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【家舗弘志さん】スポーツ×経済学。データアナリストを目指し大学院進学。

経済学界、スポーツ界に貢献できるような研究にチャレンジ。

2019年12月に開催された「スポーツデータ解析コンペティション」の野球部門において、「プロ野球の打撃における参照点依存性の検証」をテーマに研究・発表を行い、見事最優秀賞を獲得した家舗さん。現在、スポーツを専門とするデータアナリストを目指して研究に励んでいます。

YCU国際総合科学部を卒業して1年間の社会人経験の後、2019年1月、夢をあきらめきれずにYCU大学院国際マネジメント研究科への進学を決意し、研究生として同研究科に入学した家舗さん。研究活動、その他学会報告、スポーツデータコンペ、NPBでの報告などに熱心に取り組み、この春には正規生として同研究科の博士前期課程に入学することが決まりました。

今回は、家舗弘志さんに「かなえたい夢」や「そのために取り組んでいること」をインタビューしました。

家舗 弘志(やしき こうじ)さん

大学院国際マネジメント研究科 研究生
※2020年4月、大学院国際マネジメント研究科 博士前期課程に入学予定

出身校 高校:奈良県立郡山高等学校
    大学:横浜市立大学 国際総合科学部 経営科学系 経済学コース

大学時代は、硬式野球部に所属
4年生の時には主将を経験
2015年神奈川大学野球秋季リーグ戦2部 優勝

夢は、「人生を豊かにすること」。そのために1年で退職。

—なぜ、仕事を辞めたのでしょうか?

退職した理由は、夢だった「人生を豊かにする」ため。
自分の人生を豊かにする方法はたくさんあると思いますが、人生で最も時間を費やす「仕事」を豊かなものにすることが、一番の近道だと考えていました。
そして、仕事を豊かにするためには、「情熱を傾けられる仕事に出会うこと」が重要ですが、そういう意味では以前の仕事では、主体的にあれこれやってみようという気持ちにはなれず、どうやったら楽ができるかばかりを考えていた気がします。最初はそれでも良かったのですが、徐々に飽きてきて、最終的には「こんなことやっていちゃだめだ」と思って辞めることを決意しました。

情熱を傾けることができる仕事。プロ野球チームのデータアナリスト。

日本野球機構での報告

—なぜ野球なのでしょうか?

野球は、小さい頃から続けてきたことで、学部生時代はYCU硬式野球部に所属し、最後は主将としてチームを率いていました。

野球の魅力は、私にとって条件なしで情熱を傾けることができるところです。常に野球のことを考えていられるし、隙間時間ができれば、バットを振ろうとかトレーニングをしようとか自然に考えていました。それはたぶん、好きだからなのだと思います。好きだから、朝早く起きて練習できるし、夜遅くまで研究できる。それを辛いと思うことは少ないです。自然に頑張ってしまうところが野球の魅力だと思います。

—なぜデータアナリストなのでしょうか?

学部生時代は、国際総合科学部経営科学系に所属し、中園善行先生の元でマクロ経済学を学んでいました。
マクロ経済学についてはもちろん、基礎的な統計学についても指導いただきました。

そんな学びの中でアナリストという職種を知り、まだ日本では多くないスポーツ専門のデータアナリストの存在も知りました。卒業論文でも野球について定量的に分析を行うなど、この世界に大きな憧れがありました。しかし、専門的な知識や技術の不足を理由に、その世界を目指すことなく諦めていました。その結果、学部生時代は企業の総合職を目指して普通に就職活動をしました。

仕事を辞めて大学院進学を決意したときも、知識と技術が圧倒的に不足していることには何も変わりはなく、完全に見切り発車でした。それでも野球に対する情熱と、中園先生の熱心な指導のおかげで、データアナリストの輪郭が少しだけ見えるようになってきました。現在は日々、研究や学会発表など積極的に活動しています。

研究生として、野球と経済学をミックスさせた研究に打ち込むことができた1年。

—なぜ研究生の道を選んだのでしょうか?

