MIOKO TSUBOYA & NORMAN NAKAMURA Seminar01 MIOKO TSUBOYA & NORMAN NAKAMURA Seminar01

研究セミナー特集

Seminar01 多文化教育の実践と理論 神奈川における外国につながる子どもの教育支援

開催日 / 2016年7月8日(金) pm6:00〜7:30
開催場所 / 横浜コミュニティデザイン・ラボ さくらworksイベントスペース(横浜市中区)
講演 / 坪谷 美欧子 准教授
ゲスト / 中村ノーマン氏(多文化活動連絡協議会代表)
発表/院生 中沢英利子さん

3. 院生 中沢英利子さんによる発表

中沢英利子さん

Eriko Nakazawa中沢 英利子さん

中沢英利子さん

大学院 都市社会文化研究科 都市社会文化専攻
修士課程 (社会人入学)

主にブラジルを研究フィールドとし、ブラジルに移住した人々で構成される日系社会について深い洞察力を発揮。長く中南米で過ごした経験を活かし、現地では日系人の支援活動やフィールドワークをこなす等、積極的な活動を行う。

大学院で研究をすることは本当に素晴らしい

こんばんは。中沢英利子と申します。

私は現在、横浜市立大学大学院、都市社会文化研究科の修士課程に在籍しており、「ブラジル日系社会の日本語と文化の継承」というテーマで研究をしております。今回のこのセミナーのテーマ「多文化教育の実践と理論」にも、多少関わりがあろうということで、今回発表の場をいただけたものと考えておりますが、本日は私自身の大学院生活と研究内容について簡単に述べさせていただきたいと思っています。

ご覧の通り、私は社会人枠で入学したわけですが、横浜市立大学の大学院には、実に多彩な社会人の方が在籍していらっしゃいます。もちろん、4年間の大学生活を終えてすぐの方もいらっしゃいます。ですので、多様な年齢層の方が在籍しているということになります。社会人の方は、それぞれの経験を生かして、研究に取り組んでいらっしゃいます。私の場合は、長く中南米に暮らしておりましたので、日本にいるときは、南米から就労を目的として来日して来た日系人の方々への日本語教育を主にやっておりました。その他にも就労支援ですとか、生活支援にも関わりました。その経験の中で自分の研究テーマを見つけ、その研究が行えるということで、横浜市立大学大学院に入学いたしました。入学はしたのですが、すぐにまたブラジルに日本語教育の仕事で行くことになってしまい、どうしたものかと思っていたところ、幸い長期履修制度という休学制度を利用することができました。結局2年ほど大学院の方を休んでしまったのですが、この制度があったおかげで、本当にスムーズに復学することができ、現在、今年度の修了を目指して、論文を作成中というところです。

さて、私の研究フィールドであるブラジルについては、みなさん、もうすぐリオオリンピックが開催されますので、よくテレビでご覧になっていると思いますけど、どうでしょうか? ひったくりが多いとか、そういうことばかりがニュースで流れておりますので、皆さんの印象が気になるところです。

意外に知られていないようなのですが、ブラジルというのは実にさまざまな民族と文化が入り混じった移民の国です。実情を申し上げますとヨーロッパ系の方が約半分、これにアフリカ系の方が約8%、東洋系の方が約1%、先住民の方が約0.4%、そしてヨーロッパ系の方に次いで多いのが混血の人々で約43%もいます。移民の国ですが、混血が非常に進んでいる国、ということがいえると思います。

そのブラジルでは1988年に改正された憲法において、多様性が社会を豊かにするという考えのもとに、多文化主義政策がとられております。私が調査に入っている小さな日系人のコミュニティーもその影響を受けておりました。この多文化主義が世界の大きな潮流のひとつであるということが、私自身の研究を通しても実感することができました。

大学院の話に戻りますが、先ほど、横浜市立大学の大学院にはたくさんの社会人が在籍していると申しましたが、それぞれが社会人としての経験を生かして研究に取り組むというのは間違いないことです。しかし、興味と経験値だけでは決して研究を進めていくことはできないということが、大学院に在籍していると本当によくわかります。基礎的理論や先行研究、あるいは論文の書き方など、先生方からたくさんのことについてご指導・ご助言いただいて、セミナー写真1はじめて研究というものを進めることができると考えています。

私の場合は坪谷先生に師事させていただいたおかげで、人が移動するということについての理論、あるいはエスニシティの理論、また調査対象に対しての社会学的アプローチなどを、細かく指導いただくことができました。また、このセミナーの一番前に座っていらっしゃる高橋先生にもお世話になったのですが、戦前・戦時中の海外での日本語教育について、いろいろご指導いただきました。移住した日本人が移住先で受ける日本語教育のありようなどについて視野を広めることができ、感謝しております。

また、私は海外に移住した日本人のことを研究しているのですが、この日本の移民も、その多くが、ここ横浜の港から出て行ったということについて感慨深いものを感じます。人の移動についての研究を、わざわざ東京に行かなくても、ほとんど地元とも呼べる横浜で、社会的、時間的、空間的移動を強いられることなく研究できることについて、本当にありがたく、素晴らしいことだと思っております。

この横浜市立大学の大学院で研究を続け、その後自らの研究をいかに社会に還元していくかというのが、私の大きな大きな課題になると思っています。

簡単にではありますが、私の大学院での学びの一端をご紹介させていただきました。ありがとうございました。

セミナー写真1

セミナー取材にあたって

セミナー写真2

 横浜市立大学大学院 都市社会文化研究科による記念すべき第1回の研究セミナーということで、取材班も興味津々でした。おそらく難しい理論や専門用語が飛び交うのではと恐れていたのですが、講師の皆さんのお話はどれもわかりやすいものでした。
 しかし、よく考えてみると、身近でありながらあまり知られていない「外国につながる子どもたち」への教育といった問題は、自分がその当事者であったら、大変なことだということが、お話を拝聴してよくわかりました。
 記事には掲載できませんでしたが、お話の後の質疑応答も活発に行われ、あっという間に時間が来てしまった感がありました。
 セミナーに参加された方々にとっても、国際化といわれる社会に潜む大きな課題について、考えさせられる貴重なひとときであったと思います。

セミナー写真2