【YCU RESEARCH 2020】 COVID-19関連研究
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【YCU RESEARCH 2020】COVID-19関連研究
新型コロナウイルスに関連する研究成果と発表論文
new! 2022.2.17
Usefulness of serial lung ultrasound for a severe COVID-19 patient on extracorporeal membrane oxygenation. (2021.3)
センター病院 高度救命救急センター 谷口 隼人 助教
救急医学 竹内 一郎 教授
COVID-19肺炎の進行度を評価する方法として,CT(Computed Tomography)が最も信頼できる.しかし,パンデミック時に,侵襲的に人工呼吸されている重症患者を放射線科施設に搬送することは,特に体外式膜酸素投与(ECMO)中の患者にとって困難である.肺超音波検査(LUS)は、医療現場での使用が容易であり、被ばくや感染のリスクを低減できること、再現性があること、放射線被ばくがないこと、低コストであることから、代替画像診断法として支持されていることは特筆される。我々は,ECMO管理下のCOVID-19患者において,肺の回復を評価する上で,経時的なLUSが他の画像診断法と比較して有用であることを実証したので報告する。
new! 2022.2.17
Serum cholinesterase associated with COVID-19 pneumonia severity and mortality. (2021.2)
救急医学 中嶋 賢人 医師 、竹内 一郎 教授
COVID-19肺炎患者26人について後ろ向きにデータを収集しました。入院時コリンエステラーゼは、軽症〜中等症群と比較し重症群において有意に低値であり、生存群に対して死亡群においても有意に低値でした。転帰良好であった重症患者では、コリンエステラーゼは炎症のピークに向かい低下し、炎症の改善に伴い上昇する傾向を認めました。一方で、転帰不良であった重症患者では、コリンエステラーゼの上昇は認めませんでした。入院時コリンエステラーゼおよびその経時的変化に注目することで、簡便に重症度ないし転帰不良を予測し早期に集中治療を含めた治療介入を検討する指標となりうる可能性が示唆されました。
new! 2022.2.17
Survey on the use of personal protective equipment and COVID-19 testing of pregnant women in Japan (2020.10)
本邦の産科診療における感染予防具の状況と妊婦への新型コロナウイルス検査に関する調査
産婦人科学 宮城 悦子 教授
本論文は日本産科婦人科学会のサポートを得て、北海道大学病院 産科 馬詰 武 助教(研究当時)との共同研究の成果によるものです。
COVID-1が日本で流行し始めた時期、産科診療時の感染予防具装着と妊婦に対するPCR検査の現状を明らかにするため2020年4月27日から1週間オンラインにて産婦人科修練施設と周産期基幹施設にアンケート調査を行った。N95マスクを含む完全な感染予防着で分娩対応をしている施設は、医師7.1%、助産師6.8%であった。一方標準予防策を超える装備をしている施設は、医師65.0%、助産師73.5%であった。無症状の妊婦へのPCR検査は、経腟分娩予定者の9%、選択的帝王切開予定者4%のみであった。
2021.1.11
The psychological effects of COVID-19 on hospital workers at the beginning of the outbreak with a large disease cluster on the Diamond Princess cruise ship
精神医学 井出 恵子 助教、浅見 剛 准教授、菱本 明豊 教授
クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号においてCOVID-19の大規模クラスターが発生し、日本国内での感染拡大が始まった2020年3月23日から2020年4月6日までの時期に、横浜市立大学附属2病院に従事する全職員に対してアンケート調査を行い、心理的疲弊などを評価した。4133名のうち2697名から有効回答を得た。536人(20.0%)が感染ハイリスクの職場に従事していた。全職員のうち944名(35.0%)は心理的疲弊を感じており、189名(7.0%)はプリンセス号に関連した心理的疲弊を感じていた。これらの心理的疲弊は「孤立感や被差別感」と関連していた。
2020.3.9 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者血清中に含まれる抗ウイルス抗体の検出に成功
微生物学 梁 明秀 教授
2020.4.20 新型コロナウイルス抗原を特異的に検出できる モノクローナル抗体の作製に成功〜国産初の抗原簡易検査キット開発を目指す〜
微生物学 梁 明秀 教授
2020.5.6 Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2
微生物学 梁 明秀 教授
