直腸癌について

近年まで肛門に病変が近い直腸癌に対しては、肛門も一括して切除する「直腸切断術」が施行され永久人工肛門となることを余儀なくされていました。

しかし最近ではこのような症例でも、術前治療や手術治療の発展によって肛門温存ができるようになった症例も存在します。全例ではありませんが一定の条件をみたせば自分の肛門を残せる超低位直腸切除術、ISR(括約筋間直腸切除術)が行われるようになり、肛門温存が可能な症例も増えています。これらの手術でも一時的には縫合不全の予防や、良好な肛門機能を温存するため人工肛門を造設しますが、吻合部や肛門機能に問題のないことを確認して一時的人工肛門を閉鎖する手術を行います。一時的人工肛門閉鎖後は自分の肛門からの自然排便が可能となります。

直腸癌の最新の治療戦略

術前治療

局所進行直腸癌に対しては①原発腫瘍の縮小(局所再発の予防)、②ダウンステージ、③微小転移の制御(遠隔再発率の低下)などを目的として、術前放射線化学療法や術前化学療法を行い手術へと繋げていきます。直腸癌に対して術前治療を施行することによって、直腸癌が消失することもあります(10〜20%)。また近年術前に放射線治療と全身化学療法を両方施行するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)という治療法の開発が進んでいます。当科でも積極的にTNTの治療開発を行っており、直腸癌が消失する割合は約30%まで上昇しております。消失した場合は患者さんと十分に話し合った上で、手術を施行せずに経過観察を行うという選択肢もあります。手術を行わない場合、人工肛門の心配や排便機能障害が生じることがないため、非常に良好な生活の質を維持することが可能であると考えています。

手術治療

直腸癌の手術は狭い骨盤内での手術が必要となるため、特に肛門に近い腫瘍の場合は手術難易度が高いといわれています。また肛門を温存する場合は機能温存のために特に繊細な手術が必要となります。
現在当院では
・腹腔鏡手術支援ロボット(da VInci Xi)を用いてロボット支援下手術
・最新鋭の腹腔鏡手術機器を用いた腹腔鏡手術
・腹腔側と肛門側から同時に鏡視下手術を行うtaTMEを行っております。
症例によって最適と思われる手術を選択し提供できるように、5名の内視鏡外科学会技術認定医(大腸)が中心になって手術に当たっております。

  • ロボット支援下手術
  • 腹腔鏡手術
  • taTME

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