辻寛之先生写真

花咲かホルモン・フロリゲン

研究が切り開く未来


国際総合科学部 理学系 生命環境コース 木原生物学研究所 准教授

辻寛之(つじひろゆき)Hiroyuki Tsuji

世界をリードする研究を通して、発見する感動を共有したい

地球上でそれをはじめて見た人間になれる

辻寛之先生 インタビュー写真1

木原生物学研究所は研究所なので、ここに所属する人は学生であっても、高度な研究人材を目指す者として扱われます。これから大学入学をめざす高校生の方たちにとっては未知の存在かもしれませんが、研究所というものついて少し触れておきたいと思います。

全ての研究に言えることですが、本質的で重要なクエスチョンを発見し、直接的な方法で答えを探し、新しい発見にたどり着くというというのが研究であり、これは社会の要請する人材そのものであるとも言えるはずです。研究の醍醐味もそこにあります。その醍醐味を積み重ねると、自然に世界をリードする研究になっていると私は思います。

私たちの行っているフロリゲンの研究も、繰り返しの検証や、地味な作業も多々ありますが、常に意識しているのは本質的な質問は何か、自分の発見は何かということです。そして発見したその瞬間が最も重要な瞬間で、地球上で初めてそれを見た人間になれるという感動があります。現に私のチームで、可視化したフロリゲンをレーザー顕微鏡で観察した学生は、世界ではじめてフロリゲンの分布を見た人間ということになります。

同時に大学の教員は真に最先端の研究を行っている必要があります。教員と学生が一緒に世界最先端の研究を実践し、その発見の感動を共有するという「研究活動」こそが、教育そのものであるからです。研究の世界では、学生が発見したものを先生が見て驚くことだってたくさんあります。

学部やジャンルを超えて研究できる大学の環境

辻寛之先生 インタビュー写真2

私が普段研究をしている木原生物学研究所(Keyword-3)は金沢八景キャンパスや医学部キャンパスとは少し離れたところにありますが、横浜市立大学に所属するものとして、普段感じている事がいくつかありますので、そのことについて触れてみます。

まず、横浜市立大学は、規模でいえば小さい大学ですが、それぞれの分野で一流の方々が集まっていることが凄いと思います。そして文系、理系に渡る研究のできる国際総合科学部、最先端の医療を研究できる医学部と、研究の場としては非常に良い。そして、学部間、あるいは研究室間の垣根を飛び越して交流をするのが極めて簡単です。私の場合も、ゲノム機能の大規模解析では常に膨大な計算をする必要があるので、医学部の先生にお願いして高性能サーバーをお借りした研究を行っています。

最後に研究の世界についてひとこと。研究の世界は非常に競争が激しくギスギスしているのではと思っている方がいるかもしれませんが、それはありません。自分との競争はしますが、他人に勝つために人生を使って研究をしませんし、良い研究を継続すれば競争と無関係にちゃんと尊敬されます。協力関係にある研究所もたくさんあります。

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木原生物学研究所は、小麦の研究で世界的権威であった故木原均博士の手によって昭和17年(1942)京都府で設立された財団法人木原生物学研究所を前身とする横浜市立大学の附置研究所のひとつであり、理化学研究所や農業生物資源研究所といった国内の研究所だけでなく、メキシコの国際トウモロコシ小麦改良センター(CIMMYT) 等の国際的な研究所とも連携して研究を推進する、「国際総合科学」を体現した研究所である。ゲノムという考え方を提唱した故木原均先生の研究を礎に研究内容を大きく発展させており、研究所が所有するコムギ・トウガラシの遺伝資源を活用した研究などを行う。また社会貢献に直結する研究もあり、坂智広教授の「アフガニスタンでの小麦里帰りプロジェクト」の研究など、その活動範囲は国内にとどまらず、世界に向けられている。

編|集|後|記

辻先生の研究成果をはじめて知ったときには、これはすごい先生だと思い、緊張しました。お会いしてみるととてもお若い先生で、話しもわかりやすくしてくださりホッとしましたが、やはり世界最先端を行く方だけあって目力がありました。それにしても花を咲かせる花咲かホルモンとは、植物の世界の不思議を垣間みるようで興味深いものだと思いました。そんな先生ですが、ご家庭ではやさしいパパなようで、休日にはお子様を連れてスーパー銭湯にいくのがマイブームだそうです。こんな凄い先生がスーパー銭湯にいるなんて、隣で湯につかっている人は全く気づかないのだろうと思うと、なにか愉快な気がしました。

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