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の診断検査は、その検査の性質についての明確な理解と所見の解釈が非常に重要です。RT-PCR法(核酸検査)とELISA法(抗体検査)の2種類の診断検査の解釈法と、その結果が経時的にどのように変化するかについて検討しています。
2020.7.28 新型コロナウイルスに対する中和抗体を簡便かつ迅速に測定できる新たな手法の開発に成功
微生物学 梁 明秀 教授
2020.12.2 新型コロナウイルスに対する4種類の抗体検出試薬の開発に成功
微生物学 梁 明秀 教授
2020.11.26 Potent antiviral effect of silver nanoparticles on SARS-CoV-2
微生物学 宮川 敬 講師 梁 明秀 教授
COVID-19のパンデミックは、効果的なウイルス対策が行われないため、拡大している。銀ナノ粒子(AgNP)は抗ウイルス特性を有することが知られており、SARS-CoV-2を阻害すると推定され、この抗ウイルス効果を検討した。異なるサイズと濃度の多量のAgNPを評価し、粒子の直径が10nm前後、1~10ppmの範囲の濃度では、SARS-CoV-2の阻害に有効である一方、20ppm以上の濃度では、細胞毒性効果が観察された。ルシフェラーゼ酵素ベースのシュードウイルス中和アッセイでは、AgNPがウイルスを破壊することで強力に阻害することを確認した。これらの結果から、AgNPはSARS-CoV-2に対する強力な殺菌剤であるが、細胞毒性作用や不適切な取扱いをした場合に生態系を乱す可能性があるため、注意して使用すべきであることが判明した。
2020.3.28 Veno‐venous extracorporeal membrane oxygenation for severe pneumonia: COVID‐19 case in Japan
救急医学 谷口 隼人 助教
A 72‐year‐old woman who was a passenger of a cruise ship tested positive for the severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS‐CoV‐2) while in quarantine on board using throat swab. Three days after admission, her condition deteriorated, and she was subsequently intubated. On day 6, VV‐ECMO was introduced. Lopinavir/ritonavir was given; continuous renal replacement therapy was also introduced. On day 10, her chest radiography and lung compliance improved. She was weaned off ECMO on day 12.
体外式膜型人工肺(Extracorporeal membrane oxygenation, ECMO, エクモ)は急性呼吸不全に対する治療法の一つで、新規コロナウイルス病(COVID‐19)患者におけるECMOの有効性について、実際の患者さんの症例をもとに検討しています。
2020.3.24 COVID‐19 first stage in Japan – how we treat ‘Diamond Princess Cruise Ship’ with 3700 passengers?
救急医学 竹内 一郎 教授
新規コロナウイルス感染症に対するPCR検査で陽性を示し、ダイアモンドプリンセス号から搬送された患者の症例について、今後の各地域の救急医療体制整備の参考となるよう、現状を報告しています。
2020.3.17 COVID‑19 pneumonia: infection control protocol inside computed tomography suites
救急医学 中嶋 賢人 助教、放射線診断学 宇都宮 大輔 教授、山城 恒雄 准教授
新規コロナウイルス感染症において、CT画像は肺炎の評価に有用であり、COVID-19の院内感染を予防するためには、CTスキャン内の感染制御も重要です。CTスキャン内部のCOVID-19の感染制御プロトコールに関する経験を紹介しています。
また、論文に寄せられたコメント・質問についても下記の3つのReplyで回答しています。
Utsunomiya D, Yamashiro T.
Reply to the Letter to the Editor:Protection of computed tomography suites from SARS-CoV-2 infection in a tertiary emergency hospital.
Jpn J Radiol. 2020;38(6):590. doi: 10.1007/s11604-020-00979-5.
(Comment:Jpn J Radiol. 2020 Jun;38(6):588-589. doi: 10.1007/s11604-020-00964-y.
