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研究成果

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遺伝学 松本教授 鶴﨑助教ら研究グループがコフィン−サイリス症候群の新たな責任遺伝子を発見!

〜『Nature communications』に掲載〜

横浜市立大学学術院医学群・鶴﨑美徳助教・輿水江里子研究員・三宅紀子准教授・松本直通教授(遺伝学教室)らは、知的障害、小頭、発育不全、特異的顔貌、第5指・趾爪の低形成を特徴とする先天性異常症候群であるコフィン−サイリス症候群(Coffin-Siris Syndrome;CSS)の新たな責任遺伝子を発見しました。この研究は、同生化学教室・椎名政昭助教、緒方一博教授、埼玉県立小児医療センター・大橋博文先生、サンジャイ・ガンジー医科学大学院(インド)・Shubha Phadk先生、独立行政法人理化学研究所・黄 郁代先生、池川志郎先生、大阪府立母子保健総合医療センター・岡本伸彦先生、長崎大学原爆後障害医療研究所・渡辺 聡先生、吉浦孝一郎先生との共同研究による成果です。本学においては「学長裁量事業(戦略的研究推進費)」のひとつに位置付けられており、先端医科学研究センターの研究開発プロジェクトユニットが推進しています。

☆研究成果のポイント
○全エクソーム解析*1によりCSSの新規責任遺伝子を同定。
○CSS 2例においてSOX11に、両親では認めない新生突然変異*2を見出した。
○転写因子の1種であるSOX11はBAF複合体関連ネットワークの下流で神経細胞の分化制御に関与。
○ゼブラフィッシュ疾患モデルでは、小頭などヒトと同じ症状を示した。

研究概要

CSSは、1970年にCoffin医師とSiris医師により、知的障害、発育不全、特異的顔貌、第5指・趾爪の低形成を伴う症候群として初めて報告されました。その大多数は孤発例で、遺伝的原因は不明でありましたが、2012年に松本教授らのグループは、世界に先駆けてクロマチンリモデリング因子の1種であるBAF複合体の構成サブユニットをコードする5つの責任遺伝子(SMARCB1、SMARCA4、SMARCE1、ARID1A、あるいはARID1B)を同定しました。この遺伝子異常を病因としたCSS症例は全体のおよそ55%であり、未解決の症例では新たな遺伝子の関与が示唆されていました。
松本教授らのグループは、BAF複合体の構成サブユニットをコードする遺伝子群に異常を認めないCSS 症例とその両親検体を用いて、全エクソーム解析により遺伝子変異探索を行いました。その結果、2例においてSOX11に両親では認めない新生突然変異を見出しました(図a)。
転写因子であるSOX11はBAF複合体ネットワークの下流で、神経細胞の分化制御などに重要な役割を果たしていることが報告されています。本遺伝子がヒトの脳組織で発現していることを確認し、モデル実験動物のゼブラフィッシュにおいて、モルフォリノアンチセンスオリゴ*3により相同遺伝子の機能を阻害すると、頭部の縮小(図b)、中枢神経の細胞死(図c)などの異常が認められ、CSSの症状を模倣していました。
これまでに、CSSではBAF複合体の構成サブユニットをコードするSMARCB1、SMARCA4、SMARCE1、ARID1A、ARID1Bの5つの遺伝子の変異が報告されていましたが、新たにSOX11が同定されたことにより、本疾患の遺伝子診断の正確性が向上しました。新たな責任遺伝子が解明されたことで、さらにCSSの病態解明と治療・予防法の開発に進展することが期待されます。

(注釈)
*1全エクソーム解析:ゲノム上の全エクソン領域(ゲノム中でタンパク質の配列を決定する全遺伝子をカバーする領域)を分画後、次世代シークエンサーで塩基配列を決定する方法。
*2新生突然変異:両親に認めず児において突然生じた新規の変異。
*3 モルフォリノアンチセンスオリゴ:mRNAからの翻訳やスプライシングを阻害することで、標的タンパク質の発現を特異的に抑制する短い塩基配列。

(a)CSS 2例に認められたSOX11の新生突然変異。両変異共に哺乳類からゼブラフィッシュまで保存されたアミノ酸の変化をもたらす変異であった。

(b)sox11機能阻害ゼブラフィッシュにおける頭部の縮小。ゼブラフィッシュの相同遺伝子sox11a/bの機能を阻害したゼブラフィッシュ(sox11a/b MO)の頭部は、正常のゼブラフィッシュ(Control MO)と比較して縮小した。この胚に、ヒトの正常型SOX11(hSOX11-WT)を発現させると、頭部のサイズが回復した。

(c)sox11機能阻害ゼブラフィッシュの中枢神経で生じた細胞死。sox11a/b遺伝子機能を阻害したゼブラフィッシュ(sox11a/b MO)では、正常のゼブラフィッシュ(Control MO)と比べ、中枢神経に顕著な細胞死を認めた(赤い矢尻で表示、グリーンの点状シグナル)。この胚に、ヒトの正常型SOX11(hSOX11-WT)を発現させると、細胞死が抑制された。ヒトの変異型SOX11(hSOX11-S60P、hSOX11-Y116C)を発現させると抑制効果は得られなかった。


*本研究成果は、英国の科学雑誌『Nature Communications』に掲載されます。(米国6月2日午前5時:日本時間6月2日午後6時オンライン掲載)
*この研究は、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」の一環として、また、厚生労働省、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会の研究補助金により実施されました。