本報告書は,横浜市長からの委嘱に基づき,横浜市立大学医学部附属病院(以下「附属病院」という。)において発生した手術患者取り違え事故(以下「本件事故」という。)に関して設置された「横浜市立大学医学部附属病院の医療事故に関する事故調査委員会」(以下「委員会」という。)の調査結果について報告するものである。
本件事故は,医師の教育・養成機関である大学病院で起きた事故として,患者・市民をはじめ,医学・医療界に与えた影響は極めて大きいものがある。
1 本件事故の概要
平成11年1月11日(月),附属病院の手術室において,外科病棟(第1外科)の患者(A氏,B氏)の手術を行う際,A氏をB氏と,B氏をA氏と取り違え,それぞれ本来行うべき手術(A氏は心臓手術,B氏は肺手術)とは異なる手術(A氏は肺手術,B氏は心臓手術)を行った。
2 委員会の設置経過
市立大学においては,本件事故の発生に気が付いた時,直ちに,市長に報告するとともに,当日(11日)の夜に,患者の家族へ説明を行い,公表することについて相談した。
翌12日(火)の午前中に,警察に報告した。
その後,本件事故の公表について家族と話し合いをしていたが,1月13日(水)一部新聞に本件事故に関する報道があり,急遽,夕刻に事故の発生について記者会見を行った。翌14日(木)に改めて記者会見を行い,事故の概要を公表するとともに,市立大学学長の指示により,附属病院内に病院長を委員長とする事故対策委員会を設置した。
事故対策委員会では,本件事故の事実関係の確認と防止対策について検討を行ってきたが,本件事故は,極めて重大かつ異例なことであるため,附属病院内部の事故対策委員会とは別に,幅広い視点から真相究明にあたるため,1月21日(木)に,本市助役を委員長とし,医学部長のほかに,外部委員の参加も得て,市立大学事務局を事務局とする委員会が設置された。
その後,会議を2回開催したが,外部委員から事実関係の確認及び原因究明を行うには,客観的な視点からの調査,検討が必要であるため,本件事故の当事者である市立大学関係者が参加しているのは適当ではないとの指摘があり,第3回目以降は,医学部長の辞職後,市立大学関係の委員を置かないこととし,また,事務局を市立大学事務局から衛生局・総務局に変更した。
また,専門的な医療領域の問題に関しては,2月27日(土)に,心臓血管外科及び呼吸器外科の専門医を特別委員として委嘱し,調査,検討を行った。
3 委員会の設置目的
委員会の設置目的は,本件事故について,事故の事実確認及び原因究明を行い,事故の再発防止を図るため調査,検討することである。
4 委員会の審議経過
委員会は,本件事故の事実確認については,附属病院から報告された事実経過を基に検討,確認し,原因究明については,附属病院から報告を受けるとともに,特に,取り違えに気が付かずに手術を行ったことなどについては,特別委員からの専門的意見も受けて,調査,検討を重ねた。
委員会としては,限られた資料,期間など一定の制約がある中で,本件事故のより根本的な原因究明及び一刻を争う再発防止に向けた提言を行うものである。
[報告書目次]