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日本化学会「第96春季年会」で学生講演賞を受賞した増子さん

2016年3月、同志社大学 京田辺キャンパスで開催された日本化学会「第96春季年会」で、物質システム科学専攻の増子 貴子さんが学生講演賞を受賞しました。増子さんに、今回の受賞について伺いました。

今回の日本化学会「第96春季年会」では、どのような内容を発表されたのでしょうか?

「歯車状両親媒性分子によるナノキューブの置換基および溶媒効果の理論的研究」というタイトルで発表しました。
近年、東京大学の平岡秀一教授は[ref.1]、歯車状両親媒性分子というディスク状分子が25%含水メタノール溶媒中で箱型六量体(ナノキューブ)に自己集合することを、実験的に見出しています (Fig. 1)。さらに溶媒条件や分子のパーツの一部である置換基を変えることで、自己集合しないことも報告しています。この分子は、従来の水素結合のような強い相互作用ではなく、弱い分子間相互作用のみで一義的に自己集合しますが、その自己集合のメカニズムや、置換基と溶媒の影響は未だ解明されておりません。そこで私は、計算機シミュレーションを用いて、考えられる置換基と溶媒のパターンを数種類変えて系統的に解析することで、この分子の自己集合における置換基効果と溶媒効果の影響の詳細を新しく見出すことができました。特に自己集合機構における置換基と溶媒効果の寄与に対する総合的な理解に貢献できたことが、受賞理由だと考えています。

今回の私の講演発表は、「歯車状両親媒性分子の自己集合」に関する最先端の実験を行っている東京大学の平岡研究室との連続講演でした。同じ分子を実験的に取り扱っている平岡研究室の修士課程の学生が、私の講演の直前の発表で、実験結果を端的に分かりやすくまとめてくださいました。その講演を受け、実験だけでは解明できない部分に焦点を絞り、計算機シミュレーションで明確な説明を与えた点が評価されたと考えています。また、理論と実験では使う言葉や表現が異なる部分があるのですが、実験の研究者と密になって議論をするという訓練を受けてきたおかげで、実験の研究者から質疑を受けても、その場にいる皆様に出来る限り分かりやすく伝えることができたと思います。

なおこの賞は日本化学会春季年会における一般研究発表(口頭B講演)で大学院博士(後期)課程に在籍する学生会員の講演を対象に、発表内容、プレゼンテーション、質疑応答などにおいて優れた講演で、講演者の今後の一層の研究活動発展を期待されて贈られるものです。日頃より、ご指導をくださっている立川先生、北先生、研究室メンバー、共同研究先の平岡先生、長嶋先生に深く感謝いたします。
[ref. 1] S. Hiraoka, K. Harano, M. Shiro, and M. Shionoya, J. Am. Chem. Soc., 130, 14368-14369, (2008).

日本化学会の「第96春季年会」とはどのような会なのでしょうか?

日本化学会は、1878年(明治11年)に創立され、会員約3万名を擁するわが国最大の化学の学会です。化学・化学技術の知識を進展させ、人類の発展と地球生態系の維持とが共存できる社会の構築を目指しています。今回の春季年会は日本化学会会員のための由緒ある学会発表であり、化学分野の研究者が一堂に会する場所です。

春季年会に参加された際の感想、エピソードなどについてお聞かせください。

日本化学会春季年会は、日本最大規模の化学の学会発表の場であり、化学に携わる研究者が一同に介しております。私たちは、平岡研究室で実験的に見出された自己集合系に対する計算機シミュレーションを行っております。実験と理論の両方の結果を、両方の分野の研究者に報告することが理想的であると考えています。そのような多彩な分野の研究者の方々と深く幅広い議論をするためには、日本化学会春季年会が非常に良い機会であることは間違いありません。また、日本化学会春季年会の発表が年度末にあることから、私達の両研究室では、この学会で一区切りになるよう実験と計算の研究計画を進めてまいりました。
発表当日は、非常に多くの研究者の方が集まってくださり、今までまとめ上げてきた成果を報告できたことが本当に嬉しかったです。発表直後の質疑応答だけでなく、休憩時間にも多くのご質問をいただき、改めて発表させていただいたことに感謝の思いでいっぱいでした。また、それ以上に、長い間、結果が出ない間も見守り続けてくださった指導教官である立川先生と、共同研究先の平岡先生に、きちんとした形で研究を報告できたことが何より嬉しかったです。

