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HOME > 広報誌whistle > 広報誌whistle vol.19 (2013.1) > iPS細胞って、何ですか?(1)

iPS細胞って、何ですか?(1)

iPS細胞(人工多能性幹細胞)

京都大学山中教授が作製に成功した、皮膚細胞に特定の4つの遺伝子を導入することで、さまざまな細胞への分化が可能になった万能細胞。再生医療への応用が期待されています。

iPS細胞は、細胞・臓器の作製、新薬開発への応用など、これからの医療で重要な役割を持つ

最近、再生医療という言葉をよく耳にするようになりました。どのような医療なのか簡単に教えてください

再生医療の考え方の基本は、自己修復力の有効活用です。例えば、ケガをしても薬をつけてしばらくすれば治りますよね。その治る能力を「自己修復力」といいます。体が持っている自己修復力を上手く引き出して利用し、医療に役立てる、これ自体はもうすでにさまざまな形で行われています。こうした医療をさらに革新的に進めようというのが、近年いわれる「再生医療」です。今までの医療では治りきらない病気を治すために“自己修復力の新しい引き出し方を細胞レベルで開発し、治療に役立てる”、これが現在の再生医療の考え方であり、私たちの研究課題でもあります。

ここで、ノーベル賞の日本人受賞で話題となったiPS細胞が、なぜ再生医療に貢献すると言われるのかを説明しましょう。

ヒトの組織や臓器というのは、お母さんの子宮の中で胎児が発生する時に最初からあるものではなくて、徐々に作り出されていくものなんですね。最初は受精卵というたった1個の細胞ですが、それがどんどん変化して、いろいろな細胞ができます(分化と言います)。それと同時に分化した細胞同士が協調し合って、組織や臓器を作っていくんです。

今話題のiPS細胞は、ヒトの皮膚などの細胞に遺伝子を入れて人工的に作った細胞で、まだ人間の子宮の中でたくさんの細胞に分化していない状態の細胞(幹細胞)と同じような能力を備えています。ですから、研究者は皆、このiPS細胞を使って子宮内で起こっていることと同じようなことを試験管の中で起こして、ヒトの細胞や組織、臓器などを作り出そうとしています。そうしてできた細胞や臓器を身体に移植して治療すれば、傷んだ部分を修復できる可能性があるというわけです。

iPS細胞は、「万能細胞」と称されるように、ヒトのあらゆる細胞になり得ます。臓器が作れれば、臓器提供者不足も克服できますし、今まで治療困難だった病気の新薬開発にも応用できます。だから医療に役立つものとして非常に注目されているんです。

今、お話にも出ましたが、iPS細胞の研究で日本人がノーベル賞を受賞したことについての感想をお聞かせいただけますか

ノーベル賞を受賞したのが、私自身昔から知っている京都大学の山中先生で、大変素晴らしいと思うと同時に、正直なところ驚きもありました。多くの人がコメントしているように、いずれ受賞するだろうとは思っていましたが、発見して6年という早期の受賞は予想外でした。

一緒に受賞したイギリスのジョン・ガードン氏は、50年前にカエルの実験で「初期化(リプログラミング)」という機構を発見しました。しかし、多くの研究者はこの説をずっと懐疑的に捉えていたんです。ところが、山中先生の画期的なiPS細胞によって「初期化」が起こることが完璧に証明され、センセーショナルな話題になったという経緯があります。

ノーベル賞は人類への社会貢献が明らかになってから受賞する、というのが一般的な認識としてあります。iPS細胞自体は、まだ人類に貢献するところに至っていませんし、再生医療において臓器移植を上回るような治療が実現するのは、だいぶ先になるかもしれません。でも、そこに向けて地道な努力をしていくことは、非常に価値が高いことです。今回のノーベル賞受賞は、今後、「間違いなく人類に大きく貢献するであろう」という将来性を大きく評価された、そう考えていいと思います。

再生医療ですでに実用化されているのは、どのようなものでしょうか?

再生医療の概念を医療の現場で実証している代表例と言えば骨髄移植です。これは1970年代から世界中で実施されていて、今では骨髄移植とは言わず、「造血幹細胞移植」と呼んでいます。これが幹細胞を使った治療の始まりです。

それ以前の60年代に、やけどの患者さんへの治療として、本人の皮膚細胞を培養してシートのようにして貼るという、今で言う再生医療が行われていました。その次に軟骨。そして日本でも有名な角膜上皮の移植へと進歩をしてきました。さらに来年か再来年には目の網膜の再生も実用化されると見られています。

ところが、こうした治療は再生医療とはいえ、血管が必要ない非常に単純な組織のものばかりです。ですから、これから先の課題というのは、血管が必要な肝臓や膵臓などのさまざまな臓器、そして神経などがターゲットになっていくと思います。

次のページでは、iPS細胞からヒトの肝臓を作製した、その研究の内容とiPS細胞を取り巻く状況についてうかがっています。

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