Protection of CT suites from COVID‑19 infection in a tertiary emergency hospital)
Yamashiro T, Utsunomiya D.
Reply to the Letter to the Editor: Comment on "COVID-19 infection control protocol inside computed tomography suites".
Jpn J Radiol. 2020;38(7):695. doi: 10.1007/s11604-020-00985-7.
(Comment:Jpn J Radiol. 2020 Jul;38(7):693-694. doi: 10.1007/s11604-020-00975-9.
COVID-19 infection control protocol inside computed tomography suites)
Yamashiro T, Utsunomiya D.
Reply to the Letter to the Editor: infection control protocol inside computed tomography suites during coronavirus disease 2019 outbreak.
Jpn J Radiol. 2020;38(7):692. doi: 10.1007/s11604-020-00983-9.
(Comment:Jpn J Radiol. 2020 Jul;38(7):691. doi: 10.1007/s11604-020-00963-z.
Infection control protocol inside computed tomography suites during COVID-19 outbreak.)
2020.6.8 Environmental Maintenance with Effective and Useful Zoning for Severe COVID‐19 due to Protect to and from Patients and Medical Staffs
救急医学 小川 史洋 助教、竹内 一郎 教授、感染制御部 加藤 英明 講師
We repurposed a general ward into an acute care unit for severe COVID‐19 patients taking into consideration airflow, the direction of movement of medical staff, and prevention of the spread of infection to medical staff and other patients. We checked the daily condition and body temperature of all medical staff for 60 days.
There was no evidence of COVID‐19 infection in any medical staff or other patients during the period thanks to effective and useful zoning with PPE.
世界中の医療機関で、検査や治療の必要な患者が増加しています。医療スタッフや他の患者への感染拡大を防止するために、効果的で有用なゾーニングを設定することが不可欠であり、重症COVID‐19患者の急性期病棟内に、気流や医療スタッフの移動方向に配慮して総合診療室を設け、全医療スタッフの状態と体温を60日間確認しました。効果的かつ有効なゾーニングにより、医療従事者や他の患者へのCOVID‐19感染のエビデンスは認められませんでした。
2020.9.21 Therapeutic strategy for severe COVID-19 pneumonia from clinical experience
救急医学 小川 史洋 助教、竹内 一郎 教授、感染制御部 加藤 英明 講師
全世界で猛威をふるっている新型コロナウイルスに有効な治療は現在世界中で研究されていますが、治療ガイドラインなどの治療戦略は示されておらず、開発が急務です。
発生当初は情報不足のためSARSやMERSの治療に用いられた過去の治療法に基づいて治療戦略が策定されましたが、治療法の探索の中で、重症COVID-19患者の臨床所見から当院で統一した治療戦略を確立しました。
また、血液検査や身体所見から、COVID-19のいくつかの興味深い臨床的特徴を確認することができました。
当院における重症COVID-19肺炎の治療戦略について報告しています。
2020.6.14 Multisystem Inflammatory Syndrome in Children (MIS-C) with COVID-19: Insights from simultaneous familial Kawasaki Disease cases
附属病院 化学療法センター/医学部 呼吸器病学教室 堀田 信之 講師
最近、川崎病と重複するCOVID-19症候群を有する新型コロナウイルス感染症患者が増加していることが報告されており、感染が川崎病の誘因の一つと示唆されています。COVID‐19に関連する小児における川崎病と多系統炎症性症候群(MIS‐C)の両方の病因をさらに理解するために、同時家族性の川崎病症例の報告をまとめています。感染および遺伝的要因の観点からこれらの症候群の病因について考察します。
2020.7.31 Current national policies for infant universal bacille Calmette-Guerin vaccination were associated with lower mortality from coronavirus disease 2019
