vol.10 遺伝子から医療を支える社会制度まで。心臓・血管の治療に留まることなく総合的な問題解決を目指す
 医学群 循環制御医学 教授 石川 義弘(いしかわ・よしひろ) vol.10 遺伝子から医療を支える社会制度まで。心臓・血管の治療に留まることなく総合的な問題解決を目指す 医学群 循環制御医学 教授 石川 義弘(いしかわ・よしひろ)

常に未来を考えられるリーダーの養成が目標

10年先、20年先に必要なものを見極める能力が必要

 私は医学生の指導においては、リーダーの養成を目標にしています。将来、大学や研究機関、民間企業などでリーダーを目指せる人材を育てたいのです。これは、組織の代表や社長になってほしいという意味ではありません。自分がいる職場やその状況に応じて、自らの考えを出して、周りとも協調しながらチームを引っ張っていけるような人材を輩出するのが、私の役目であると思っています。
 リーダーに必要な資質とは何でしょうか。それは、常に10年先や20年先の未来を考えられることだと私は考えています。明日に何が必要なのかではなく、メガトレンド(時代の大きな流れ)を踏まえたうえで、必要なものを考える能力が求められています。そして、自分ではなく組織全体の利益を第一に考えて、自己犠牲を惜しまないということも大切です。
 これは、医療の現場では特に当てはまることです。例えば、コレステロール値が高い40歳の患者さんがいたとして、簡単に薬を処方すべきかといったケースがあります。もしその人が80歳だったら、運動や食事節制をしてもらうのは大変ですから、薬を服用していただけばいいでしょう。しかし、40歳の患者さんの10年先や20年先を考えると、コレステロールを抑える薬を簡単に処方するのは、良いこととは言えません。薬を処方するにしても少量にとどめて、患者さんのセルフケアを促した方が、その人の将来にとっても社会にとっても、プラスになるはずです。
 「医師は良きマネージャーであれ」と、米国に留学していた時に教わりました。当時はその言葉を、患者さんや看護師との関係だけと解釈していましたが、実はもっと広い意味を指すことを今になって感じるようになりました。私自身も、若い研究者の数十年先や取り巻く環境の変化を見極めて、彼らにとって必要となる指導をしようと常に心がけています。

横浜市大をもっと活用して、チャンスを広げてほしい

 研究室には、多様な目的を持つ若い人が集まっています。臨床活動を続けながら研究をしたい人や、理学部出身で企業の研究職を目指している人、留学生や社会人も在籍しています。OBには、大学教授や病院の部長や院長のほか、大手製薬会社の重役になった人もおり、国内外の様々な分野でリーダーとして活躍しています。
 教育プログラム学生に身に付けてもらうことの1つが、各自の研究成果を発表するプレゼンテーション技術です。学会や論文で発表するスキルが身に付いてなければ、良い研究であっても認めてもらうことができません。コミュニケーション能力は、医者が患者さんやスタッフを安心させるために大切なのはもちろんですが、研究の場面でも必要とされるスキルです。
 大学では、ぜひ教員を大いに活用してほしいですね。若い人たちにチャンスを与えるのが、私たち教員の仕事なのですから。私も、留学したい学生には推薦状を書いたり、博士課程の卒業生が研究助成を受けられるように努めたり、バックアップは惜しまないでしてきました。
 最後にOBとして一言。横浜市は、ニュージーランド1国に相当する人口や経済の規模を持っています。その横浜にある横浜市大は、たくさんの潜在能力を秘めているはずです。横浜市で唯一の存在である医学部について言えば、神奈川県下にこれほど多くの医師を輩出している大学はないでしょう。それだけのキャパシティがある横浜市大には、大きなチャンスが広がっています。

【My Favorite】
 海外や地方を訪れた際には、必ずその土地の人がよく行く店で食べるようにしています。特にB級グルメを自分で探すのが好きで、アジアだったら屋台の料理、アメリカならホットドッグが美味しいですね。日本では、駅の立ち食いそばも、意外においしいお店が多いのでよく食べます。
 今まで食べた中では、福井県のソースカツ丼が絶品でした。見た目は上品ではありませんが、あまりにも美味しいので福井を訪れる度に食べています。もちろんコレステロールにも気を付けていますので、自宅では普通の食生活。B級グルメは外出する時の楽しみの1つですね。