【レポート】横浜未来実装プロジェクト 中間発表イベント開催報告
2025.09.25
2025年9月25日(木)、TECH HUB YOKOHAMAにて「横浜未来実装プロジェクト 中間発表イベント」が開催されました。本イベントは、横浜市立大学共創イノベーションセンター、ヨコハマSDGsデザインセンター、そして横浜未来機構の三者が連携して推進する「横浜未来実装プロジェクト」において、各テーマの最新状況を紹介いただくと同時にトリガープロジェクトを発掘し、社会実装へとつなげるディスカッションが行われました。対面で約30人が参加し、専門や役割を越えた実践者同士の出会いと学びが深まり、今後のさらなる協働や発展へとつながる確かな手応えに満ちた時間となりました。


開催概要
日時: 2025年9月25日(木)15:00〜場所: TECH HUB YOKOHAMA
主催: 横浜市立大学 共創イノベーションセンター、ヨコハマSDGsデザインセンター、横浜未来機構
プログラム
1.横浜未来実装プロジェクト中間報告会の趣旨説明2.各テーマの発表
発表① Well-beingシティ
発表② サーキュラー&リジェネラティブシティ
発表③ アグリ&フードガーデンシティ
発表② サーキュラー&リジェネラティブシティ
発表③ アグリ&フードガーデンシティ
3.ワークショップ「社会実装に向けたNext Action」のアウトプット
パネラー講演の紹介
Well-beingシティ
「Well-beingシティ」では、病気や不調を抱えても安心して働き続けられる社会づくりについて話し合われました。アリルジュ株式会社森下真行氏は、企業・医療機関・地域をつなぐクラウドサービスを通じて復職支援を円滑にし、治療と仕事の両立を支える仕組みを紹介。生産年齢人口の減少や法改正を背景に、その重要性が高まっていることを指摘しました。横浜市立大学 西井正造先生は、心や体だけでなく社会とのつながりまで含めた「ウェルビーイング経営」の視点から、地域や企業が一人ひとりを支える仕組みの大切さを強調。働く人がいきいきと活躍できる街づくりへの期待が語られました。


森下 真行 氏(アリルジェ株式会社 / 代表取締役 )
病気や不調があっても、自分らしく働き続けられる社会をつくりたいんです。私たちは企業・医療機関・地域をつなぐ仕組みを立ち上げ、復職までのやりとりをスムーズにしようとしています。復帰の判断や情報共有が遅れることで、本来働ける人が働けないのはもったいない。来年の法改正もあり、このテーマはますます大切になります。病気になっても“また頑張れる”と思える横浜を実現したい。そんな思いで取り組んでいます。


西井 正造 氏(横浜市立大学 先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター YCU-CDC / 助教)
健康って、体や心だけでなく、社会とのつながりも大切なんです。森下さんの取り組みは、人を一人の生活者として支え続ける仕組みだと感じました。本人の気持ちやプライバシーに寄り添いながら、安心して社会に関わり続けられること。それがウェルビーイング経営の本質です。横浜から、誰もが自分のペースで役割を持ち続けられる社会が広がっていくことを期待しています。
サーキュラー&リジェネラティブシティ
「サーキュラー&リジェネラティブシティ」では、資源を循環させる社会づくりがテーマになりました。日揮ホールディングス株式会社田中悠太氏は廃食油からのジェット燃料やプラスチックのリサイクルなど、既に動き出している技術を紹介し、課題は“どう集めるか”にあると指摘しました。株式会社ちとせ研究所 柳町みゆき氏は藻や微生物を活用し、CO₂を吸収しながら素材や燃料を生み出すバイオの挑戦を語り、未来の産業を共につくる呼びかけをしました。横浜市立大学青正澄先生は、技術に市民参加を組み合わせることの大切さを強調。横浜全体を舞台に、循環を体感できる仕組みづくりへの期待が示されました。


田中 悠太 氏(日揮ホールディングス株式会社/サステナビリティ協創ユニット イノベーション推進グループ / Deputy Program Manager)
資源を“捨てる”のではなく“循環させる”。私はその仕組みをつくりたいんです。廃食油を集めてジェット燃料に変えたり、衣料品を回収して再利用したり、プラスチックをケミカルリサイクルで資源に戻したり。技術はありますが、課題はどう集めるか、どう質を保つか。ここに市民や自治体の協力が欠かせません。横浜での実証から、新しい循環の社会を一緒に築いていければと思います。


柳町 みゆき 氏(株式会社ちとせ研究所 / Manager)
私たちは“生き物の力”を社会に生かそうとしています。藻や微生物を育てて、光合成でCO₂を吸収しながら燃料や素材をつくる。すでに東南アジアで実装が進み、農業や健康にも応用しています。115の機関が仲間となり、未来のバイオ社会を共につくろうとしています。横浜からも、この循環型の取り組みに参加してもらえたら嬉しいです。一緒に“バイオの未来”を育てていきませんか?


