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東桃子さん(医学部医学科)が主著者として発表した論文がCell Pressが扱う科学雑誌「iScience」に掲載されました!!

東桃子さん(医学部医学科)が主著者として発表した論文がCell Pressが扱う科学雑誌「iScience」に掲載されました!!

東桃子さん ラボにて
2018年5月31日(土)に医学部医学科の東(あづま)桃子さんの4年次に履修したリサーチ・クラークシップでの研究成果をまとめた論文が、アメリカのCell Press社が扱う科学雑誌「iScience」(※)に掲載されました。東さんは、横浜市立大学先端医科学研究センター担当教授である武部貴則先生がラボを持つアメリカ合衆国オハイオ州にあるシンシナティ小児病院で約3カ月のリサーチ・クラークシップ(研究実習)を行いました。この論文は、東さんがシンシナティ小児病院の研究グループの一員として共同で発表したもので、今後の創薬研究や疾患発症のメカニズムの解明につながることが期待されるものと評価され、科学雑誌「iScience」に掲載されました。
 
この度、東さんに、論文掲載の経緯、米国での留学生活やYCU医学科を志す受験生へのメッセージなどをインタビューしました。
 
 
掲載論文
Digitalized Human Organoid for Wireless Phenotyping
Masaki Kimura, Momoko Azuma, Ran-Ran Zhang, Wendy Thompson, Christopher N. Mayhew, Takanori Takebe
 
Published: May 31, 2018, DOI: https://doi.org/10.1016/j.isci.2018.05.007
 
 
※科学雑誌「iScience」
アメリカの出版社Cell Pressが発行する学際的なオープン・アクセス・ジャーナルで、主に生命科学、物質科学、地球科学を含む特定の分野の推進を図る基礎研究や応用研究を取り扱っている。
アメリカ合衆国オハイオ州にあるシンシナティ小児病院

-今回、主著者として発表した論文が雑誌「iScience」(Cell Press)に掲載されましたが、論文はどのような内容なのでしょうか。

私は、4年次前期にアメリカ合衆国オハイオ州にあるシンシナティ小児病院でリサーチ・クラークシップ(研究実習)を行いました。シンシナティ小児病院では、以前から興味を抱いていたiPS細胞の研究に携わりました。この論文は、研究の成果をまとめることを目的として執筆したもので、「iPS細胞で作製したミニ肝臓に0.5mmほどの大きさのRFID(Radio-frequency identification)と呼ばれる自動認識システムを利用したICタグを埋め込み、ミニ肝臓の固体認識に成功した」ことを報告しました。RFIDとは、電波によってICタグが持つID情報を認識するシステムで、ICタグは服飾店のセルフレジなどに使用されているバーコードの超小型版と言えます。今回使用した約0.5mmの小型のICタグを0.8mmほどのミニ肝臓に内包させることで、目では識別できない小さな細胞を識別することができるようになります。一度に様々なヒトの細胞から作製したミニ肝臓のそれぞれの細胞を識別しながら、細胞の成長や変化をリアルタイムで監視できるようになるため、今後の創薬研究や疾患発症のメカニズムの解明につながることが期待されます。また、正確に細胞を識別できることで高価な薬剤を効率的に使用できるといった利点もあります。
 
リサーチ・クラークシップ(研究実習)
医学部医学科4年次に履修する15週間の研究実習。学生は、学内の研究室以外に国内、海外の大学、研究機関に配属され、実習を行う。「未解決の課題に対する意識を常に持ち、積極的に取り組むこと」「科学的な思考で真実を見極める努力を怠らないこと」といった物事の本質に迫ろうとする姿勢(リサーチマインド)を養成することを目的としている。
ラボのみなさんとシンシナティにて 東さん(前列右から3人目)、武部先生(前列右から4人目)

-論文掲載された感想と、今後の学生生活(授業や実習、研究等)の抱負や目標について教えてください。

リサーチ・クラークシップに参加する4年次まで、YCU医学科のカリキュラムは座学が中心で臨床や研究に触れる機会はあまりありませんでした。そのため、この短期間で論文執筆まで取り組むことができたうえに、「CellPress」が扱う科学雑誌に論文が掲載されたことは大きな驚きでした。研究について何もわからなかった私に一から指導してくださったシンシナティのラボの皆様、それ以外で論文に協力してくださった皆様、そして現地での生活を支えてくださったシンシナティの皆様には大変感謝しています。
また、シンシナティ小児病院では研究以外にも医学生として貴重な機会に恵まれました。小児科医として働く先生に同行し、手術見学や回診に立ち会うことができました。その先生は小児の肝臓移植を専門にしており、多くの難病の子供達が移植によってぐんぐん回復していく様子を目の当たりにするなど、貴重な経験をさせてもらったと思います。この経験から、将来は移植に携わる医師になりたいと強く思うようになりました。ただ日本では改正臓器移植法の施行により活発に移植が行われるようになっていますが、まだまだアメリカに比べて移植手術の件数は少ない傾向にあります。今後多くの移植手術を見学したり、経験するためにも学生のうちから英語を勉強し、医師になってから海外留学ができるように準備していきたいです。
ラボのみなさんとの食事会 東さん(左前から3人目)、武部先生(左前から2人目)

