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重症薬疹: Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症/薬剤性過敏症症候群

Stevens-Johnson症候群/中毒性表皮壊死症

疾患概念

Stevens-Johnson症候群(スティ-ヴンス・ジョンソン症候群; SJS)および中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis; TEN)は、発熱とともに全身の皮膚、粘膜に水疱やびらんを生じる疾患です。SJSは年間3〜4人/100万人、TENは1〜2人/100万人と稀な病気ですが、急速に進行して他臓器障害を生じ、死亡や後遺症を生じる重篤な疾患です。SJSとTENは同じ系統の疾患で、TENはSJSの重症型となります。
いずれも国の指定難病となっています。

原因

薬剤(抗菌薬、消炎鎮痛薬、抗けいれん薬など)が原因として多いですが、小児ではマイコプラズマなどの感染症が原因となることもあります。

症状

高熱、強い倦怠感とともに、皮膚の水疱や紅斑、粘膜(眼、口唇・口腔内、陰部)にびらんが生じます。症状が進むと、皮膚の紅斑部分は剥がれてびらんとなります。粘膜は、眼球結膜充血や眼脂、口唇や陰部の広範囲なびらんがみられ、しばしば痛みを伴います。眼症状が強い場合、ドライアイや失明といった重症な後遺症を残します。TENは死亡率約30%と予後不良です。

薬剤性過敏症症候群とは

疾患概念

薬剤性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome; DIHS)は、特定の薬剤を長期間内服した後、発熱と全身性紅斑を生じる疾患です。
薬剤に対する過敏反応に加えて、ヒト6型ヘルペスウイルス(HHV-6)などのウイルスの再活性化が発症2〜4週後に認められることが特徴です。

原因

薬剤表薬剤表

比較的限定された薬剤(抗てんかん薬、アロプリノール、サラゾスルファピリジン、ミノサイクリンなど)を長期間(2~6週間)内服した後に発症することが知られています。

症状

薬剤内服後、発熱とともに顔面腫脹を伴う全身の紅斑が生じ、リンパ節腫脹、肝・腎機能障害、血液学的異常(白血球増多、異型リンパ球の出現、好酸球増多)を認めることが多いです。
皮膚の所見は様々ですが、SJS/TENのような水疱やびらんは一般的には見られません。
DIHSでは、原因薬剤の中止後も、皮疹や肝腎機能障害など様々な症状が遷延し、繰り返し再燃することが特徴です。
また、皮疹治癒後、数年後に自己免疫疾患(バセドー病、橋本病、1型糖尿病など)を発症することがあり、注意が必要です。

重症薬疹の検査

診断および重症度判定のための検査

当院では、一般的な血液検査のほか、皮疹部分からの皮膚生検、臓器障害評価目的の画像検査(レントゲンやCT)を可能な限り受診当日に施行する体制を取っており、迅速な治療介入を心掛けています。
また、眼症状の評価目的に眼科にて角結膜の評価を行います。経過中、消化管出血が疑われる場合は、消化器内科にて内視鏡検査などを行うことがあります。

原因薬剤の同定検査

採血で行える薬剤リンパ球刺激試験、皮膚テスト(パッチテスト・皮内テスト)などを組み合わせて原因薬剤の同定を行います。
基本的に重症薬疹が治癒した後に行います。
退院後は当科のアレルギー外来にて責任を持って薬剤同定検査を行っています。

  • 薬剤リンパ球刺激試験
    薬剤リンパ球刺激試験
  • 皮膚テスト ブリックテスト・パッチテスト
    皮膚テスト ブリックテスト・パッチテスト

重症薬疹の治療法

SJS/TENの治療

SJS/TENの治療SJS/TENの治療

原則入院加療となります。
当院では、SJS/TENの治療ガイドラインに則り、全身性ステロイドの投与を中心として、重症度に応じてステロイドパルス療法、大量免疫グロブリン療法、血漿交換を組み合わせて治療を行っています。
重症の場合、集中治療室で全身管理を行いながら、皮膚および粘膜の処置を行っています。肺障害、肝障害、消化管出血などの多臓器障害を生じる疾患であり、他科連携が重要となりますが、特に眼症状は重篤な後遺症を残しやすいため、早期から眼科と連携して診療に当たっています。
当院はSJS/TENの経験が豊富な医師が多く在籍しており、他科連携による集学的治療をスムーズに行うことが可能です。SJS/TENは早期診断、早期治療が予後に直結する疾患で、TENの平均死亡率は30%と高率ですが、当院では全国的にみても高い救命率を誇っています。

DIHSの治療

DIHSの治療DIHSの治療

現在、確立した治療法はありませんが、皮疹、他臓器障害の程度に応じて全身性ステロイドの投与が行われます。
ステロイドの急な減量や中止はウィルス再活性化を増強する可能性があるため、症状をみながら慎重に減量していきます。
また、DIHS経過中はさまざまなウィルス再活性化がおきますが、なかでもサイトメガロウィルスが検出された場合は消化管出血など重篤な症状が起きることがあるため、抗ウィルス薬投与を検討します。
DIHSの皮疹が治癒した後も、数年にわたり甲状腺機能障害や1型糖尿病といった自己免疫疾患を生じることがあるため、外来で採血検査を含めた定期的なフォローアップを行います。