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がんゲノム検査のご案内

~病気の原因から効果的な治療薬を探索する~

はじめに

横浜市立大学附属病院では2016年11月1日より、がんゲノム検査を導入しております。2018年4月からは、がんゲノム診断科を新規設立し、専属医師を配置し運営しております。がんゲノム医療の最新情報を、迅速かつ的確に患者様に提供出来るよう、病院としても引き続き取り組んでまいります。

がんゲノム検査に関するお問い合わせ

がんゲノム検査に関する診療、セカンドオピニオンをご希望の場合は、病院の代表電話番号(45-787-280)にお電話にてお問い合わせください。(『がんゲノム検査の外来を希望』とお伝えください。)
*他院でがんゲノム検査を受けていない場合は、原則保険内での診療が可能です。
他院でがんゲノム検査を受けている場合は、原則セカンドオピニオン扱いとなります。

医療機関からの問い合わせに限り、e-mailでの連絡を受け付けています。
医療機関専用e-mailアドレス
✉oncogene★yokohama-cu.ac.jp(★を@へ変えてください)

保険検査の開始について

2020年2月より、当院での保険適用のがんゲノム検査を開始しました。保険適用の検査が受けられる患者さんには、原則として保険適用の検査をお勧めしています。一方で、保険適用の検査には、その適用に関して一定の制限があります。このため、当院では以前より行っている自費検査も引き続き行っています。適用の問題で保険の検査が受けられない患者さんでも、自費の検査であれば受けることができます。患者さんにとって最適な検査を一緒に考えさせていただきます。

適用

保険検査の場合、『標準治療を受け終わった後』という制約が付きます。
自費検査の場合は、そのような制約はありませんが、健康保険制度でカバーされません。

検査を受ける時期について

本検査は、外科手術で摘出された検体を用いて行います。手術後、2年間はまず問題なく結果が得られます。3年を過ぎると検査結果が得られない症例が出てきます。5年を超えると検査結果を得ることは困難です。このため、本検査を受ける場合には、術後できるだけ早く受けることをお勧めします。前述の通り、得られた結果をどう使うかは別問題ですので、検査結果を手元に持っておいて、今後に備える、という使い方もできます。

手術を受けていない症例への対応

本検査は、基本的に外科手術によって摘出された検体を用います。針生検のような小さな検体では検査を行うことができません。このため、外科手術を受けていない患者さんは、基本的に対象外となります。しかし、手術を受けていない患者さんの中にも、本検査を希望される方は多く、当院ではできる限り検査を受けられるように対応しております。実際に、手術を受けていない患者さんの針生検の検体に特殊な処理を行うことで、検査結果が得られた、という症例を経験しています。全ての患者さんに同じことができるわけではありませんが、手術を受けていなくても、特定の条件を満たせば、検査が受けられる可能性があります。まずはお問い合わせください。

費用

保険検査は、検査のみで56万円(自己負担3割の場合:約17万円、自己負担1割の場合:約6万円)、自費検査の場合は約65万円が請求されます。

*この金額は変更されることもありますので、最新の費用を外来時にご確認ください。

期間

保険検査、自費検査共に、検体提出から検査結果が得られるまで約2ヶ月かかります。

検査結果から分かること

検査結果は、遺伝子変異に直接対応した薬剤がないかを判定します。その他、遺伝子変異が患者さんのがん種において、抗がん剤の感受性に関与すると報告されているものがないかを判定します。また、免疫チェックポイント阻害薬という新しい抗がん剤は、その効果予測因子が特別ですので、これに関しても判定します。
また、何も新しい治療の選択肢が見つからなかった場合は、逆に言えば現時点ではガイドライン治療が最良の選択肢であるという強力な根拠になります。特に、前述した『疾患自体は稀ではないが、その疾患の集団の中では稀な患者』に対し、ガイドライン治療を行うことの根拠にもなると考えられます。

