する役割を持っていますが、HLA-B51抗原の場合、ベーチェット病の誘因となる抗原に対して過剰な情報を伝達してしまいます。
そのため、免疫系の攻撃部隊は抗原をやっつけようと過剰な攻撃を加え、攻撃する必要のない健康な組織や細胞までも同時に攻撃してしまうのです。
また、この免疫応答は記憶されるため、再度同じ抗原が入ってきた際には、より素早く以前と同じ過剰攻撃をします。これが、ベーチェット病が何度も繰り返し、急激に悪化する理由です。

ベーチェット病の診断基準

ベーチェット病の症状はさまざまであり、症状の現れ方も異なります。そのため、ベーチェット病には診断に直接結びつくような検査所見はなく、症状の組み合わせなどから考えられた診断基準によって診断されます。

診断基準ならびに重症度分類については、難病情報センターのホームページに掲載されていますので、そちらを参照してください。

ベーチェット病重症度分類(2016年⼩改定)

診断基準ならびに重症度分類については、難病情報センターのホームページに掲載されていますので、そちらを参照してください

ベーチェット病の臨床調査個人票

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