附属病院 化学療法センター/医学部 呼吸器病学教室 堀田 信之 講師
カルメットゲラン桿菌(BCG)ワクチン接種がコロナウイルス病2019(COVID-19)のパンデミックに有効であるかどうか、興味深い議論が浮上しています。COVID-19高負荷国ではBCGワクチン接種が推奨されているため、BCGワクチン接種を受けた人はウイルスに罹患しにくいと主張する人もいました。しかし、他の人々は、この一見魅力的な関係が交絡因子で説明可能であるため、反対しました。社会経済的および気候的共変量を調整している171カ国との重回帰では、現在の普遍的な小児BCG政策を実施している国は、政策を実施していない国と比較して、人口当たりのCOVID-19死亡率が30倍低下しました。
2020.5.13 Clinical course of 2019 novel coronavirus disease (COVID-19) in individuals present during the outbreak on the Diamond Princess cruise ship
感染制御部 加藤 英明 講師
ダイヤモンドプリンセス号から県内12病院に搬送された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者70例(年齢中央値: 67歳)を解析した。主な症状は発熱(64.3%)、咳嗽(54.3%)、全身倦怠感(24.3%)であり、43例(61.4%)に肺炎が認められた。肺炎像は97.7%が両側散布性の、すりガラス状陰影であった。血清LDH, AST,CRP高値、血清アルブミン低値、リンパ球数低値が肺炎の予測因子であることが判明した。重症度の評価は、多数の患者を管理するために重要である。
2020.8.21 Renin-angiotensin system inhibitors and the severity of coronavirus disease 2019 in Kanagawa, Japan: a retrospective cohort study
センター病院 心臓血管センター 松澤 泰志 講師、木村一雄教授、 循環器・腎臓・高血圧内科学 田村功一主任教授
動物実験では、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンギオテンシンII 1型受容体遮断薬(ARB)がアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)のダウンレギュレーションを抑制することが報告されており、COVID-19の病態の悪化を抑制する可能性があります。この研究は、ACEIとARBの先行使用がCOVID-19患者さんの臨床症状と予後に影響するかどうかを検討することを目的としました。結論として、高齢であることがCOVID-19の重症化に最も大きく寄与しており、ACEI/ARBは高血圧患者のCOVID-19肺炎による意識障害防止に有益であったことが判明しました。
2020.8.13 A Japanese case of COVID-19: An autopsy report
病態病理学 奥寺 康司 准教授
病態病理学教室では、横浜市民病院(病理診断科・林宏行部長、感染症内科・吉村幸宏医長ほか)と共同で、COVID-19の病理解剖の症例報告を行いました。病理解剖によってCOVID-19の病態解明に貢献します。
A 93-year-old woman was admitted with a 10-day history of cough and prostration. Thoracic computed tomography revealed extensive ground-glass opacities in both the lungs. The polymerase chain reaction test of sputum for severe acute respiratory syndrome-coronavirus-2 (SARS-CoV-2) was positive. She was treated with antiviral agents and steroid pulse therapy. However, her oxygen saturation gradually declined, and she died 10 days after hospitalization. The most important autopsy finding was fuzzily segmented diffuse alveolar damage (DAD) that expanded from the subpleural to the medial area. No remarkable changes were observed in organs other than the lungs. Therefore, pneumocytes were suggested as the primary target for SARS-CoV-2, which might explain why coronavirus infectious disease-19 is a serious condition. Thus, early treatment is essential to prevent viral replication from reaching a level that triggers DAD.「日本人COVID-19症例の剖検報告」