事前準備などで意識した点や苦労した点があれば、お聞かせください。

この研究で重要だったのは、溶媒変化や置換基効果といった様々な条件での、膨大なシミュレーション結果を詳細に解析し、系統的にまとめなければ包括的な議論は難しい点でした。このビッグデータ解析に、4年間かかりました。が、ようやく今回の発表で、全体像がまとまったと思っています。

研究室では普段どのような研究・勉強をされているのでしょうか?

現在は、内包分子が入ることによるナノキューブの形状変化の機構に関して研究しています。普段の勉強では、量子化学や分子動力学計算の教科書や、論文を読んで、計算科学に関する技法を学んでいます。

研究・勉強の中で苦労することや大変なことはありますか?

研究を始めた当初、近い研究をしている学生がいなかったため、研究の進め方を試行錯誤したことが大変でした。しかし、そのおかげで、自ら勉強しようと学会発表やイベント、他大学での勉強会などに積極的に参加するようになったと思います。今思えば、自分にとっては重要な経験でした。

増子さんの将来の夢や、目標を教えてください。

私は、この研究を通して、不思議に思った現象に対して仮説を立てて、シミュレーション実験で結果を詳細に解析し、全体のストーリーを構築するという、研究の一連の流れを学ぶことが出来ました。また指導教官である立川先生には、単なる勉強や研究だけではなく、学ぶ姿勢や礼儀、学会発表での立ち振舞、議論の仕方など、様々なことを幅広く丁寧にご指導頂きました。何より、先生に研究の面白さを教えて頂いたからこそ、今の自分がありますし、今回の講演賞受賞につながったと思います。ここで培ってきた力を武器に、将来、研究者として活躍してまいります。

立川仁典教授からのコメント

今回、増子さんが研究発表を行った日本化学会は、自然科学分野の最高峰かつ最も歴史ある学会の一つです。現在では会員数約3万名を擁する、わが国最大の化学の学会で、数多くのノーベル化学賞者も輩出しています。この度、増子さんが受賞した学生講演賞は、一般研究発表で大学院博士(後期)課程に在籍する学生会員の講演を対象に、今後の研究活動の発展を強く期待され贈られたものです。このように増子さんの研究内容が高く評価されたことを、研究室一同、また指導教員として、大変嬉しく思っています。
増子さんは、実験だけでは解明することが大変困難な「有機分子の自己組織化機構」をターゲットに、計算科学シミュレーションによる研究に挑戦しています。数多くの溶媒分子を考慮に入れ、また様々な条件を変化させた、多数の大規模シミュレーションを実行してきました。得られた膨大なビッグデータの中から、化学の本質を抽出するのは、科学的センスが問われるだけでなく大変な労力を伴いますが、増子さんは大変緻密かつ丁寧な解析をやり遂げることができました。
増子さんは研究に対して大変積極的です。我々のコースの必修科目である学部2年次の体験ゼミ(一カ月間におよぶ研究室での研究体験)で、彼女が大変楽しそうに研究している姿が印象的でした。また学部時代には、私の量子化学の講義で毎回優秀なレポートを提出したことは、今でも鮮明に記憶に残っています。大学院になると、その能力がいたるところで発揮され、科研費新学術領域の若手の会を主催してもらったこともあります。
今回の受賞をステップにして、さらに研究に邁進し、より素晴らしい研究を行うことを大いに期待しています。

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