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平成27年度開催報告

平成27年度のひらめき☆ときめきサイエンス「世界最高峰の実験機器を体験!NMRを使って様々な現象を謎解きしてみよう!」は、60名の応募者の中から、抽選で選ばれた37名の高校生の皆さんとともに始まりました。

はじめに

まずは、プログラム代表の高橋先生から、本日担当するスタッフの紹介、そして分子科学における最高峰の研究機器である「NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)」の特徴について、簡単な説明がありました。 本学には感度の異なる6種類の「NMR装置」が全部で7台設置されています。

科研費についての説明

日本学術振興会の研究員で、普段は千葉大学で宇宙物理学を研究している花輪知幸教授から科研費(科学研究費助成事業)についての説明がありました。科研費とは、科学研究の更なる促進を目的に、公募に採択された研究者に対し配分される研究費で、本日代表を務める高橋先生に関しても、科研費の助成を受けています。
『ひらめき☆ときめきサイエンスは、最先端の研究とはどのようなものなのか、高校生のみなさんにもわかるように、体験しながら学んでもらうためのプログラム』であり、科研費に関する理解を深めてもらう社会還元の一環でもあります。

施設見学ツアー

2グループに分かれて、本日の実験に使用するNMRをはじめとする様々な機器を見学しました。
・NMR(核磁気共鳴装置)
・X線回析装置
・質量分析装置
・スーパーコンピューター
※ 画像:左「900MHz NMR」・右は「スーパーコンピューター」

講義:NMRって何だろう?

タンパク質とは

池上先生による「NMRってなんだろう?」の講義です。まずは、本日扱う試料であるタンパク質について学びます。
タンパク質は、生きていくうえでとても重要なものです。タンパク質というとまずは食べ物である「チーズ」や「納豆」を思い浮かべますが、その他にもいろいろなものがあります。例えば、乳酸菌が発酵に使う酵素や、貝が岩にくっつく時の接着剤もタンパク質です!

タンパク質は形が重要

20種類のアミノ酸が鎖状に繋がり、立体構造をつくってタンパク質ができていますが、その形が非常に重要です。私たちの体の中には何十万種類ものタンパク質があり、それぞれのタンパク質は、平均で500個くらいのアミノ酸が繋がってできています。(ちなみに、そのタンパク質が「200垓個」集まると私たちの身体ができます。)
※「垓」=10の20乗

NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)とは

NMRは磁石であり、中にはマイナス269℃の液体ヘリウムが入っているため、冷たいものを保存する魔法瓶のような構造になっています。磁極は上がN極、下がS極になっており(逆向きの場合もあり)、原子核が装置の中に入ると、磁力の影響により回転(=スピン)します。
NMRを使った測定では、物質に含まれる原子を対象として、その原子核の回転によって生じる電圧を測り、その結果がディスプレイに表示されることにより、原子核スピンの回転スピードがわかります。

「NMR」は横にすると「MRI」になる

人間の体の70%は水でできています。体内の水(H₂O)に含まれる水素原子核(₁H)のスピンを磁力により検出し、体の断面を画像化していくのが、病院にあるMRIです。
なんとなく知っていた機器とNMRが同じ原理を利用していると聞いて、NMRが少し身近になってきたでしょうか。

今日の実験内容説明

高橋先生から、この後行うそれぞれの実験について、キーポイントの解説がありました。

【実験A】タンパク質分子をつくってみよう

緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein:GFP※)を使います。
※ オワンクラゲがもつ緑色の蛍光を発するタンパク質
GFPはそれのみで発色するのではなく、光をあてるとその光を吸収し、違う色の光を出すことによって、緑色に光っているように見えます。
このGFPを発見し、なぜ光るのかを解明した下村脩博士らが、2008年にノーベル化学賞を受賞したことは有名ですが、実験Aでは、バイオテクノロジー技術を用いてGFPを作製する過程を体験し、NMR実験1ではGFPの蛍光発色の鍵をにぎるのは何かを調べます。

