進化する医療技術を駆使し、
婦人科がんの治療に挑んでいます

医学群 がん総合医科学 教授

宮城悦子

みやぎ・えつこ

宮城悦子

飛躍的に進化する医療技術

副作用を抑える新薬で、化学療法の質が大幅に向上

 私は2008年に附属病院内の化学療法センターのセンター長に就任して、すべての診察科の抗がん剤治療の責任者という立場にありました。そのため、専門外のがんについても多くを学び、大変良い経験をさせていただきました。
 この間、さまざまな抗がん剤治療に携わりましたが、がん化学療法はまさに日々進化しており、次々に新しい薬が開発されています。例えば、がん細胞の特異的な分子を効率的に攻撃することでがん細胞を死滅させる「分子標的治療薬」という薬があります。このため、正常細胞へのダメージが少なく比較的副作用も少ない薬として、多くの薬剤が臨床の場に登場するとともに、新たな分子標的治療薬が盛んに研究開発されています。
 また、従来のがん化学療法は、入院して治療を受けることが多かったのですが、現在は多くの患者さんが外来で治療を受けられるようになりました。外来での治療は、がん患者さんの生活の質の維持に重要な役割を果たしているため、急速にニーズが高まっています。附属病院では2015年1月に、先進的な設備を揃えた化学療法センターが移転整備され、毎日多くの患者さんに外来化学療法を行っています。

 

革命をもたらしたロボット支援下手術への期待

 化学療法だけでなく、近年は放射線治療も着実に進化しています。放射線治療は、いかに正確にがん細胞を狙って放射線を当てるかがカギとなりますが、最近は精度が大幅に向上しています。放射線を当てる部位を、レントゲンのフィルムを使って2次元で計算していた従来の方法から、CT画像を使って立体的に計算する方法に変わったことも大きな進化です。
 また外科手術では、2014年5月に附属病院に導入された手術支援ロボット[keyword2](ダ・ヴィンチ手術)が注目を集めています。これは、執刀医の手の細やかな動きをロボットがサポートするもので、コンピューターで制御された高度な機能を使い複雑な手術操作も可能にしています。
 現在日本では、前立腺がんに対する手術が保険適用となったことから、当院でも泌尿器科でダ・ヴィンチによる手術が多数行われています。私もこの手術のトレーニングを受け術者の資格を得ており、まだ保険適用外ではありますが、子宮がんで三例の手術実績があります。このロボットが開発されたアメリカでは、多くの領域の難しい手術にもどんどん利用されています。日本でもっと普及すれば、将来の低侵襲(患者さんの身体の負担を極力減らした)外科手術の精度を飛躍的に上げることができるだろうと期待しています。

Keyword 2手術支援ロボット
腹部に空けた小さな穴から鉗子を挿入し、離れた場所にいる執刀医の細かな動きに連動する。臓器の奥などでの繊細な手術操作が可能で、手振れ防止など高度な機能を駆使することで、安全な手術が行える。附属病院では、アメリカのインテュイティヴ・サージカル社が開発した「ダ・ヴィンチ」が導入されている。

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