最も重要な病理所見は、時間的・空間的に断続的に拡大した瀰漫性肺胞傷害で、肺胞細胞が新型コロナウィルスの主要標的であることが解りました。ウイルスが肺胞傷害のトリガーを引く前の速やかな治療介入が必須であることを示唆しています。目下、国内からの剖検報告は、本件を含め2件のみです。海外の報告例に比較して、肺以外の臓器の変化が少ないようです。COVID-19に伴う症候の地理的差異の本質を解明する手掛かりとなるかもしれません。
2020.10 Rehabilitation Therapy for a COVID-19 Patient Who Received Mechanical Ventilation in Japan
リハビリテーション科学 佐伯 拓也(大学院博士課程・理学療法士)、中村 健 教授、救急医学 小川 史洋 助教、竹内 一郎 教授
症例は65歳の男性患者。8日間の発熱が改善せず、呼吸状態が急速に悪化したため当院に転院となり、転院当日に人工呼吸管理が開始された。入院6日後にPCRを用いてCOVID-19陽性の診断となり、同日にリハビリテーション治療を開始した。
初期のリハビリテーションプログラムは、ポジショニングと体位ドレナージに焦点を当てた。19日目に抜管し、同日より起立、足踏みを開始。歩行訓練は22日目に開始し、持久訓練は28日目に開始した。患者は身体機能のマイルストーンを満たしたため、34日目に当院を退院した。
退院1か月後、Medical Research Councilの合計スコアとBarthel Indexはそれぞれ改善し、筋力と日常生活活動は正常に戻りました。人工呼吸器を使用している急性期患者においては、鎮静終了後に可能な限り早期にモビライゼーションを実施すべきと考える。
2020.11.6 Increased anxiety and depression in patients with gynecologic cancers during the COVID‐19 pandemic : A retrospective study from Japan
附属市民総合医療センター 婦人科 最上 多恵 助教 榊原 秀也 病院長、医学部 産婦人科学 宮城 悦子 主任教授
COVID‐19の流行期にはおいて、婦人科系のがん患者は、特にがん治療中に心理的なストレスを受けやすい。心理的ストレスを防ぐためには、タイムリーな診断が必要である。
2021.2.6 SARS‐CoV‐2 prevalence in saliva and gastric and intestinal fluid in patients undergoing gastrointestinal endoscopy in COVID‐19 endemic areas: prospective cross‐sectional study in Japan
肝胆膵消化器病学 日暮 琢磨 講師
The study was a single‐center cross‐sectional study. From June 1 to July 31, 2020, all patients who underwent GIE at Yokohama City University Hospital were registered. All patients provided 3 ml of saliva. For upper GIE, 10 ml of gastric fluid was collected through the endoscope. For lower GIE, 10 ml of intestinal fluid was collected through the endoscope. The primary outcome was the positive rate of SARS‐CoV‐2 in saliva and gastrointestinal fluids. We also analyzed serum‐specific antibodies for SARS‐CoV‐2 and patients’ background information.
A total of 783 samples (560 upper GIE and 223 lower GIE samples) were analyzed. Polymerase chain reaction (PCR) on saliva samples did not show any positive results in either upper or lower GIE samples. However, 2.0% (16/783) of gastrointestinal fluid samples tested positive for SARS‐CoV‐2. No significant differences in age, sex, purpose of endoscopy, medication, or rate of antibody test positivity were found between PCR positive and PCR negative cases.
Asymptomatic patients, even those with no detectable virus in their saliva, had SARS‐CoV‐2 in their gastrointestinal tract. Endoscopy medical staff should be aware of infection when performing procedures. The study was registered as UMIN000040587.