僕が大学院進学を決めた2019年1月は、既に大学院試験が終了していて研究生以外に大学院に入れる選択肢がありませんでした。しかし、今考えると単位取得義務のない研究生として1年間じっくり基礎から学ぶことができたのでよかったと思っています。

—どんな研究をしてきたのでしょうか?

この1年は、3つの研究テーマについて取り組んできました。そして、そのどれもがスポーツ、特に野球と経済学をミックスさせた研究内容です。スポーツと経済学というのは、アメリカでは1950年代から研究されていて広く認知されています。一方で、日本でのスポーツ経済学研究は数えるほどしかありません。日本政府は名目GDP600兆円を目標とした経済成長計画を2016年に発表していて、その戦略の1つに「スポーツの成長戦略化」というのが明記されています。それにも関わらず、日本にはスポーツ経済学の専門家がほとんどいません。スポーツ×経済学は、今後さらに需要が高まる分野だと思っています。経済学界、スポーツ界に貢献するような研究をできればと考えています。

現在の研究に役立っている学部生時代の学び

—マクロ経済学

中園ゼミで指導していただいたことは、主に2つです。1つがマクロ経済学、もう1つがプレゼンテーションの技法です。この両方が今、とても役に立っています。

マクロ経済学というのは物価や為替、経済成長など経済全体をとらえる変数について分析する分野で、そこで教わった基礎的な知識と技術的な分析手法は現在の僕の根幹を成しています。基本的には、スポーツの経済分析もマクロ経済学で学んだことの応用がほとんどなので、学部時代に熱心に指導して頂いたことには非常に感謝しています。

—プレゼンテーションの技法

プレゼンテーションについての技法もすごく役立っています。現在、学会や勉強会で発表する機会が多いのですが、苦手意識を感じることなく発表することができています。これに関しては、研究に限らず、社会人時代も役に立ったなと思う瞬間が多かったです。

研究に励む一方、学会報告、スポーツデータ解析コンペ、NPB(日本野球機構)での研究報告も。

—この1年間、積極的に外での活動をしている理由は?

僕の夢は「人生を豊かにすること」なのですが、そのために目標にしている職種がいくつかあります。その1つがプロ野球チームのデータアナリストです。この仕事は他の仕事とは異なり、少し閉鎖的な市場で求人が出回りにくいとされています。なので、僕自身がいろんな場所に露出して誰かの目にとまる機会をなるべく増やす。そして、逆にあちら側から僕に関心を寄せて頂けるよう、心がけています。それが、学会やコンペに積極的に参加する理由です。

ちなみに2019年は、研究以外に以下のような活動をしていました。
今振り返ってみると、いろんなことにチャレンジした1年だったと思います。

 ・統計関連学会連合大会 論文採択&口頭発表

 ・日本経済学会秋季大会 論文採択&ポスター発表

 ・行動経済学会 論文採択&ポスター発表

 ・第9回スポーツデータ解析コンペティション 最優秀賞

 ・日本科学野球研究会 論文採択&ポスター発表

 ・日本経済学会春季大会 口頭発表予定

 ・データサイエンティスト育成プログラム D-STEP 最優秀賞

 ・日本野球機構(NPB)においての研究報告

80万行のデータ解析から打率3割の野球選手の行動特性を発見。

—今回の取材のきっかけになったスポーツデータ解析コンペティションについて教えてください。

スポーツデータ解析コンペティションでは、行動経済学においての大きなトピックである「損失回避」について野球のデータを用いて研究しました。

ざっくり内容を説明すると次のようになります。まず、野球選手は打率3割以上を「利得」、3割未満を「損失」と認知する傾向があることが先行研究によって示唆されていました。しかし、あくまでそれは可能性に過ぎず過去の研究では断言できずにいました。そこで今回、僕が2016年~2018年のプロ野球の全てのプレー、約80万行のデータを分析することで、野球選手の意思決定と打率3割の関係について明らかにしようと試みました。その結果、ある時点で打率が3割を少しだけ超えているような選手は、その利得を守り損失を回避するために他の局面に比べて保守的な行動を選択するということが明らかになりました。

このような1球ごとのプレーの詳細が記録されている野球のビッグデータを用いた行動経済学的研究は、私の知る限り世界でも初めてです。

これから大学院生として過ごす2年間。

国際マネジメント研究科の合格発表の掲示板の前にて

—この4月からどのように過ごそうと考えていますか?

