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HOME > コムギのゲノム配列の概要解読に成功―コムギの新品種開発の加速化に期待―

コムギのゲノム配列の概要解読に成功―コムギの新品種開発の加速化に期待―

平成26年7月17日
独立行政法人農業生物資源研究所
国立大学法人京都大学
公立大学法人横浜市立大学
日清製粉株式会社

ポイント
・生物研などが参加した国際コンソーシアムは、イネの40倍もあるコムギゲノムの塩基配列の概要を明らかにし、コムギの様々な特徴を決定する遺伝子を約12万個見出しました。
・これら遺伝子の機能を解明し、農業上有用な特性に関わる遺伝子の単離や、DNAマーカーの開発を進めることにより、病気に強く栽培しやすい品種などの作出を加速することが可能となります。

概要

1.コムギゲノムの解読のために、2005年に国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)が結成され、フランス、オーストラリア、アメリカ、イギリス等が参加し、我が国からは、(独)農業生物資源研究所(生物研)、(国)京都大学大学院農学研究科、(公)横浜市立大学木原生物学研究所、日清製粉(株) が研究チームを組織して、コムギの21対の染色体のうち、イネの全ゲノムの2.5倍に相当する6B染色体の塩基配列の解読を担当しています。

2.IWGSCは、コムギ品種「チャイニーズ スプリング」を用いて、ゲノム配列の概要解読に成功し、コムギが持つと想定されている遺伝子数にほぼ対応する約12万個の遺伝子と、さらにこれらが21対の染色体上のどこにあるのかを明らかにしました。なお、この成果には、これまでのイネゲノム研究で蓄積されてきた遺伝子の解析情報等が活用されています。

3.コムギのゲノムは、イネの40倍と大きく、またコムギゲノムは異なる三種類のゲノムで構成されるため、農業上有用な特性に関わる遺伝子の単離や、DNAマーカー1)の開発が困難でした。今回の成果は、これらの問題解決に非常に有効で、育種効率を一層向上させ画期的な新品種の開発を加速することが可能となります。

4.この成果は7月18日(米国時間)付けの科学雑誌「Science」にIWGSCとして発表される予定です。また、6B染色体概要配列の一部は、既に昨年、生物研等が科学雑誌「DNA Research」に発表しています。

予算:
農林水産省委託プロジェクト「新農業展開ゲノムプロジェクト」(H23-24年度)
農林水産省委託プロジェクト「次世代ゲノム基盤プロジェクト」(H25-29年度)

開発の社会的背景

コムギは世界第二位の生産量をもつ重要な穀物で、第一位のイネ、第三位のトウモロコシとともに私たち人類の食料基盤を支えています。しかし近年では、地球規模の環境変動や人口増加によって世界のコムギ需給は逼迫しつつあり、「環境の変動に強く、安定して生産できるコムギ品種」や「収穫量が飛躍的に高いコムギ品種」の開発が急務となっています。また、我が国においては、優れた製粉品質を持ち十分な生産量を確保できる良品質高収量の品種や、日本の湿潤な気候等によって多発する穂発芽や赤かび病等に対して十分な耐性を持つ品種の開発が切望されています。

研究の経緯

コムギの品種改良を効率的に行うためには、ゲノム情報に基づいて、農業上有用な遺伝子を発見し、形質と連鎖するDNAマーカーを作出することが必要です。しかし、栽培されているコムギのゲノム(全遺伝子セット)は、異なる3種類の野生種のゲノムからなる6倍体(AABBDD)と複雑なため、ゲノム解読が難しく遺伝子構成の全体像がわかっていませんでした(図参照)。また、3種類のゲノムには、それぞれ、塩基配列が似ている「同祖遺伝子2)」が存在しているため、塩基配列情報を利用する際には、どのゲノム由来であるかが極めて重要です。これまでは、ある遺伝子の配列がわかっても、それがA染色体上にあるのか、あるいはBやDにあるのかが分からなかったため、DNAマーカーとして活用できませんでした。
コムギのゲノム情報を染色体毎に高精度に解読する目的で、2005年に国際共同コンソーシアム(国際コムギゲノム解読コンソーシアム、IWGSC)が組織されました。IWGSCでは、各国の研究者が染色体を分担して、コムギ品種「チャイニーズスプリング」のゲノム情報を解読しています。
日本からは、生物研、京都大学、横浜市立大学木原生物学研究所、日清製粉が、チェコ実験植物学研究所とともに研究グループ(「産・官・学コンソーシアム」平成22年8月12日プレスリリース)を組織してIWGSCに参加し、「6B染色体」(9.14億塩基、イネの全ゲノムの2.5倍に相当)の解読を担当しています(図参照)。今回、京都大学、日清製粉及びチェコ実験植物学研究所が染色体を単離するために必要なコムギ系統の育成及びDNA抽出、生物研が塩基配列の解読を行い、横浜市立大学が遺伝子発現情報を収集しました。