消化器内視鏡検査は多くの疾患の早期発見と治療に役立つ検査ですが、COVID-19のパンデミック期においては、エアロゾルの発生などもありハイリスクな処置と考えられています。そこで内視鏡医療スタッフが曝露されうる唾液および胃液、腸液におけるコロナウイルス(SARS-CoV-2)の陽性率を調査するため、2020年6月1日から7月31まで、横浜市立大学附属病院で内視鏡検査を受けた全患者の唾液、胃液、腸液を採取して調査しました。その結果、唾液検体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、上部、下部内視鏡検査どちらも陰性でしたが、消化管液検体の2.0%(16/783)がSARS-CoV-2陽性でした。無症候で唾液中にウイルスが検出されない患者でも、消化管に一定割合SARS-CoV-2が認められることがわかり、COVID-19流行期においては、内視鏡医療スタッフは検査を行う際には取り扱いに注意すべきです。
一般の方も、トイレ使用時は、腸液(便)などにウイルスが暴露している可能性がありますので、環境清掃や手指衛生を心がけることが望ましいと考えます。
2020.10.29 A real-time survey on the psychological impact of mild lockdown for COVID-19 in the Japanese population
医学群 健康社会医学ユニット 菅谷 渚 助教
本論文は徳島大学の山本 哲也 准教授と内海 千種 准教授(責任著者)、同大学4年の鈴木菜穂さんとの共同研究の成果によるものである。
世界各国で、COVID-19の感染拡大を阻止するためにロックダウンが行われている。2020年4月7日、日本政府は緊急事態宣言を発したが、これは「マイルド(軽度)ロックダウン」であり懲罰もなかった。この「マイルドロックダウン」に対する心理的影響に関するオンライン調査を実施し、宣言が最初に適用された7都道府県に居住する住民11,333名(女性52.4%、46.3±14.6歳)のデータを収集した。調査日は2020年5月11日および12日であり、緊急事態宣言期間の最終段階にあった。質問票には、世界中で多く使用されている心理尺度に加えて、COVID-19に関連する生活習慣やストレス対処に関する項目、職業(医療従事者など)や収入など、様々な人口統計学的項目が含まれる。
AMEDに採択された研究課題
2020.5.21 新型コロナウイルス抗体検出を目的としたハイスループットな全自動免疫測定方法の開発及び同測定方法の社会実装に向けた研究
臨床統計学 山中 竹春 主任教授
2020.5.28 COVID-19患者層別化による医療資源の最適分配とアウトカム向上
救急医学 竹内 一郎 教授
これらの取り組みが認められ、日本医療研究開発機構(AMED)「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」に研究拠点として課題が採択されました。
今後同分子病理学 藤井誠志 教授らと協力し、病理学的解析を加えてさらに詳細な”層別化”を行います。また同先端医科学研究センタープロテオーム解析センター梁 明秀 教授(同微生物学教授)、木村弥生 准教授らと協力し患者血液中のタンパク質を網羅的に解析することで、今まで行ってきた”層別化”をより簡単な血液検査で行えるバイオマーカーの探索を行います。これにより医療資源を適切に分配することで、第二波による医療崩壊を未然に防ぐことを目指します。
2021.1.29 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発のための実用的な予後予測・治療スコアの開発と社会実装
救急医学 竹内 一郎 教授
臨床情報、予後予測のバイオマーカーを組み込んだ、予後予測・治療スコアリングシステムの開発、スコアリングシステムを用いた、実用的かつ”目に見える”定量的アプリケーションの開発と有用性の検証を行い、予後予測・治療スコアを組み込んだアプリケーションシステムの社会実装を早急に進めることを目指します。
2020.7.28 遠隔画像診断・非曝露撮影機能を実装するCT検診車を用いた院外療養中の感染者における新型コロナウイルス肺炎の早期診断の有用性に関する実証研究
放射線診断学 山城 恒雄 准教授
本事業では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の代表的な疾患である、新型コロナウイルス肺炎への包括的な対策において、CT搭載車(CT検診車)を活用することを目的としています。
今後は、感染対策装備や遠隔画像診断装置の実装など、車両の最終的な整備を行い、運用を開始する予定です。
2020.7.28 『新しい生活様式』の具現化に向けたコミュニケーション・デザイン調査研究
コミュニケーション・デザイン・センター 西井 正造 助教
SARS-CoV-2感染流行のような世界的危機を克服するためには、国民の行動変容を促すための効果的なコミュニケーション戦略が重要です。
今回、日本医療研究開発機構(AMED)「令和2年度感染症研究開発ELSIプログラム」に研究拠点として、先端医科学研究センターコミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)西井正造助教の課題が採択されました。
新規医療情報発信インターフェイスであるStreet Medical School(SMS)を核として、社会人・若年層等を主体とした情報発信体制を構築し、グラフィックやウェブ等のデザイン手法を駆使した新興・再興感染症流行時の効果的かつ良質な情報伝達手法の提案を行うことで、それが人々にどのように受け止められるかについて検証します。
本調査により、ポストコロナ期に国民から求められる確かな医療情報の量と質の要件が明らかとなるとともに「新しい生活様式」の定着に資する正しい情報に基づきデザインされた情報が制作されることで、新興・再興感染症流行時の効果的かつ良質な情報伝達手法の確立、ひいては啓発の達成が期待できます。