講義を通した知識と技術の修得はもちろんですが、それと同じくらい将来についての計画を立てることも大切だと思っています。大学に出戻って、今年で24歳になるので卒業後のプランをより明確にできるよう、勉強と研究に励みたいと思っています。あと、突然僕が仕事を辞めて両親と親戚一同が心配していると思うので、何らかの目に見える成果を挙げることができればなおよいです。

YCUを目指す受験生へのメッセージ

大学時代の部活動での1コマ
横浜市立大学は、規模は小さいですが、そのぶん生徒1人あたりの先生の数は非常に多いです。事実、僕は中園先生に限らず、多くの先生方に研究の助言を頂くなど本当にお世話になっています。勉強をするのに非常に恵まれた、最高の環境です。

あと、受験生のなかには高校野球をやっていた方いらっしゃると思います。横浜市立大学の硬式野球部はいいですよ。人数は少ないけれども、みんな主体的で溌剌としていて、本当に頼もしい後輩です。僕が2年生のときは神奈川大学野球2部で優勝、今年は後輩の三吉央起くんが沖縄初のプロ球団 琉球ブルーオーシャンズに指名されました。僕も4年時には主将を任せてもらって非常に成長することができました。少しでも関心があればグランドに足を運んでみてください。

あと、スポーツデータ分析に関心がある方がいらっしゃれば、ぜひ僕の研究室に遊びに来てください。野球のことでも何でも楽しくお話しましょう。




指導教員 中園善行准教授からのコメント

第9回スポーツデータ解析コンペティション、最優秀賞の受賞、おめでとうございます。今回の家舗さんの受賞は、偶然ではなく必然だったように思います。2019年4月、家舗さんが研究生として研究を始めて以来、彼が積み上げてきた努力は私が一番よく知っています。平日も休日もひたすら大好きな野球の研究に没頭し、次々と研究成果を上げていく家舗さん。しかも、連日朝から楽しそうにパソコンに向かい疲れた様子も見せない。「これを知る者はこれを好む者に如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」。わずか1年足らずで統計検定2級取得、RやStata、EViewsなどのプログラミング言語の修得、経済理論の理解、そして統計学会スポーツコンペティション最優秀賞受賞という成果は、彼の積み上げた努力を知る者にとっては、決して偶然ではなく必然だったというべきでしょう。


しかし家舗さんが研究を始めて1年足らずで名誉ある結果を残すことができた秘密は、家舗さんの人柄にもあります。日々努力を重ね、誠実な性格で、いつも笑顔を絶やさない家舗さん。家舗さんは、先輩・後輩にかかわらず仲間の誰もが彼を支えたいと思わせる人柄を持っています。彼一人ではなしえないことでも、周囲の力を上手に得ながら研究を進めていく彼の仕事の進め方には私も大いに学ぶ点があります。研究遂行力と周囲を惹きつける人間的な魅力を兼ね備えた家舗さんが今後どのような研究成果を挙げてくれるのか、大学院進学後の家舗さんの活躍と、卒業後に家舗さんがプロ野球界においてデータ分析の専門家として活躍する姿に今から期待していることころです。


この記事を読んで家舗さんの研究に関心を持たれた受験生の皆さん、ぜひ研究室に遊びに来てください。家舗さんが研究(と野球)に注ぐ情熱を肌で感じることができます。財閥系の上場企業を退職してまで、大学でひたすら知の追究に没頭することを選択した若き大学院生の話は、皆さんにとって新しく、意外でかつ刺激的な内容に違いありません。
 (2020/3/13)

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