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「ミニチュア骨髄」の再現に挑戦! 優秀演題賞受賞の佐用さん

「ミニチュア骨髄」の再現に挑戦!優秀演題賞受賞の佐用さん

生命ナノシステム科学研究科博士後期課程所属の佐用かなえさんが、2018年7月7日(土)、8日(日)に佐賀県で開催された第37回分子病理学研究会 はがくれシンポジウムに参加し、ポスター発表を行い、見事に優秀演題賞を受賞しました。
 
分子病理学研究会は、医学や病理学だけではなく農・理・工・薬学などの幅広い自然科学分野で活躍している研究者が集まり、分野を超えた研究者間の研究交流をコンセプトに開催されています。

生体内の骨髄環境を「ミニチュア骨髄」で再現することに挑戦!

表彰状を手にする佐用さん 発表ポスターの前にて

-現在、佐用さんが取り組んでいる研究について教えてください。

私が所属する小島伸彦研究室(Webサイト)では、バラバラの細胞を三次元的に組み立てる技術を使って、生体組織(肝臓、膵島、骨髄、精巣など)を模倣した微小環境や構造を再現した「ミニチュア臓器」の作製方法の開発を行なっています。私は学部3年生の2013年9月から小島伸彦先生の研究室に所属し、試験管内で骨髄組織を再構築した「ミニチュア骨髄」の作製に取り組んでいます。
 
私が研究対象としている骨髄組織は、血液を産生し全身へ供給する造血器官です。骨髄組織を構成するほとんどの細胞が接着力を持たない血球細胞であるため、バラバラの骨髄細胞を試験管内で再構築する方法は世界的にもこれまでに報告はありませんでした。私たちは、ミニチュア臓器を作る際に「メチルセルロース培地*1」という高粘性かつ膨潤性に富んだ溶液を使うことでミニチュア骨髄を再構築することに成功しました[1]。この手法は、特許技術として登録しています(特許第6281850号)。
 
ミニチュア骨髄の作製方法については国際雑誌に論文として投稿しています。
[1] Sayo, K., Aoki, S. and Kojima, N. Fabrication of bone marrow-like tissue in vitro from dispersed-state bone marrow cells. Regen. Ther., 3, 32-37, (2016).
 
*1 メチルセルロースは、増粘剤の一種でアイスクリームやソースなどに食品添加物として含まれています。私たちはミニチュア臓器作製のツールの1つとして、メチルセルロースを3%の濃度で溶解させた高粘性の培地(メチルセルロース培地)を使い、多種多様なミニチュア臓器を作製しています。

研究成果が造血・骨髄疾患発症のメカニズムの解明の糸口に!?

表彰式にて受賞の喜びを話す佐用さん

-今回のシンポジウムでの発表内容、エピソードを教えてください。

今回、第37回分子病理学研究会 はがくれシンポジウムでは「三次元骨髄様組織内における血球細胞組成の解析」というタイトルでポスター発表を行いました。発表では、作製したミニチュア臓器内に存在する血球細胞の割合が、平面培養した骨髄細胞と比較して、生体内の骨髄組織と同割合であることを報告しました。今後ミニチュア骨髄内で生体内の骨髄環境を再現することができれば、造血・骨髄疾患発症のメカニズム解明や、創薬への応用が期待されます。
 
実際の発表会場では、メチルセルロース培地を使ったミニチュア臓器作製方法を初めて耳にする方がほとんどです。実際の研究に使っているメチルセルロース培地を試験管に入れて持参し、どのくらいの粘性を持っているのか等を感じてもらい、初めて聞く方達にも理解しやすい発表を心がけました。

明治維新の武士の心得から研究者としての「心構え」を学ぶ

佐賀藩氏の葉隠の一節にかけた研究会の副題「研究道と云ふは愉しむ事と見付けたり」

-佐賀県での研究会参加、受賞を経て考える今後の研究活動の抱負を教えてください。

伝統ある分子病理学研究会でこのような賞をいただけたこと、大変光栄に思います。学会開催地となった佐賀県では現在、150年前の明治維新を振り返るイベントが多く開催されています。
今回の分子病理学研究会の副題となった「研究道と云うは愉しむ事と見付けたり」は、もともと「武士道と云うは死ぬ事と見つけたり」という佐賀藩士、山本常朝がまとめた武士の心得である”葉隠”の有名な一節が由来となっています。葉隠は現代でいう、ビジネスや日常生活に役立つ「心構え」を記したものとされています。

分子病理学研究会シンポジウム、研究会プレ企画として開催されたはがくれ研究道場への参加を通じて、研究者としての「心構え」を身に付けることができたと感じています。今後も好奇心を忘れずに愉しみながら研究に取り組んでいきます。
 
また、今回受賞の副賞として、佐賀藩主の鍋島家と同名の銘酒である「鍋島 純米大吟醸きたしずく」をいただきました。日々支えてくれる研究室のメンバーと鍋島を味わいながら、明治維新の鍵となった佐賀藩のリーダーたちに思いを馳せ、より一層研究意欲を高めていきたいと思います。

小さな大学ならではの密着感、他分野の学生との交流が今に生きている

緑豊かな金沢八景キャンパス

-YCUの魅力と特色を自身の経験を踏まえて教えてください。

私にとって、ヨコイチ(Y)は市内の家からも最寄駅からもちかくて(C)うれしい(U)大学です。受験生の皆さんにも言えることですが、この他にも学部入学当初から先生方や他学系の学生との距離がとても近いところが魅力だと感じています。

学部1年次に履修した教養ゼミは、医学部生や異なる学系の学生40名程度と専門の異なる2名の先生で1クラスが構成されており、ここで様々な分野の先生・学生と交流を深めることができました。3年次の研究室配属後も、研究室内ではもちろん、周囲の研究室に所属する学生や先生方とも気兼ねなく交流しています。

このような環境下にいたこともあり、学会参加時でも会場や懇親会の場で多くの先生方と積極的にディスカッションできています。小さな大学ヨコイチならではの密着感が、自身の知見を大きく広げることを助け、大きな世界で活躍できるまでに成長させてくれたと感じています。

-小島先生からのコメント

分子病理学研究会は本年で37回目を迎える、歴史のある研究会です。分子病理学研究会の特徴は、幅広い専門分野の研究者が集ってくることです。我々も含め、一見分子病理学に関係しないと思われるような農学部や工学部の研究者も発表を行っています。これは、分子病理学が決して古い学問ではなく、さまざまな新しい技術を取り込みながら発展している様子を示していると思います。口演やポスター発表での質疑応答も非常に活発であり、分子病理学に携わる研究者たちの熱い息吹を感じることができました。
 
佐用さんの発表テーマは骨髄組織を試験管内で三次元に再構築するというものです。骨髄組織の不具合は造血や免疫などに異常をもたらします。このような異常の原因解明やそれに対する創薬研究などを効率よく進めるためには、体外で骨髄組織を培養できることが不可欠です。しかしながら、骨髄の三次元再構築技術は他の臓器に比べると遅れています。

我々は佐用さんを中心として骨髄組織の再構築技術を開発し、特許を成立させるなどして、骨髄再構築の研究を進めてきました。今回、佐用さんが優秀演題賞を受賞できたのは、このような先駆性・独創性を評価していただけたからだと考えています。本受賞を励みとして、さらなる研究開発に期待しています。
(2018/8/10)

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