-留学先での学習環境や生活を日本との比較を交えて教えてください。

留学先のシンシナティは観光客が比較的少なく、アメリカ中部に位置していて、ラボの研究員以外に日本語を理解する人がほとんどいない地域でした。また、今回の留学を機に初めて一人暮らしを経験しました。日本とはまったく違う生活の中で特に印象的だったのは、海外では外国人でも英語が話せて当たり前だということでした。英語で話すことが苦手な日本人などはどんなに能力が高かったり、いい研究結果が出たりしても評価されにくいような印象を受け、とても衝撃的でした。

-YCU(医学科)を目指す、後輩や受験生・高校生に向けてメッセージをお願いします。

多くの医科大学でもYCUのリサーチ・クラークシップと同様の研究に携わる実習が行われていると思いますが、海外で研究できる大学はそんなに多くないと思います。YCUの入試で英語の得点配分が他の教科と比較してやや多いことからもわかるように、先生方も英語に触れることや海外留学を推奨しているため、海外で医師として働きたい、研究したいと思っている学生に対してYCUはさまざまなサポート体制を整えています。ただ、医学科1年次は必修の英語科目であるPractical Englishの授業がありましたが、2年次以降は専門教育科目など医学科の専門カリキュラムが開始するため、英語を学ぶ機会の確保が難しくなります。そのため、私はリサーチ・クラークシップを行う4年次時点で英単語や文法を忘れてしまい、スピーキングやライティングなどの英語力が1年次よりも落ちていました。渡米直後にとても苦労したので、留学を考えている受験生は、入学してからも継続して英語を勉強することを心がけることが大事だと思います。
 
※2018年度入学の医学科生から、Practical Englishに加えAdvanced Practical English Ⅰが必修。
YCUのPractical English Center(PEセンター)を中心とした英語教育サポート
 ・Communication Hour(ネイティブスピーカーが対応)
  英会話の機会提供
  英語学修の相談対応
 ・Writing Centerによるライティングスキルの指導
 ・福浦キャンパス(医学部)にPEセンター分室の設置

-武部貴則先生からのコメント

「リサーチ・クラークシップの限られた期間の中、世界的に注目される論文発表ができたこと誠におめでとうございます!
 
東さんの努力はもちろんですが、同時期を一緒に過ごされた金子さん、指導をしてくださった木村昌樹研究員、研究室のメンバー、そして、派遣をサポートしてくださった大学関係者やご家族の皆様にも厚くお礼申し上げ、本成果をここにご報告したく思います。
 
私達の研究室で行うリサーチ・クラークシップは「医学生」という強みを活かして、普通の研究者では思いつかないような、ともすると、馬鹿にされてしまうような挑戦的なテーマを扱っていただくよう努力しています。本テーマも、アイデアはすでにあったものの、当時は取り組んでくれる研究員がいないような状況の中、実習でいらした東さんが参画してくださいました。実習期間は限られますので、まずは楽しむこと、そして、次に、プロジェクト化を左右するような「鍵」となるデータの取得に集中すること、の2点に絞って指導しています。
 
研究というとハードルが高いという昨今の印象ですが、そういった固定観念を取り除きつつ、今後も東さんのような医学生が育っていくことを心より祈念しております。」






武部貴則教授プロフィール
 
2018年1月より横浜市立大学 先端医科学研究センター担当教授 兼 臓器再生医学教室教授。
(米国シンシナティ小児病院准教授、東京医科歯科大学統合研究機構先端医歯工学創生研究部門教授)
iPS細胞から世界で初めて血管構造を持つヒト肝臓原基(肝芽)を創り出すことに成功し、肝芽の最適な培養方法・移植手法の発見によりミニ肝臓の大量作製に成功するなど、再生医学の領域において数々の研究成果を発表。また、再生医学の領域のみならず、デザインなどの広告的手法を用いて人々の健康行動を誘発、医療を分かりやすく伝えるための新たなコミュニケーション手法として「広告医学」という学問領域も手がける。
 
シンシナティの街並み
(2018/7/5)

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