必要な検体

必要な検体は、検査の種類によって異なります。検査の種類が決まった後、こちらで準備させて頂きます。

理解が難しい『がんゲノム医療』

2017年春頃より、様々なメディアで『がんゲノム医療』という言葉が使われてきました。しかしこの言葉は、『がんのゲノム情報を使って行う医療行為・医療開発』という広い意味を持つため、理解が難しい言葉となってしまっています。その広い意味の中で、現状患者さんにとっての『がんゲノム医療』とは、『新しい検査を受けて、自分のがんに効果が期待できる薬がないかを探すこと』です。

自分に残された可能性を知る検査

がんゲノム検査では、がんの遺伝子情報を読み取り、がん細胞の性質をより詳細に解析します。その結果から、新たな治療の選択肢がないかを検索します。この薬剤を検索する段階では、以下の3点を考慮しません。
①該当薬剤が日本にあるかどうか。
②該当薬剤が日本で保険適用かどうか。
③該当薬剤の副作用が患者様にとって許容できると考えられるか。
つまり、治療費や副作用など、現実的に治療を行う際に問題となることは一度考えずに、まずは他の選択肢があるのかないのかを検索します。このため、薬剤が見つかったとしても、実際に治療を行うかに関しては慎重に判断しなければなりません。

薬剤検索の根拠となる情報

薬剤を探す際に、対応薬剤の根拠として用いる情報が、がん細胞の遺伝子の情報です。がんとは、正常細胞の設計図である遺伝子に異常が起きて、生じる疾患です。このがんという疾患の根底にある異常を詳細に解析することで、『詳細で正確な診断』を行うことが、がんゲノム医療の第一歩となります。その診断を元に、異常な設計図から出来上がった異常な目印を標的とした薬剤が存在しないか、報告されている全ての薬剤を検索にかけます。

がんゲノム医療は本当に効果があるのか?

がんゲノム医療において患者さんにとっての最も重要な疑問は、『がんのゲノム情報を基に選んだ薬剤は本当に効果があるのか?』という点です。この点に関しては、『現在調べている段階である』という解答が最も正しいと考えます。がんゲノム医療は、理論上は正しいと考えられますが、特に『がん種を問わずに効果があるのか』という点に関して、まだ正確な答えが得られていません。現在行われている多くの試験の結果を待つことが必要になります。このため、現状では標準治療を超えてお勧めするものではありません。この点に関しては、特に十分な理解が必要です。

SHIVA試験から学ぶこと

2012年から2014年にかけて、フランスでSHIVA試験と呼ばれる大規模な臨床試験が行われました※1。SHIVA試験は、がん種を問わずに、がんの分子生物学的な解析(ゲノム情報も含みます)に基づく分子標的治療と標準治療を比較した初めての臨床試験です。しかし残念ながら、結果は『有意差無し』でした。この結果から、がんゲノム医療に関して多くの議論が展開されましたが、最も注目された点の一つが、『薬剤選択の根拠の強さ』でした。
SHIVA試験では、少なくとも他のがん種では標準治療として用いられている薬剤から、まだ標準治療としてはどのがん種でも使用されていない薬剤まで、幅広い薬剤が使用されました。この点から、『薬剤選択の根拠の強さ』が統一されておらず、この『根拠の強さ』を重要視する意見が出てきました。

※1 Lancet Oncol, 2015. 16(13): p.1324-34.

米国におけるがんゲノム医療

米国では、2015年1月20日にアメリカのオバマ大統領が一般教書演説で、プレジション・メディシン(Precision Medicine)という医療・医学研究推進の政策を発表しました。プレジション・メディシンは、日本語では、『精密医療』と訳されることが多い言葉です。がんゲノム医療のように、より精密な診断を行うことで、研究を進めていく方針です。この発表後、多額の研究費ががんゲノム医療に投下され、研究が加速しています。現在では、多くの研究機関、ベンチャー企業が、がんゲノム検査を提供しています。
このような状況のため、米国ではがんゲノム情報を基にした治療が一部医療機関で既に行われています。2018年には、米国ユタ州の州都ソルトレイクシティにある施設から、がんゲノム情報を基にした治療を行った患者22例の解析で実際に予後が改善したとの報告も出ています※2。この報告は症例数も少なく、この一報だけでがんゲノム医療の有用性を結論付けることはできませんが、理論上正しいと考えられるがんゲノム医療の有用性を示した、非常に勇気づけられる結果です。   

※2 Oncotarget, 2018. 9(15): p. 12316-12322.

