VI 横浜市立大学,医学部及び附属病院に関する提言

本件事故に関して,各委員から,医学部及び附属病院に関して,幅広い観点から検討すべきではないか,との指摘があった。
 委員会としては,市立大学が,今後,医学部及び附属病院のあり方について検討する際,次の事項に,特に配慮するよう要望する。

1 横浜市立大学の管理運営について

 市立大学には,「大学の運営に関する重要なこと」を審議する内部組織として,「評議会」が設置されている。本件事故は,大学運営にとって極めて重要な影響を及ぼすものであると考えるが,これまでの経過を見ると,本件事故が発生した後,評議  会が十分に機能していたとは思われない。
 大学は,教育・研究について自主的・自律的に決定し,また,実施するうえで必要な権限を持っている。本件事故についても,大学全体の問題として,評議会等において,教授の長期間にわたる空席など,医学部の管理運営に係る問題点を指摘,点検し,本件事故の責任問題も含めて,自浄作用を発揮することを強く期待する。

2 医学教育について

 本件事故は,医師の教育・養成機関である大学病院において発生したものであり,患者・市民に与える影響は大きく,また,医療関係者からは,極めて遺憾であるとの厳しい指摘を受けている。
 大学病院に対しては,特に,高度な医療水準と良質な医療の提供が期待されており,本件事故によって,患者・市民の附属病院に対する信頼は大きく揺らいでいる。
 そこで,患者尊重の医学教育,責任感のある医師の育成及び教育・カリキュラムの充実について検討する必要がある。

3 病院管理体制について

(1) 病院長の指導力と補佐体制の確立

 病院長は,病院を代表する職として,病院運営全般にわたる管理者として位置付けられている。
 医学部は,病院長が自らの指導力を発揮できるようにするとともに,管理,診療,あるいは広報を分担する副院長の設置や病院管理運営に関する意思決定システムの見直しを含め,管理運営体制の強化を図る必要がある。

(2) 教授の選任方法の改善

 附属病院の第1外科においては,講座の責任者として,医師の教育と養成について責任を持ち,併せて診療科部長を務める教授が,長期にわたって選任されず,不在であった。
 管理運営体制に長期間にわたる空白が生じたことが,本件事故に何らかの影響を与えているのではないかと思われる。
 今後は,こうした事態が生じないよう,教授の選任方法について改善する必要がある。

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