青 正澄 氏(横山市立大学 国際教養学部・都市社会文化研究科 / 教授 )
技術があっても、それだけでは社会は変わりません。人の意識や行動が変わってこそ、循環の仕組みは根づきます。市民が関わり、共感できる形をどうつくるかが大切です。横浜という大きな都市だからこそ、実験を重ねて新しい仕組みを育てられるはず。市民と企業、大学が一緒になって未来を描くことが、持続可能な社会への一歩だと思います。
アグリ&フードガーデンシティ
「アグリ&フードガーデンシティ」では、横浜の農業の新しい可能性が語られました。JA横浜 居戸浩和氏は、食料自給率の低さや担い手不足を課題に挙げ、市民が農業に関わる機会を広げることで地産地消や交流が進むと提案しました。横浜市立大学 坂智広先生は、農業を“食の供給”にとどめず、健康や教育、多世代交流の場として位置づける重要性を指摘。都市型農業を核に、学びやつながりを育むまちづくりの可能性が語られました。横浜ならではの「食と農の未来」を共につくる姿勢が示されました。


居戸 浩和 氏(横浜農業協同組合 経営企画本部DX戦略室 / チーフマネジャー)
横浜の農業をもっと元気にしたいんです。今は食料自給率の低下や担い手不足が課題ですが、農地や地域資源にはまだまだ可能性があります。市民のみなさんが農業に関わる機会を広げることで、地産地消や食育、地域交流が進みます。農業は食べ物をつくるだけではなく、人をつなぎ、地域を豊かにする力があります。横浜ならではの“食と農のまちづくり”を一緒に進めていきましょう。


坂 智広 氏(横山市立大学 理学部・生命ナノシステム科学研究科・木原生物学研究所 / 教授 )
農業は“食を届けること”にとどまりません。人の健康を支え、教育の場となり、世代を超えて人と人をつなぐ可能性があります。都市型農業を広げることで、市民が自然や食に触れ、学びや交流が生まれる。それが横浜の未来を豊かにすると考えています。大学としても研究や教育を通じて支えていきますので、みなさんと一緒に“アグリ&フードガーデンシティ”を育てていきたいです。
ワークショップ「社会実装に向けたNext Action」のアウトプット
トークセッションを受けて、参加者は3つのテーマごとに分かれ、未来に向けたアイデアを話し合いました。「Well-beingシティ」では、通勤や移動の負担軽減や中小企業も含めた多様な働き方を支える仕組みが提案されました。「サーキュラー&リジェネラティブシティ」では、港や海を活かしたPRや、農業やバイオとの連携、SNSを通じた若者への発信の重要性が語られました。「アグリ&フードガーデンシティ」では、屋上菜園やオフィス農園づくり、食の安全や医食同源の発信、エネルギーとの親和性を高める工夫などが示されました。いずれの発表も、横浜の強みを活かしながら、小さく実証し未来へつなげていこうという姿勢が共有されました。
Well-beingシティ
私たちのグループでは、“どうすればもっとウェルビーイングな暮らしができるか”を考えました。通勤や移動の負担を減らしたり、会社や地域を越えて自由に行き来できる仕組みがあればいいな、と話しました。ただ、大企業ならともかく、中小企業がどこまで対応できるのかという課題も出ました。みんなで盛り上がりながら、“多様な働き方や暮らしをどう受け止めていくか”を考える、楽しい対話になりました。サーキュラー&リジェネラティブシティ
横浜の強みはやっぱり“海や港”だよね、という話からスタートしました。もっとPRを強めていくことが必要だと感じましたし、循環のアイデアを農業やバイオと組み合わせる発想も出ました。若い世代や新しい就農者が加わることで、これまでにない作物や取り組みが生まれるかもしれません。SNSやデジタルを使って若者や消費者に届く形で発信することも大事だと思います。技術と人の思いをつなげながら、新しい循環型の社会を育てたいと考えました。アグリ&フードガーデンシティ
私たちは農業をテーマに、横浜ならではの取り組みを考えました。例えば、みなとみらいで屋上菜園をつくったり、オフィスの社員食堂の屋上に畑をつくると面白いんじゃないかと。食べることと作ることが切り離されている現状を変えるために、食の安全や“医食同源”の考えを発信していくことも大切だと話しました。さらにエネルギーや資源とのつながりも深めていきたい。まずは“なぜやるのか”をきちんと考えて、小さく実証していこうという点で全員の意見が一致しました。中間発表会のまとめ
横浜未来実装プロジェクトの中間報告会では、これまでの議論を踏まえた三つのテーマ「Well-beingシティ」「サーキュラー&リジェネラティブシティ」「アグリ&フードガーデンシティ」が紹介され、それぞれの分野の専門家から具体的な取り組みや課題が共有されました。健康と働き方の両立支援、資源循環やバイオ社会の実装、都市型農業を通じた食と地域のつながりなど、多彩な実例や構想が示され、未来に向けた可能性が浮かび上がりました。さらに参加者によるワークショップでは、身近な暮らしや地域資源を活かした新しいアイデアが発表され、市民・企業・大学が共に考え行動する姿が確認できました。今回の報告会を通じて、横浜が抱える課題を共有し、未来の都市像を共創するための土台がより明確になりました。ここから実証や具体的なプロジェクトに発展させていきますのでご期待ください。