医療事故の公表について
平成13年2月16日
横浜市立大学病院改革委員会
横浜市立大学医学部附属病院は,平成11年1月の患者取り違え事故をはじめ,薬剤ラベル貼り付けミスなど,これまでに引き起こした医療事故の反省の上に立って,病院を挙げて医療安全管理の徹底に努めてまいりました。
医療の安全管理を進め,患者さんの安全を確保するとともに,医療事故の発生などの情報を公表することによって,病院運営の透明性を高めることが,医療の信頼を回復するために重要であります。
そこで,横浜市立大学では,医学部附属病院及び同市民総合医療センター(以下「附属2病院」といいます。)がどのような場合に医療事故の情報を公表するかを検討するため,平成12年8月7日に市立大学病院改革委員会のもとに医療事故公表基準作成特別委員会を設置しました。
同特別委員会は,これまでに6回の審議のほか,市民,市会議員,医療関係者,法律専門家,評論家など多くの有識者・専門家の方々からのご意見を伺いながら検討を進め,附属2病院における医療事故の公表についての考え方をとりまとめました。
1 医療事故の公表の意義
医療事故を公表することには,次のような意義があるものと考えます。
(1) 平成11年1月に起こした患者取り違え事故を契機に,医療事故が大きな社会問題となっているが,当事者として,医療における安全管理を徹底していくために自発的に医療事故を公表していく責務がある。
(2) 医療事故を公表し適切な対応をとることは,附属2病院の社会的な責任であるとともに,病院運営の透明性を高めることにより,市民からの信頼回復が図られる。
(3) 医療事故を公表することは,他の病院の医療安全管理にとっても重要な情報提供になる。
2 用語の定義
本報告において使用する用語の定義は,次のとおりです。
(1) 医療事故
患者さんが本来持っていた疾病や体質などの基礎的条件によるものではなく,医療においてその目的に反して生じた有害な事象をさす。医療事故には,医療内容に問題があって起きたもの(過失による医療事故)と医療内容に問題がないにもかかわらず起きたもの(過失のない医療事故)とがある。
(2) インシデント事例
医療従事者が医療を行ううえで,“ヒヤリ”としたり,“ハッ”とした経験を有する事例で,医療事故には至らなかった場合をさす。
3 医療事故の公表基準
附属2病院は,今後,次のいずれかに該当する医療事故が発生した場合は,患者さんとご家族の同意のもとに,これを速やかに公表します。公表にあたっては,原則として,4の「医療事故判定委員会(仮称)」の意見を聞くものとします。
(1) 過失による医療事故で,それが死因となった場合,もしくは「生命の危険等,深刻な病状悪化をもたらす」,「治療しても治癒しない」,「治癒するがかなりの負担を強いる」など,患者さんに相当の有害な結果を生じた場合。
(2) 過失による医療事故で,有害な事象の程度が軽微であっても,病院の医療安全管理上重大であると判断される場合。
(3) 患者さんに相当の有害な結果を生じた医療事故で,過失によることが明らかでなくても,公表すべきと判断される場合。
また,上記以外の過失による医療事故は,包括的な形で一括して公表します。
なお,インシデント事例は原則として公表しません。
4 医療事故の公表の判断・判定について
医療事故の公表の判断・判定に関して,病院長の諮問機関として,外部の有識者,他の医療機関等の医師,横浜市立大学教職員などにより構成する「医療事故判定委員会(仮称)」を設置します。
当委員会は,病院長の諮問により,以下の項目を審議します。
(1) 速やかに公表すべき医療事故であるか否か,について。
(2) 医療事故に関して患者さんとご家族に対する説明が十分になされたか,また公表に関する同意が得られたかの状況の確認,及び公表の範囲について。
(3) 患者さんのプライバシー・人権への配慮と,社会に対する説明責任との比較考量について。
(4) その他,医療事故公表基準の運用に当って重要な事項について。
病院長は,審議結果を受け,公表について意思決定します。ただし,速やかに公表すべきと判断される場合で,委員会を開催するいとまがない場合は,事後に報告するものとします。
資 料 |
検討の組織及び審議経過
1 横浜市立大学病院改革委員会 医療事故公表基準作成特別委員会
氏 名 |
役 職 名 等
|
備 考
|
南 陸彦
|
医学部長 |
委員長
|
梅村 敏
|
医学部附属病院副病院長・統括安全管理者 | |
大場 浪男
|
事務局長 | |
金子 文夫
|
国際文化学部長 | |
小島 謙一
|
理学部長 | |
近藤 治郎
|
医学部附属市民総合医療センター病院長 |
平成12年12月から
|
千賀 重義
|
商学部長 | |
沼尻 光恵
|
医学部附属市民総合医療センター看護部長 | |
橋本 迪生
|
医学部附属病院医療安全管理学教授 | |
松原 升
|
医学部附属病院長 | |
山本 勇夫
|
前・医学部附属市民総合医療センター病院長 |
平成12年11月まで
|
2 審議経過
委員会
|
年 月 日
|
主な審議内容
|
第1回
|
平成12年8月7日(月) | 1 国の動向等についての検討 2 検討スケジュール等について |
第2回
|
8月21日(月) | 1 医療事故と公表の意義について 2 外部意見の聴取について |
第3回
|
9月 8日(金) | 1 医療事故の範囲について 2 現在までの国の動向等について |
第4回
|
10月 3日(火) | 1 医療事故と公表について 2 外部意見についての中間報告 |
第5回
|
12月22日(金) | 1 外部意見の聴取結果について 2 医療事故の公表の考え方について |
第6回
|
平成13年2月8日(木) | 1 医療事故の公表(報告案)について |
3 医療事故の公表についてご意見をいただいた外部の有識者・専門家の方々
(順不同)
所 属 ・ 役 職 ・ 人 数 等
|
附属病院ボランティアグル−プ(4名) |
市政モニター(2名) |
横浜市老人クラブ連合会(2名) |
横浜市消費者団体連合会(2名) |
ささえあい医療人権センター(コムル)(2名) |
報道関係者(新聞社論説委員)(1名) |
医事評論家(1名) |
法律専門家(弁護士)(1名) |
法律専門家(本学商学部教授)(1名) |
民間病院(医療安全管理の先進的な病院)の病院長(1名) |
県内大学の医学部長(1名) |
日本医師会(1名) |
横浜市医師会(6名) |
日本看護協会(1名) |
横浜市会大学教育委員会委員(11名) |
PDF版 |
「医療事故の公表について」をPDFにて印刷される場合はこちらをご利用ください。
医療事故の公表について | (計2枚)こちらをクリックしてください |
資 料
|
(計2枚)こちらをクリックしてください |