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71歳で博士の学位を取得した生命ナノシステム科学研究科の井田さん

2014年1月31日、生命ナノシステム科学研究科生体超分子システム科学専攻に在籍していた井田洋一さん(生命情報科学研究室)が、71歳で博士の学位を取得しました。
学位論文は「The structure of the inositol 1,4,5-trisphosphate receptor binding core in the ligand - free state (イノシトール 1,4,5-トリスリン酸受容体リガンド結合コアのリガンド非結合状態における構造) 」。入学に至った経緯や大学院での研究について、井田さんにお話を伺いました。

通勤途中で手にした一冊の本が入学のきっかけ

1965年に東レ株式会社に入社し、主に国内外の工場管理・生産システム開発を行っていました。1994年から10年間は株式会社東レシステムセンターの事業統括を担いました。つまり、「研究」とは無縁の生活を送っていました。

「研究者」の世界へ足を踏み入れたのは、2000年頃に、通勤途中で手にした『複雑系』(ミッチェル・ワールドロップ著・新潮社)(原題:COMPLEXITY: The emerging Science at edge of Oder and Chaos)を読んでショックを受けたのがきっかけです。
私が大学を卒業したのは50年前でしたが、自分が勉強をしていたころよりも世界ははるかに進んでいました。政治・経済の社会科学もさることながら、自然科学は自分が学んでいたころより飛躍的に進歩していて、特に生命現象解明のレベルには目を見張るものがありました。しかも、生命誕生についてはまだこれからの解明を待つ状態となっていて、無機物からDNA−RNA−タンパク質のセントラルドグマがどのように形成されたかを強烈に知りたくなりました。
それには自分には基礎知識を勉強する必要があると考え、退職後に学生として、一から生命科学を勉強したいと思い、横浜市大に入学しました。
−写真は、井田洋一さん(左)と指導教員の木寺詔紀教授(右)−

大学院でタンパク質の分子シミュレーションについて研究

私の研究内容は、イノシトール 1,4,5-トリスリン酸(IP3)受容体と称するタンパク質のリガンド結合コアとその変異体をIP3結合時とIP3非結合時の分子動力学シミュレーションを行い、動態の相違を解明することです。

細胞内のカルシウムイオン濃度変化は筋収縮、神経情報伝達、細胞分裂、受精卵成長など多様な細胞応答を引き起こします。このイオンが増加するには、細胞外から取り込むか細胞内の小胞体に貯蔵されたイオンを細胞内に放出するかのどちらかですが、小胞体からカルシウムイオンを放出するチャネルの一つがIP3Rというタンパク質分子です。この分子はIP3というリガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)と結合すると活性化し、チャネルをオープンしカルシウムイオンを放出します。IP3と結合する領域をリガンド結合コアと称しています。

特に、Arg241-Glu439塩橋の重要性を中心にドメイン間極性コンタクト残基の推移を調べ、塩橋の形成(開く)・解離(閉じる)が、チャネルの開閉のトリガーとなることを提案しました。

大学院は研究が勝負。毎日が新しいことの連続

大学院では「試験」ではなく、「論文」つまり「研究そのもの」で評価されることが印象に残っています。テーマに関する知識や周辺の知識の輪を広げ、全体の知識の量・質の底上げをはかりながら研究内容を向上していくプロセスでは、毎日が新しいことの連続で、忙しい学生生活を過ごしたと思います。
専攻は、分子動力学シミュレーション分野を選びました。これは、分子・原子の動きを勉強することにより、生命体、即ちタンパク質分子形成のプロセス解明の基礎知識が獲得できると考えたからです。指導教員の木寺詔紀教授にはターゲットのタンパク質及びそのタンパク質を材料とする研究テーマを提示いただくとともに、節目節目で適切なご指導をいただき、大変感謝しています。

トラブルが起きた時でも年の功で対処が可能

記憶力・体力では若い学生には敵いません。まめにメモをとることで記憶を呼び起こし、毎日規則正しく午前中から作業をすることで、無理のない研究をつづけました。一度、博士前期課程(修士)のときに徹夜をしたことがあるのですが、日々の生活に戻るのに一週間かかってしまいました(笑)
また、目が疲れるので指先の細かい作業はお手上げでした。若いころから研究をしていれば違ったのでしょうが。
負けないところは、ほとんどないですが、しいて言えば、年の功といいますか、トラブルが起きた時でも対処の仕方を間違えることが少ないです。「間違えたときこそ一呼吸おいて対応する」ことが大切だと思います。

「小説・生命の起源」の自費出版が夢

今後は、生命が無機物(C,N,O,H,S)から誕生したメカニズムの解明に挑戦したいです。実験装置がないので論文にはならないですが、勉強した基礎知識と文献と私の妄想により「小説・生命の起源」を書きたいです。もし書けたら自費出版しようと思っています。

(2014.4.7 広報担当)

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