【実験B】タンパク質を分離しよう

アルブミン(albumin)というタンパク質を使います。アルブミンは体の中でとても重要なタンパク質で、人だけではなく、様々な動物のさまざまな箇所に存在しています。人でいうと、血液に含まれるタンパク質の60%はアルブミンであり、これらは私たちの肝臓で作られています。
ヒトのアルブミンは、様々な物質と結合する性質を持つことから「物質を保持輸送する働き」があり、薬を飲んだ時の薬の効き方にも影響をもたらします。
実験Bでは電気泳動という方法で、卵白中に存在するアルブミンと、他のタンパク質とを分離する方法を学びます。後のNMR実験2では、アルブミンの物質を結合し輸送する働きに着目して、アルブミンと複数の小分子を混合すると何が起きるのかを観察します。

【実験C】NMR実験

実験Cでは3つのNMR実験を行います。GFPを用いた実験1、アルブミンを用いた実験2に加え、実験3では、NMRを使って牛乳とNMRを使って牛乳と、コーヒーなどにいれるクリーム(液体状のものと粉末状のもの)を分析し、どのような違いがあるのかを調べます。

【実験A】タンパク質分子をつくってみよう〜大腸菌にタンパク質をつくらせてみよう〜

1 大腸菌を液体培地に植菌する

白衣に着替えて、坂倉先生からタンパク質の構造と、その重要性についての説明がありました。今回の実験では、タンパク質遺伝子を取り込ませた細菌(大腸菌)に、タンパク質(GFP)を作らせる過程の一部を体験しました。また、実験に際しての注意として、自然界には存在しない大腸菌を扱うので慎重に扱うよう説明を受けました。

手袋もしっかり装着していよいよ実験開始!実験器具であるピペットマンをうまく使いこなせるように、最初は練習も行いました。まずは大腸菌を液体培地に植菌して、37℃で振とう培養を行います。

2 タンパク質発現を誘導する

一晩培養させた容器は、大腸菌が増えたことによって培養液が濁っています。2本の培養液のうち、一方にのみ誘導物質(IPTG)を加え、再び37℃で振とう培養を行います。

3 大腸菌内に発現したタンパク質を見る

本来は合成が開始されてタンパク質の発現が目に見えるようになるまでは、2時間以上の時間が必要です。今回はすでに昨晩から誘導を開始している培養液を用意してもらっているので、それを遠心機で5分間回転させます。そうすることにより、大腸菌が重みで沈殿します。沈殿した大腸菌をブラックライトで照射してみると、誘導物質を加えた方は、大腸菌内のタンパク質が蛍光発色しているのがわかります!

お昼休み

先生方や大学生・大学院生とお昼ごはんを食べながら、講義中や実験中に興味を持ったことを質問していました!また、大学生・大学院生には、学生生活や研究室の雰囲気についても積極的に聞いていました。

【実験B】タンパク質を分離しよう〜アルブミンの分離〜

1 卵白の中のタンパク質について

長土居先生からタンパク質の「分離」についての説明がありました。卵白の中には約15種類のタンパク質があり、その中の含有率トップ4のタンパク質には菌やウィルスから身体を防御する作用があります。この実験では、NMRを使って解析するサンプルのタンパク質成分を、どのように分離できるのかを体験しました。

2 ピペットマンの使い方

まずは純水で練習です。ピペットマンをうまく扱えるようになったら、卵白に挑戦です。エッペンドルフチューブの中に純水と卵白を量り入れ撹拌後、SDS(マイナスに電荷を帯びた界面活性剤)をいれます。 

電気泳動

15種類のタンパク質が入ったサンプル(純水と卵白とSDS)をゲル板のレーンに流し込み、電気泳動の装置にかけ、タンパク質を分離していきます。電気泳動により、分子量の小さいタンパク質ほど速く下に向かって泳動していきます。
泳動終了後、ゲルを染色・脱色すると、分離された結果がわかるようになります。

【実験C】NMRを使って調べよう

実験1:GFPが蛍光をださなくなる理由とは・・・?