日本におけるがんゲノム医療

日本でも、2019年より保険適用のがんゲノム検査が開始となりました。横浜市立大学附属病院では、この保険適用検査の開始に先駆けて、2016年11月より自費診療としてMSK-IMPACTと呼ばれるがんゲノム検査を導入しました。 MSK-IMPACTは、米国ニューヨークのメモリアルスロンケタリングがんセンターで開発された、がんゲノム検査です。

がんゲノム検査、MSK-IMPACT

横浜市立大学附属病院で提供しているがんクリニカルシークエンス検査は、2020年5月の段階ではMSK-IMPACTのみです。今後、提供できる検査は増えていく可能性があります。ここでは、MSK-IMPACTの特徴をまとめます。

初めてのFDA承認がんゲノム検査

米国食品医薬品局(FDA)は、2017年11月15日にMSK-IMPACTを腫瘍の遺伝子変化を解析する検査として初めて承認しました。MSK-IMPACTの質を保証するものです(参考ページはこちら)。

世界最大規模の解析遺伝子数

がんゲノム検査には、解析遺伝子数を絞り、費用を安くしたものと、解析遺伝子数を出来る限り多くとったものがあります。MSK-IMPACTは世界最大規模の解析遺伝子数を誇ります。経営母体がNPO法人であることから、値段も安く設定してあります。

融合遺伝子を検出可能

解析遺伝子数を絞っている検査の中には、融合遺伝子と呼ばれる遺伝子の変化を検査対象としないものもあります。分子標的薬の中には融合遺伝子を対象としたものもあることから、MSK-IMPACTは融合遺伝子も検査対象に含みます。

免疫チェックポイント阻害剤に対する効果予測因子を解析可能

免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる薬剤には、よく知られている効果予測因子が2種類あります。MSK-IMPACTでは、その2つとも解析可能です。

独自のデータベースを持ち、薬剤に対する『推奨の強さ』を提示可能

前述したように、がんゲノム医療において、『薬剤選択の根拠の強さ』は非常に大切な要素です。MSK-IMPACTでは、独自のデータベースから、下の4段階に『薬剤選択の根拠の強さ』を分類しています。これをエビデンスレベルと呼びます。

既に2万人の患者が同じ検査を受けている

MSK-IMPACTは、既に2万人以上の解析を行っています。これらの結果は、独自のデータベースに登録され、最初の1万人に関してはデータが公開されています。このデータは、臨床検査として行われたもののため、これまでの研究目的に行われてきたデータベースにはほとんど見られない、希少がんが多く含まれていることが大きな特徴です。横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科では、これらのデータと比較して、最終レポートを作成しています。

がんゲノム検査の課題と限界

がんゲノム検査は、保険診療であっても高額な検査です。更に、検査によって効果があると考えられる薬剤が見つかった場合でも、多くの場合、保険診療内で使用することができません。この費用の問題が今後の課題と言えます。
また、がんゲノム検査により新しい薬剤が見つかる可能性は10%と言われており、この点が現時点での限界と言えます。この10%の可能性を高いと見るか、低いと見るかという点で、患者さん自身の考え方が重要になります。例えば、10%であれば多くの場合がっかりするだけなので検査を受けない、という考え方もあります。逆に、10%でも上乗せできるのであれば検査を受けたい、と考える方もいます。これらは個人の考え方の違いなので、患者さん自身に説明した上で、検査の同意を得ています。

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