専門外来紹介
附属病院「アスベスト外来」
アスベスト吸入による肺疾患の恐れがある方を対象にした、アスベスト専門外来を開設しています。 アスベストによる健康被害は、そのほとんどがアスベストを吸入してしまう環境の職業に従事していた人に生じるものです。長い年月が経過してから胸部レントゲン写真でアスベストによると考えられる肺の病変が指摘される場合があります。大部分は良性の病態ですが、肺癌、胸膜中皮腫といった悪性の変化をきたしてくることもあります。 アスベストを以前吸入していたことがあり、胸部レントゲン写真等の定期的な検査をされていない方、あるいはアスベストに関連した肺病変を既に指摘されたことがあり、その後の経過観察が中断している方など、アスベスト吸入による肺疾患の恐れがある方を対象にした「アスベスト専門外来」を開設しました。 診療は、呼吸器内科の専門医が担当します。
アスベスト外来の現状(平成17年9月~18年9月)
平成17年9月から開設した、横浜市立大学附属病院「アスベスト外来」は完全予約制で、アスベスト吸入に伴う健康被害・疾病の解説、診断・治療法、健康被害救済制度の説明などを行っています。平成18年9月までに60名の方が受診されています。 開設当初は、予約が殺到しましたが、最近は落ち着きつつあります。 受診者(60名)の、約3割(18名)の方にアスベスト吸入による胸膜肥厚を認めました。1名の方に肺癌の合併が認められましたが、幸い、悪性胸膜中皮腫を発症している方は現在まで認めていません。 アスベストによる悪性中皮腫や肺癌は、吸入後30~40年以上経過してから発症するため今回、異常を認めなかった方や良性の胸膜肥厚斑であった方も今後、6ヶ月毎に胸部X線検査(場合によってはCT検査)を行い、悪性中皮腫・肺癌の早期発見に努める予定です。
石綿新法2006年2月成立、3月施行
アスベストによる健康被害があっても、これまで労災補償の対象にならなかった患者さんを救済する「石綿被害者救済法」が2006年に成立・施行されました。アスベストによる健康被害のうち中皮腫および肺がんが補償の対象疾患になります。
中皮腫は原則すべてが補償の対象になるとのことですが、肺がんの場合は、アスベストとの関係が明らかなものに限られるため、アスベストの吸入で生じる胸膜肥厚(胸膜プラーク)や肺の線維化を確認する必要があります(胸膜肥厚については下記を参照ください)。
これには、胸部CTが最も有効であり、胸部レントゲン写真では見つからない程度の胸膜肥厚の発見が可能です。
当院のアスベスト外来では、アスベストによる健康被害の早期発見のため、希望により胸部CT検査を行っております。
コラム「胸膜肥厚とは
胸膜とは、肺の周りを包む膜で、これは肺の入り口で折り返って、肺の入っている胸郭の内面も覆っています。これらが厚くなったものが胸膜肥厚です。
石綿の吸入後、長い年月を経て胸膜肥厚が生じることが知られています。しかし、片方の肺の周りの胸膜が部分的に肥厚している場合などは、結核が治った痕(あと)のこともあります。一方、胸郭の内面の胸膜だけが斑状に肥厚したものは胸膜肥厚斑(プラーク)と呼ばれ、両側性で、しばしば石灰沈着を伴います。これは、石綿吸入による特徴的な変化です。
胸膜肥厚は通常、良性の変化であり、軽度であれば自覚症状もないことがほとんどで、経過は良好です。ただし、広範囲で生じると肺の動きが制限され、活動時に呼吸困難が出ることがあります。
現在、石綿による胸膜肥厚のみを指摘されている場合でも、今後、肺の線維化や、胸膜中皮腫(胸膜の悪性腫瘍)、肺がんを合併する可能性がありますので、定期的な胸部エックス線検査や、必要に応じてCT検査を受けることが重要です。
石綿吸入を原因とする肺の悪性の病気を防ぐ薬は、今のところありませんが、喫煙は肺がんの発症の危険をさらに増加させ、肺の機能を低下させるので、禁煙が何より大切になります。
石綿を扱う職業歴があり、両側の胸膜肥厚などの所見がある場合は、健康管理手帳が交付され、年2回の無料健康診断が受けられます。すでに診断を受けているかたは、最寄りの都道府県労働局か、労働基準監督署にご相談されるとよいでしょう。
※上記の記事は、読売新聞「医療相談室」(2006年1月29日掲載)に寄せられた質問に対し、当病院・呼吸器内科 金子 猛 前部長が回答したもの(一部加筆済)です。
受診対象となる方
診療日
毎週火曜日午後完全予約制で実施。
5人程度の診察を行う予定です。
予約は横浜市立大学附属病院「患者サポートセンター」にお電話ください。
診療費用
健康保険が適用されます。
なお、紹介状のない場合には、初診にかかる費用として5,500円(消費税込み)を別途ご負担いただきます。
受診申し込み/問い合わせ先
受付時間:土日祝祭日を除く平日 午前9時から午後5時まで 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 横浜市立大学附属病院 患者サポートセンター TEL 045-787-2800(代)FAX 045-787-2866 ※メールでのお問い合わせは受付けておりません。