研究の内容・意義

IWGSCでは、まずコムギの核から染色体を一対ずつ取り出し、染色体毎に配列の解読を行いました。解読した配列を整列化させたところ、染色体の61%に相当する領域をカバーしていました。
また、生物研を中心として行ったイネゲノム研究の成果や、横浜市立大学が収集したコムギ「発現遺伝子情報3)」を活用し、整列化したコムギのゲノム中に、現時点で124,201個の遺伝子があると推定しました。
今回解読されたゲノム概要配列は、解読量が十分に多く、染色体毎に区別されていることから、その利用価値は極めて高くなります。

今後の予定・期待

今回得られた成果は、農業上有用な遺伝子の特定や、品種改良のためのDNAマーカー開発に利用することができ、病気に強く栽培しやすい品種などの作出を加速し、国内外でのコムギの増産に貢献します。
今後、国際コムギゲノム解読コンソーシアム(IWGSC)では、最終目標である高精度ゲノム参照配列4)(21本すべての染色体について85%以上をカバーし整列化された配列)の決定に向け、引き続き共同研究を進めていきます。

発表論文

1. International Wheat Genome Sequencing Consortium. (2014) A chromosome-based draft sequence of the hexaploid bread wheat genome. Science doi:--------
2. Tanaka et al. (2013) Next-generation survey sequencing and the molecular organization of wheat chromosome 6B. DNA Research. doi: 10.1093/dnares/dst041

用語の解説

1.DNAマーカー
遺伝子の目印となるDNA配列。導入したい形質に関わる遺伝子をDNAマーカーの有無で確認して個体を選抜することが可能となります。さらに、従前の形質(例えば、「背が高い」、「色が濃い」といった見た目の性質)を対象とする選抜とは異なり、環境による影響を受けないので安定して利用できます。

2.同祖遺伝子
祖先を共通にする遺伝子。コムギは、共通の祖先種から分化した3つの野生種が、後に交雑して成立した6倍体です(AABBDD)。従って、これら3つの野生種のゲノム(Aゲノム、Bゲノム、Dゲノム)も、共通祖先種のゲノムから分化してきたため、それぞれのゲノムには共通の遺伝子があり、それを同祖遺伝子と呼びます。

3.発現遺伝子情報
細胞中のゲノムDNAにコードされている遺伝子から、mRNAに転写されている遺伝子に関する情報。ゲノム配列から遺伝子であることは推測できますが、実際に機能を持ち働いている遺伝子であることをより正確に判断するためには、転写されていることを確認する必要があります。ここでは、細胞中の転写されたmRNAを抽出し、その相補的DNA(cDNA)を網羅的に解析した情報(ESTs)を発現遺伝子の情報として利用しています。

4.ゲノム参照配列
その種のゲノムを代表する塩基配列。この参照配列を基準として、各品種や各個体の塩基配列と比較することにより、品種等に見られる形質の変異をもたらす遺伝子配列の変化を見出すことができます。

お問い合わせ先

○研究代表者:
(独)農業生物資源研究所 理事長 廣近 洋彦
○研究推進責任者:
(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 作物ゲノム研究ユニット長 半田 裕一
 電話:029-838-8374 E-mail: hirokazu@affrc.go.jp
○研究担当者:
(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 作物ゲノム研究ユニット 研究員 小林 史典
 電話:029-838-6148 E-mail: kobafumi@affrc.go.jp
(独)農業生物資源研究所 農業生物先端ゲノム研究センター
 先端ゲノム解析室 上級研究員 呉 健忠
 電話:029-838-6148 E-mail: jzwu@affrc.go.jp
(国)京都大学大学院
 農学研究科 名誉教授 遠藤 隆
 E-mail: endo.takashi.2e@gmail.com
(国)京都大学大学院
 農学研究科 准教授 那須田 周平
 電話:075-753-6139 E-mail: nasushu@kais.kyoto-u.ac.jp
(公)横浜市立大学
 木原生物学研究所 教授 荻原 保成
 電話:045-820-2405 E-mail: yogihara@yokohama-cu.ac.jp
 日清製粉(株)
 つくば穀物科学研究所
 所長 早川 克志
 電話:029-865-1177 E-mail: hayakawa.katsuyuki@nisshin.com
○広報担当者:
(独)農業生物資源研究所
 広報室長 谷合 幹代子 電話:029-838-8469
(公)横浜市立大学
 研究推進課課長 嶋崎 孝浩 電話:045-787-2019 E-mail: t_shima@yokohama-cu.ac.jp
(株)日清製粉グループ本社
 総務本部広報部部長補佐 関野 修策 電話:03-5282-6650 E-mail: sekino.shusaku@nisshin.com


本資料は文部科学記者会、科学記者会、筑波研究学園都市記者会、農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、京都大学記者クラブ、横浜市政記者クラブに配付しています。

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