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大学院医学研究科の平安教授、学術院医学群の河西教授らの研究グループが自殺未遂者の自殺企図再発予防プログラムを開発

横浜市立大学大学院医学研究科の平安良雄教授、学術院医学群の河西千秋教授らの研究グループが自殺未遂者の自殺企図再発予防プログラムを開発し、救急医学教室の協力のもと、横浜市立大学附属市民総合医療センターなどの施設において多施設共同無作為化比較試験を実施し、その有効性が検証されました。そしてその成果が「The Lancet Psychiatry」誌第1巻第3号に掲載されました。
Kawanishi et al., Assertive case management versus enhanced usual care for people with mental health problems who had attempted suicide and were admitted to hospital emergency departments in Japan (ACTION-J): a multicentre, randomised controlled trial.
The Lancet Psychiatry, Volume 1, Issue 3, Pages 193 - 201, 2014.
doi: 10.1016/S2215-0366(14)70259- 7

研究の概要

わが国で増加し、深刻化した自殺問題を鑑みて、「自殺対策のための戦略研究」(厚生労働科学研究費補助金)が公益財団法人精神・神経科学振興財団を研究責任主体として、国立精神・神経医療研究センターの支援のもとに平成18年より実施されました。そしてその一環として、横浜市立大学大学院医学研究科精神医学部門の平安良雄教授(研究チームリーダー)、学術院医学群健康増進科学の河西千秋教授(事務局長)らは、本学附属市民総合医療センター・高度救命センターなどの救急医療部門と精神科が連携関係にある17の医療施設群からなる全国規模の研究グループ(市民総合医療センターを含む)を組織し、自殺未遂者に対するケース・マネージメント介入プログラムを開発し、その有効性を多施設共同無作為化比較試験により検証しました。その結果、ケース・マネージメント介入を受けた自殺未遂者において、一定期間内において対照群と比較して自殺再企図発生割合の明確な減少効果が認められました。本研究の成果を、日本の医療現場に普及させることで、自殺を再び企図する自殺未遂者が減少し、ひいてはわが国の自殺者の低減につながるものと期待されます。

研究の背景

わが国の自殺死亡率は、主要先進国と比較し、高い水準を示しています。厚生労働省が調査・公表している人口動態統計(平成24年)によれば、自殺は、20−29歳、および30−39歳の日本人の死因の第1位であり、40−49歳で第2位、50−54歳で第3位となっています。
自殺の背景には、さまざまな社会的・環境的要因があり、また、健康問題を含む多様なリスク因子が存在しますが、中でも、「自殺未遂の既往」が最も明確な因子であることが知られています。従って、自殺未遂者が自殺を再び企図し、死に至ることがないように、これまでに世界的に数多くの介入研究が試みられてきましたが、科学的に検証され有効だと認められた介入法はありませんでした。わが国では、横浜市立大学医学部精神医学教室が市民総合医療センター・高度救命救急センターと共同で、搬送された自殺企図者全例に対して自殺再企図防止を目的にケース・マネージメント介入を試み、注目されていました。

研究の内容

本研究の正式課題名は、「自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネージメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究」(通称 ACTION-J)です。本研究は、国立精神・神経医療研究センターの支援のもと、精神・神経科学振興財団が研究責任主体として実施した「自殺対策のための戦略研究」(厚生労働科学研究費補助金)の一環として実施されました。
平安良雄教授と河西千秋教授は、救急医療部門と精神科がすでに連携関係にある医療施設(市民総合医療センター・高度救命救急センターを含む)からなる全国規模の研究班を組織し、自殺未遂者に対するケース・マネージメント介入プログラムを開発し、その効果を多施設共同無作為化比較試験により検証しました。プログラムの内容は、自殺未遂者の方々の抱えていた精神疾患と様々な心理社会的問題に対する受療促進と問題解決によるアプローチでした。
研究の流れとしては、自殺を企図して救急医療施設に搬送され救命された自殺未遂者の方々全員に対して、まず危機介入、精神医学的アセスメント、そして心理教育といった、現時点の医療において最も高い水準の治療を行いました。その上で、十分な研究内容の説明を行い同意をいただいた後に、研究班で開発したケース・マネージメント介入プログラムを実施する群と、引き続き通常のケアを受けていただく通常介入群とに割付けを行いました。そして両群間で、自殺企図(自殺既遂及び未遂)の再発(初回)を比較することにより、このケース・マネージメント介入プログラムの有効性を検証しました。対象者の登録期間は 2006年7月−2009年12月で、計914名の自殺未遂者(男性400名、女性514名)にご協力いただきました。そして、割付けの時期に応じて1.5年−5年間の介入と追跡調査を実施しました。

研究の成果

本研究により、今回開発されたケース・マネージメント介入プログラムが自殺未遂者の自殺再企図を抑止できることが、高い科学的根拠(エビデンス)をもって明らかになりました。具体的には、ケース・マネージメントを実施した場合に、通常介入群に比べて1ヶ月の時点で約5分の1(リスク比0.19)の大変強力な自殺再企図割合の減少効果が認められました。3ヶ月の時点でもほぼ同様の効果があり(リスク比0.22)、6ヶ月の時点では2分の1(リスク比0.49)の減少効果を示しました。このように、介入効果は、特に早期の段階で有意かつ顕著でしたが、12ヶ月 (リスク比0.70)、18か月(リスク比0.79)の時点でも減少効果は継続していました。また、この効果は、女性、40歳未満、過去の自殺企図歴があった自殺未遂者に強く認められました。
本研究は、これまでに数多く行われてきた介入研究の問題点や課題の多くを克服した研究であり、明確なエビデンスを有すること、また、ケース・マネージメント介入の実施率が非常に高く臨床現場への導入が十分に可能であることなどから、その成果はわが国だけでなく、国際的に重要な知見を提供するところとなりました。当該研究で実際にケース・マネージメントを実施したいわゆるケース・マネージャーは、精神保健福祉士、あるいは臨床心理士という既存の専門職性をもった人材だったことから、ケース・マネージャーの育成も現実的に可能であると考えられました。
わが国においては、すでに救急医療部門において、精神科医による自殺未遂者等の診察に対する診療報酬評価がなされていますが、救急部門と精神科を軸としたチーム医療体制を整備し、有効性が確認されたケース・マネージメント介入プログラムを導入することによって、自殺未遂者の自殺再企図を減少させることが可能になるものと期待されます。

展望

本研究の成果の普及には、本研究で用いられた介入プログラムを現場で実践することのできるケース・マネージャーの育成と、そのケース・マネージャーの配置と活動を担保する施策と医療施設内の整備が不可欠ですが、現在、「自殺対策のための効果的な介入手法の普及に関する研究」(厚生労働科学研究費補助金 研究代表者:山田光彦;分担研究者:平安良雄,河西千秋ら)により、ACTION-Jの実務に関わった多くの医療者と研究者の参加を得て、ケース・マネージャー養成プログラムの開発が既に進められています。今後、この人材育成プログラムを事業化することでケース・マネージャーが確保され、施策に基づく医療現場の環境整備が為されることで、実効性のある自殺未遂者ケアが全国で本格的に始動していくものと期待されます。

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