当院の取組み

がん診療 生殖医療センター

診療科の特色

当科は不妊治療を行う科ですのでがんの診療は行いません。
しかし、がん治療をこれから行う患者さんの妊孕性(妊娠させる力)の温存のため、男性患者は精子、精巣組織の凍結を、女性患者は受精卵(胚)または卵子凍結を行っています。また、癌治療終了後に妊孕性が低下した患者さんへの対応も行っております。

がん種

男性

これから癌治療を受けられる患者さんのうち、抗癌剤、放射線、骨盤内手術を施行し、治療後に精子数が減少、射精障害などにより妊孕性が低下する可能性がある患者さん、ならびに癌治療が終了後に上記の症状を来した患者さんが対象です。
特にがん種に制限はありません。

女性

これから癌治療を受けられる患者さんのうち、抗癌剤、放射線、骨盤内手術を施行し、治療後に卵巣機能低下(無月経)をきたす可能性が高い患者さん。
乳癌などで長期にわたりホルモン剤などによる治療を予定されておりその間に妊孕性が低下してしまう年齢になることが予想される患者さんが対象です。
原疾患の治療に悪影響をおよぼさないことが前提になり、主治医の妊孕性温存に関しての許可が必要です。

治療概要(治療実績)

男性

上記の患者さんへ癌治療開始前に、液体窒素による精液もしくは精巣組織の凍結を行っています。
2011年12月より精子凍結外来を開始し、現在までに約100名の患者さんの精液を凍結保存しております。
また、精液を回収できなかった患者さんに対しては時間が許せば「精巣内精子回収術」を施行し、精巣組織の凍結も行っております。
また、治療終了後の不妊症患者さんに対しても一般の不妊症患者さんに準じて診療を行っております。

女性

妊孕性温存の方法として、放射線照射野から卵巣を移動する卵巣移動術または遮蔽、受精卵(胚)凍結、卵子凍結、卵巣凍結がおもな方法となります。
どの方法を選択するかは、原疾患の種類・治療・患者さんの年齢・既婚か未婚などにより異なります。胚凍結は不妊治療でも数多く行われ一番確立された治療でありますが、既婚者が対象となります。
1回の採卵あたりの妊娠率は20%程度です。また、採卵まで排卵誘発のために2〜4週間の期間が必要です。
卵子凍結は婚姻の有無は問いませんが、卵子は胚(受精卵)に比べ凍結のダメージを受けやすく、凍結卵子1個あたりの妊娠率は5〜10%にとどまります。
卵巣組織凍結は手術で片側卵巣摘出し凍結保存を行いますが、世界でもまだ出産例が少なく研究段階の治療とされています。
初経前の小児・原疾患の治療開始までに排卵誘発をする時間がない症例などが対象となりますが、摘出卵巣に腫瘍細胞の混在の可能性が高い血液疾患・卵巣がんは対象外となります。

その他

男性

診療前にかならず主治医からの紹介状をお願いしたいと思います。その際に患者さんの感染症の結果を同封いただければ幸いです。
本治療は全て保険外診療です。
初回凍結時20000円、1年ごとの更新で更新料は1年で10000円、その際に精液検査は約3000円です(精巣内精子回収術は別会計ですので御相談となります)。

女性

男性と同じく主治医からの紹介状をお願いいたします。
胚凍結・卵子凍結とも保険外診療です。
胚凍結は約40万円、卵子凍結は約30万円、凍結卵・胚の保管は1年毎の更新で更新料は1年で3万5千円+税となります。
なお、凍結胚または卵子を使用(融解の上、卵子凍結であれば顕微授精を施行します)する場合は主治医からの妊娠許可がでていることを文書でお知らせいただく必要があります。
また、凍結細胞の保存および使用は患者さんが50歳になるまでとさせていただきます。

2022年4月から生殖補助医療に保険が適用されることとなりましたが、妊孕性温存で凍結した卵子・胚を用いての、融解後の培養・胚移植は保険適用が認められておらず、自費診療となっております。
同様に妊孕性温存で凍結した精子を用いての体外受精・顕微授精に対しても保険適応がなく、一連の生殖補助医療がすべて自費診療となっています。

精子・卵子の採取、胚の作製から凍結までに関しては公的助成の制度があります。
詳しくはこちらをご覧ください。