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観光地理学を専門とし、旅行や観光を通じた地域振興に関する研究をしている有馬貴之准教授。大学のゼミの学生と共に、各地域や企業と共同して、観光マーケティングの視点に基づくデータ分析と施策提案などを行っています。有馬准教授に、研究の面白さや学生への期待などを伺いました。


地域の魅力を探求し、
未来を彩る
観光地理学のすすめ


現在の研究テーマについて教えてください。

観光という現象を地理学の視点から分析し捉えようとする学問、観光地理学の分野で研究しています。
たとえば、調査の一つとして空間分析、つまりGIS(地理情報システム:空間にまつわるさまざまな情報を一つの地図上に表示するシステム)を用いた人の流れの解析があります。どこにいた人が、どんな動機を持って、どんな手段で、どこに移動しているのか、そこで何をするのか、といった情報は、地域の魅力を客観的に理解し、かつ観光地や地域、商業施設など、あらゆる空間の活用のためのヒントになります。
活用といっても、来場者数が多ければ多いほど良いというわけではありません。オーバーツーリズムといって観光客が増えすぎることで地域住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼし、問題になった観光地も多くあります。いずれにせよ、観光客の行動を分析し、理解することができると、それはさまざまなことに応用できるのです。


研究者を志した理由やきっかけなど教えてください。

大学時代、1年間休学してワーキングホリデーでオーストラリアに行った際に、初めて観光に興味を持ちました。それぞれの観光地が魅力的なことはもちろん、外国人でもスムーズに移動できるよう、交通や案内が整備されていたことに大いに感動しました。
一方で、当時の日本には外国人観光客がほとんどいませんでした。日本の地域にも魅力的なところはたくさんあるのにもったいないと思い、どうしたらより多くの旅行者が来てくれるのか、どのような施設やガイドがあったら旅行者にとって便利なのか、といったことを深く考えるようになりました。さらに、日本に帰ってきてから大学で観光に関する研究について調べたことで、観光客の行動という側面に興味を持ちました。
観光は人を笑顔にできるものであると考えています。研究者であっても、それが人の笑顔につながるということ、自分も笑顔になれる、楽しめると思えたことも、研究職に進むことの後押しになりました。


現在の研究テーマに取り組もうと思ったきっかけのようなものがあれば教えてください。

現在は、人流データで把握できる観光客の行動と人流データからではわからない要素の関係を解明することに取り組んでいます。たとえば、「移動ルートや滞在時間といった行動の把握によって、地域での消費額を説明できるのか」というのが一つの研究例です。 また、最近は天候と行動、そして消費額の関係も気になっています。SNSと行動も気になりますね。
これらの研究に取り組もうと思ったきっかけは複数ありますが、一つは自治体からの要望や、企業と共同して研究をするときに、その成果がそれぞれの施策や事業に貢献できると感じたからです。それは先に述べた、観光客のより良い滞在、楽しい滞在につながり、笑顔を作れるものだと思っていることにもつながります。


研究の面白さや醍醐味などについて教えてください。

基本的に子どもの頃から国や街の地図を見るのが好きだったので、今では観光地の地図を見て、その上に実際の観光客の人流データを可視化する作業自体にワクワクを感じています。そして、そんな自分勝手なワクワクから得られた知見が、いつの間にか人の役に立っている、これも自分が研究を面白いと思っていられる理由かも知れません。
また、新しい取り組みをしている企業や行政などの方々と話をさせていただいたり、学内だけに収まらず、自由に移動し、考え、知見を得られたりすることも、観光地理学の醍醐味だと思います。地理学や観光学は自分の身の回り全てに研究の題材やヒントが落ちているのも好きなところです。



学生たちが研究を進めていくうえで、心がけてほしいことなどについて教えてください。

さまざまなことに興味を持ちながら、これだと思ったことを決めて、自分自身でどんどん「行動」してほしいと思います。たとえば、「先生、何をすればいいですか?」ではなく、「自分はこれをやっていて、こういうことに悩んでいるのですが、どう思いますか?」と質問してくれる人には、より積極的に答えたいという気持ちを起こさせてくれます。それは研究に限らず、多くのことで当てはまる姿勢だと思います。自ら積極的に、そして真摯に誠実に取り組んでいれば、必ず道は開けます。もちろん、楽しいことばかりではありませんが、教員含め周りの人々は、自ら考えて行動している人を評価します。そうすると、共に進もうと歩み寄ってくれたり、「これをやってみたら」と思わぬ機会をくれたりしますよね。


研究者にとって一番必要な素養(能力)は何でしょうか。

何に対しても「なぜ?」と思えることですかね。そして、その「なぜ」を理解するために、論文や本を読んだり、じーっとパソコンの前で分析を続けたりする力も必要だと思います。
一方で、人と話したり、相手の意図を汲んで考えたりするような一般的なコミュニケーション能力も大切だと思います。


研究を続けるうえで、大切にしていることは何でしょうか。

「この研究、何の役に立つのかな?」ということを無理矢理に考えないことを心がけています。それよりも、「これは学問分野(地理学や観光学)として新しい発見かな?」を考えています。社会的意義は時代によって変わってしまうので、その発見が学問の進歩に寄与するのか、なんてことを考えています。
あとはやっぱり、楽しく考えることですね。楽しくやっていないと、発見も楽しくありませんので。なので、新しいものには極力興味を持つようにもしています。


YCU受験生へのメッセージをお願いします。

横浜市立大学も、他大学と同様に、多様な学生や教員のカラーがあると思います。私の専門とする観光地理学の分野も、言語や歴史、文化などを理解する国際教養、マーケティングや経済学などの商学、データ分析やデータサイエンス、資源の科学的理解を行う理学、そして観光の医学的な理解など、どの学問分野ともつながっています。そのため、さまざまなことに積極的に興味を持ってくれる学生に来てもらえると嬉しいです。


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(2025/03/07)

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