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ビジネスの世界に見るデータサイエンスの役割とは

ビジネスの世界に見るデータサイエンスの役割とは

データサイエンス学部では、実社会におけるさまざまなデータ分析の活用事例について学ぶ「データサイエンスセミナー」を開催しています。今年度最終回のセミナーは、株式会社帝国データバンクより中川みゆき氏を講師に迎え、ビジネスの世界に見るデータサイエンスの役割についてお話しいただきました。

1900年の創業以来、企業データを収集し、ビッグデータをビジネスに活用

株式会社帝国データバンクは企業信用調査を行う会社です。企業信用調査とは、企業間で取引をする際に相手の信用を調べることです。1900年(明治33年)に創業し興信所としてスタートした後、日露戦争後の企業設立ブームを契機に企業信用調査のニーズが広がり、信用調査事業を確立していきました。信用調査自体が世間でほとんど認知されていなかった時代から、健全な経済活動の維持に企業情報やデータが必要とされていたのです。
同社が日々の取材によって蓄積した情報は、約180万社(信用調査報告書ファイル)。日本最大級の企業情報データベースで、中小企業が全体の約99%を占めるそうです。

企業情報は、全国に83箇所ある同社事業所の調査員が企業の経営者を訪問し、日々取材を重ねて信用調査報告書などにまとめています。報告書には企業概要や決算情報のほか、取引関係や出資関係の情報が掲載されており、企業の経済活動を測ることができます。なかでも、企業同士がどのように取引でつながっているのかという情報は、ビッグデータがなければ俯瞰的に見ることができません。同社では主要な取引先が記載された信用調査報告書の取引欄をつなぎ合わせ、企業間取引をひとつの固まり(企業間取引ネットワーク)として分析。これにより企業の経済活動やその波及効果を表す構造が見えてくるのだそうです。


こうした構造を知るためにはビッグデータが不可欠です。ビッグデータ時代の到来でデータ量は膨大になり、米国の調査会社によると、国際的なデジタルデータの量は2010年から2020年の間に約40倍増加すると言われています。

ビッグデータが整っていない時代にはアンケート調査などで標本調査を行っていました。しかし、標本調査では異常検知や個体差の把握が困難なことから解析可能な範囲が限定され、解析結果が意味をなさないケースもあると言います。ビッグデータ時代の到来により解析可能な範囲が広がり、全数を調査できるようになりました。これにより、従来のデータ量では実現できない解析結果を得ることが可能になり、データから価値を取り出すアプローチができるようになったのです。
データから価値を取り出すためには、データを加工する技術を要します。また、データから意味を取り出すには、時系列、比較ができるデータが必要です。解析結果を得るまでの工程において、その大半はデータの構造化(精製)に時間を要します。同社では、1972年のデータベースサービスの提供以来、分析のために必要なデータを構造化し、パネルデータ化や企業間の取引関係のネットワーク化などに取り組んできました。
バラバラに格納されているデータベースを構造化して企業ビッグデータとするには相当の時間と労力を要しますが、こうした地道な取り組みの結果、蓄積した企業データから新たな付加価値を創出する可能性が生まれます。パネルデータに整理したことで企業の倒産傾向のモデル化が可能になったり、ネットワーク化したことで取引金額を推計するモデルの構築が可能になるなど、企業ビッグデータを用いて、ビッグデータ由来の指標や新しい集計単位を研究開発して、その指標を用いて地域経済や企業を観察することが期待されます。

官民データの集約・可視化や企業間取引ネットワークの分析が、地域経済の活性化にも役立てられる

同社の取り組みは、RESAS(リーサス。地域経済分析システム)や地域未来牽引企業など、実社会での政策にも役立てられています。RESASは、産業、人口、観光など、地域経済に関わる官民の様々なビッグデータを集約・可視化したシステムです。同社ではRESAS公開に先駆け、官民の様々な構造のデータを統一化するサポートをしました。同社の企業データも自治体向け限定メニューとしてRESASに搭載されています。また、地域未来牽引企業では、取引のつなぎ目となっている企業が地域経済の中心的な担い手になるという考えのもとに、地域内外における取引実態等から地域貢献性を測る指標として、同社の企業間取引データが活用されています。
今後、ビジネスや社会の様々な局面でデータサイエンティストの活躍の場は限りなく広いと中川氏は言います。ビジネスや社会の現場では、データから意味を取り出すためにデータを研磨するスキルが求められると共に、データの癖や限界を理解した上でデータに付加価値を付けて活用するためのデータリテラシーが求められます。それにはデータが社会でどう活用されているか、どんな場面で使えるかを学ぶことが非常に重要です。データ研磨などデータサイエンスの基礎をしっかりと学び、インターンシップなどを通じて社会と触れていく機会を持つことで、社会に出てからの世界が変わってきます。データサイエンティストの教養として、リベラルアーツや実践的な知識をつけていくことが大切なのです。スキルに偏らずリテラシーと教養を兼ね備えたバランス感覚が、データを活用して新しい価値を創造していくための源泉になっていくのだと語りました。
講義を聞いた学生からは「世の中にはさまざまなデータが存在し、これを組み合わせることで分かってくることがたくさんあるのだと知りました」「帝国データバンクが、データに価値があることをまっ先に見いだし、現在もそれを事業にしているのはすごいと思った」などの感想が聞かれました。
講師プロフィール:
株式会社帝国データバンク
データソリューション企画部
データソリューション企画課・副課長
中川 みゆき氏

大学で経営学・商学を専攻。証券会社でコンサルティング・営業を経験後、株式会社帝国データバンクに入社。産業調査、人事などの部門にて、CFA協会カンファレンスやMPTフォーラムなどでの講演、企業年金改革や健康経営施策の導入、自治体でのEBPM研修やデータサイエンティスト養成研修を手掛け、人事制度改革から地域創生まで多様な分野に携わる。現在は2018年新設のデータソリューション企画部データソリューション企画課にて、データによる課題解決推進にあたる。

 

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