横浜市立大学医学部附属病院は,平成11年1月11日(月),常識では考えられない患者取り違えによる医療事故を起こした。
本件事故の発生後のA氏及びB氏の容態については,随時,附属病院の報告に基づき,公表されてきているが,両氏とも本来の手術はいまだ行われておらず,また,B氏においては,不整脈という合併症の発生のためペースメーカーの植込みを必要とし,肺疾患の予後についても未解決の問題が残されている。
患者・市民は,大学病院に対して,高度な医療水準と良質な医療の提供を期待しているが,本件事故によって,附属病院に対する信頼が大きく失われたと言っても過言ではない。
本件事故は,基本的な手順である「患者確認」を怠ったこと,また,医療に従事する者が,相互の連携や一体感に乏しかったことなどによって生じた事故である。
そもそも医療は,「人の病を治す」ものであり,患者と医療に従事する者は,本来,「個人対個人」の対等な関係である。そのうえに立って,患者すなわち人間を診るのが医学の基本であることは言うまでもないことである。
医療に従事する者が,患者の立場に立って,安全管理の重要性を深く自覚することは,極めて重要なことである。
特に,医師は,大きな権限と責任を持っており,医療に従事する者の中心となって,率先して安全管理体制の確立に向けて,取り組まなければならない。
横浜市立大学,医学部及び附属病院は,市民の負託を受けて運営されている。したがって,本報告書で指摘した事項を真摯に受け止め,今後の医学部及び附属病院のあり方について関係者全員で真剣に議論し,速やかに改革案を策定してそれを実行していくことが重要である。そして,1日も早く,新たな「医学部,附属病院」として再生し,患者・市民の信頼を回復するよう,積極的に取り組むことを強く望むものである。
[報告書目次]