実験Aで作ったタンパク質分子(緑色蛍光タンパク質:GFP)に塩酸を加えたところ(酸処理)、蛍光発色が消えてしまいました。そこで、酸処理した試料をNMRで測定し、なぜ蛍光発色が消えたのかを調べました。

実験2:小分子とアルブミンが共存すると・・・?

5種類の小分子にアルブミンを加えた試料の1次元1H-NMR測定を行い、同じ試料に対してSTD-NMR測定も行いました。そして電磁波の非照射と照射とで、NMRシグナルの出方を比較します。
画像右は、NMRに試料の入った容器を入れてセットしているところです。なかなかできない貴重な体験なので、交代で行っていきます。

実験3:牛乳とコーヒー用クリームのちがいは?

牛乳、コーヒーフレッシュ、牛乳からできている粉末状のクリームについて、1次元1H-NMRスペクトルをとり、その違いを調べます。

実験結果についての討論

すべての実験を終え休憩をとった後、講義室に戻り、NMR実験で行った分析結果についての解説を聞きました。

実験1:GFPが蛍光をださなくなる理由

蛍光をださなくなったのは、タンパク質が変性したためと考えられます。NMR測定結果を見ると、未処理のものは折り畳まったタンパク質の水素原子の周りの環境がそれぞれ異なるため、スペクトルは広がりをもっていましたが、酸処理して変性すると、全ての水素原子の周りの環境が似てしまうため、スペクトルは分散しないことがわかります。NMRスペクトルの違いは、本来籠状になっているタンパク質の立体構造が壊れ、機能が失われたことを示しています。

実験2:アルブミンと小分子の結合を見てみよう

5種類の小分子(アスコルビン酸、グルタミン酸、チアミン、カフェイン、アセトアミノフェン)に、アルブミンを加えスペクトル分析後、アルブミンがどの分子と結合するかを調べるために、STD(Saturation Transfer Difference)法で、NMRスペクトルを測定しました。結合している分子だけスペクトルに差が出るため、結果として結合したのはカフェイン、アセトアミノフェンだということがわかりました。

また、アルブミンが、薬の効き方に与える影響(アルブミンと結合する薬分子は分解が遅いため持続時間が長い薬)やアルブミン結合と薬の飲み合わせの仕組み(複数の薬の飲み合わせをすると、副作用が起こる場合がある)についても解説がありました。

実験3:牛乳とコーヒー用クリームのちがいは?

コーヒーフレッシュは、植物油脂に界面活性剤(乳化剤)を加え撹拌したもので、実は乳製品ではありません。一方今回使用した粉末状クリームは、牛乳から作られています。
このことから、『糖領域』の1次元スペクトルを見ると、「牛乳」と「粉末状クリーム」のピークが似ていましたが、コーヒーフレッシュは乳糖の代わりにトレハロースが添加されているため、その部分に違いがでました。
『脂肪酸領域』の結果は、「牛乳」、「コーヒーフレッシュ」、「粉末状クリーム」ともにピークは3種ともほぼ一緒で、大きな違いがないことがわかりました。

高橋先生からのメッセージ

現在NMRは様々な分野の研究に用いられています。今回みなさんは初めてNMRに触れたと思いますが、ぜひこれをきっかけに研究の世界に足を踏み入れて欲しいと願っています。そして研究を進めていくなかでNMRに遭遇した時は、今日のことを思い出してくれたら嬉しいです。

未来博士号授与と記念撮影

全てのプログラムを終了後に、参加者全員に「未来博士号」が授与され、最後はみんなでNMRの前で記念撮影。今日感じてもらえた『ひらめき』と『ときめき』を忘れずに未来の研究者を目指してもらえることを、教職員一同応援し、願っています!