有機合成化学の力で未来を切り拓く
有用なものを作り出したい

国際総合科学群 天然物有機化学 准教授

石川裕一

いしかわ・ゆういち

石川裕一

自然のものを人の手で作り出す喜び

より快適な未来を築くために

石川裕一いしかわ・ゆういち

国際総合科学群 天然物有機化学 准教授

(大学)国際総合科学部 理学系 物質科学コース
天然物化学と有機合成化学を専門とし、自然から採れた生物活性物質の研究を行っている。主に、医薬品開発の分野で、薬のもとになる物質の合成に取り組んでいる。

 私の専門は、「天然物化学」や「有機合成化学」で、本来は自然から採れる化合物・化学物質を人間の手で作る研究です。天然物化学の“天然物”とは、自然界に存在する有機化合物[keyword1]のことをいいます。具体的には海や川、陸などに存在する動植物、微生物などから作られる物質のことです。
 天然物化学では、これらの有機化合物から人間にとって有用な物質を発見するため、その作用をもたらす物質のみを取り出し、それを分析して構造を推定します。そして、今度は反対に推定した通りに合成して構造を確認していきます。
 有機合成化学とは、簡単な化合物を使ってさまざまな有機化合物を作る化学・技術のことです。簡単な構造をもつ化合物(一般的な原料)から、複雑な構造の化合物(高い付加価値をもつ製品)を作り出すもので、化学の中のものづくりと言えるでしょう。これらの研究の中には、天然物はもちろん、天然には存在しない染料や医薬品、繊維、プラスチックなど、私たちの生活に欠かせない製品の原料を作り出すものもあり、人々の生活を豊かにするためのいろいろな研究が行われています。

 

医薬品開発の“基礎の基礎”となる研究

 有機合成化学の分野の中では、さまざまなものが生み出されていますが、私は主に薬を専門に研究しています。古くから人間は自然界に存在する物質(化合物)を薬として利用してきましたが、そういった物質の中には有効な成分を十分に確保することが難しいケースが多くあります。そのため、人工的に合成して作り出すことが求められています。
 学生時代にこのような研究に興味を持ち、自然にあるものを人の手で作り出すことができるという驚きや喜びが、今の研究の原点になっています。そして、作り出したものが、世の中にとって有用なものであればあるほど喜びも大きくなり、学生時代からやりがいを感じていました。
 この研究の目的は、薬のもとになるようなものを作ることで、例えばがんに効きそうだと言われる物質を人工的に作り出すことです。ただ、その物質を作れば必ず薬になるというわけではありません。あくまでも薬の開発のための“基礎の基礎”となる物質です。そのため、効能があるかどうかは大学の医学部や製薬会社などの研究を待たなければならず、「将来画期的な薬の開発につながれば…」と願いながら、研究に取り組んでいます。

Keyword 1有機化合物
炭素原子を基本構造としている化合物のこと。従来は、生物から得られるものと定義されていたが、無機物から有機物を人工的に作り出す技術が発達し、現在は生物の関与なしに化学的に合成された化合物も多数、有機化合物の物質群に含まれている。

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