vol.6 中国というフィールドからグローバルな問題を考えていきます 国際総合科学群 アジア地域論 教授 小野寺 淳(おのでら・じゅん) vol.6 中国というフィールドからグローバルな問題を考えていきます 国際総合科学群 アジア地域論 教授 小野寺 淳(おのでら・じゅん)

身近な問題からグローバルを感じる想像力を

フィールドワークの楽しさを実感してもらいたい

 私のゼミでも重視しているのがフィールドワークです。専門教養課程の授業としては、国内での地域調査実習と海外調査実習を隔年で担当・実施しています。2012年度の地域調査実習では鹿児島県に滞在し、学生たちは大型店の出店による商業構造の変化や、特産農産物の生産や流通のしくみといったテーマや、その他にも、地域の観光・交通・教育・福祉・まちづくりなどに関した研究を行いました。2013年度の海外調査実習では、上海市や四川省の成都市および世界遺産の九寨溝などでフィールドワークを行い、経済発展・地域格差・観光開発といった諸課題の現状を体感してきました。
 実習では、学生たちはまずどこを調査地とするのかをメンバーと相談しながら、自分の研究テーマを設定します。現地に行く前には先行研究を整理したり、フィールドとなる地域の情報を収集したりすることも大事です。理論的なことを机の上で理解した上で、実際に起こっていることを現地で了解するというふうにして、理論と実践の両方を総合して研究成果を出してもらいたいと思っています。
 現地へ実際に赴いてみると、最初に想定していた論点が的はずれだったことに気が付いて、慌ててしまう学生もいます。しかし、それは逆にチャンスでもあるのです。落ち着いて問題設定を組み替えてみれば、もっとおもしろい展開があるかもしれません。学生にはそのようなフィールドワークの醍醐味や楽しさを実感してもらいながら、自分の力で調べて考察していく力を身に付けてほしいのです。

“多チャンネル”な視点が、これからは大事

 国際都市学系グローバル協力コースという名前だからといって、グローバルなことだけを学んでいるわけではありません。ローカルな事象はグローバルな事象と連関しているのですから、物事がどのような関係でつながっているのかを論理的に説明できることが望まれます。それを研究の成果としてきちんと形にできる人は、将来には日本でも世界でも活躍できるでしょうね。
 ローカルからグローバルを意識することは、それほど難しいことではありません。必要なのは、新聞を読んだり一般常識を学んだりといった当たり前のこともありますが、身近な問題や事件が世界とも関連しているかもしれないという想像力を働かせることです。広く社会に対して積極的に関心を持ち続けていれば、柔軟な思考もできるようになると思います。
 中国との関係で言えば、目下のところ政治面での厳しい情況が心配されるところですが、日本のアニメや「カワイイ」の文化が受け入れられていたり、中国から観光客が来日してたくさん買い物をしたりするなど、経済・社会・文化の面には新たな展開のヒントがあります。私のやっているような地道な研究活動においても、中国の研究者たちと学術的な議論をしたり共同研究をしたりと、様々な接点があるわけです。いろんな接点から相手と関係を持つことができる「多チャンネル」な視点と態度が、これからの時代にはますます大切になっていくと考えています。

【My Favorite】
 趣味と言えるようなものは特にありませんが、やっぱり旅行に出かけることは好きですね。一緒に行く人がだれかによって、訪れた地域で目に見えるものが違ってくるのもおもしろいことです。学会の後に研究者同士で見学して回る巡検もあれば、感受性豊かな若い学生たちとの実習もあります。家族との旅行でのんびりしている時には、また別のものが見えてくるように思います。
 もっとも、とりわけ息子たちが夏休みの頃は、長期間にわたって海外へ調査に出かけるなど私ばかりが出張しているので、父親としてはよく遊んであげることができず肩身の狭い思いもしています。