ナビゲーションをスキップして本文へ
  • English
  • 通常版
  • テキスト版
  • 交通・キャンパス案内
  • サイトマップ
  • 大学トップ

研究者検索

研究成果

ここから本文

HOME  >  研究成果  > 循環器・腎臓内科学 田村准教授_血圧変動性

循環器・腎臓内科学 田村功一准教授ら研究グループが肥満症に処方される漢方薬“防風通聖散”が 動脈硬化の原因となる血圧変動性も改善することを発見!

〜統合医療へ期待〜

『欧州動脈硬化学会(EAS)機関誌 Atherosclerosis』に掲載

横浜市立大学医学部 循環器・腎臓内科学 小豆島健護 医師、大澤正人 助教、涌井広道 助教、田村功一 准教授ら研究グループが、患者さんの予後やQOLに重篤な影響をおよぼす種々の動脈硬化合併症の根源となる肥満高血圧に対する西洋医療と東洋医療の併用による統合医療の効果について臨床研究を行い、肥満症に処方されることが多い漢方薬 防風通聖散が抗肥満効果や糖代謝改善効果を発揮することに加えて、近年動脈硬化の要因として注目されている血圧変動性*1(図1)に対する改善効果を発揮することを明らかにしました。今後、統合医療(東洋医療と西洋医療の併用療法)が心血管系疾患の高リスク高血圧とされる内蔵脂肪型肥満を呈する肥満高血圧をより効率的に治療できる可能性を示唆した画期的な成果です。

*1 血圧変動性(測定毎の血圧のばらつきの指標であり、種々の血圧測定法により評価されますが、本研究では血圧日内変動を詳細に解析可能であり信頼性が高く保険適応も認められている自由行動下血圧測定(ABPM)検査による評価を行いました)

※本研究成果は、厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)に基づく厚生労働科学研究事業(図2)として行われました、肥満合併高血圧に対する統合医療(東洋医療と西洋医療の併用療法)の効果を検討する多施設共同医師主導臨床研究である「Y-CORE研究」によるものです。また、横浜市立大学先端医科学研究センターが推進している「研究開発プロジェクト」の成果のひとつです。

研究の背景

漢方薬は日本の日常診療で様々な疾患に対して処方される機会が多いものの、その作用メカニズムは大部分が不明のままであることに加えて、西洋医学的治療薬に比べて科学的エビデンスが不十分であると指摘されています。例えば医師を対象に行われた「漢方薬使用実態調査及び漢方医学教育に関する意識調査2012」においても、今後の漢方の普及のためには「科学的なエビデンスのさらなる構築」が必要との回答が82.9%にのぼりました。したがって漢方の普及には「エビデンスの構築」が不可欠である状況です。
また、近年、日本でも食文化の欧米化により肥満症が増加しています。特に内臓脂肪型肥満はメタボリック症候群を経て高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病といった生活習慣病の基盤となり、動脈硬化を促進することで心筋梗塞、脳卒中、腎不全などの重篤な動脈硬化合併症を発症することとなります。肥満症患者が増えることにより様々な疾患の罹患率が上昇し医療財政を圧迫していることもあり、国民健康レベルのさらなる向上および医療費効率化の推進の観点からも肥満症のより効率的な治療がとても重要になります。さらに肥満症に高血圧が合併した肥満高血圧では動脈硬化合併症のリスクがさらに上昇するために肥満高血圧に対する効率的な治療戦略の構築は非常に重要です。
内臓脂肪型肥満をはじめ肥満症の治療法は基本的には食事療法、運動療法による減量(ダイエット)になりますが、実際のところ日常診療の指導のみでは肥満症患者が効果的な減量(ダイエット)に成功するのはなかなか困難です。肥満症の補助療法として抗肥満薬や肥満手術などもありますが、その副作用から適応となるのは重症肥満症患者のごく一部に限られます。
防風通聖散は肥満症に対して処方されることのある漢方薬ですが、そのメカニズムや肥満に合併することの多い高血圧や糖尿病への効果については未だ不明な部分が多いとされていました。同研究グループは、内蔵脂肪型肥満を呈する生活習慣病モデルマウス(KKAyマウス)に今回と同じ漢方薬の防風通聖散を投与することにより、防風通聖散の脂肪細胞・組織や基礎代謝などへの多面的な作用、さらには、食欲増進ホルモン「グレリン」を抑制することによる食事量の減少作用が生活習慣病の改善に関与する可能性を明らかにし、すでに米国科学誌『PLOS ONE』に研究成果の一部が掲載されています。(PLoS One, 2013 Oct 9;8(10):e75560. doi: 10.1371/journal.pone.0075560.)

研究の内容

本研究では、患者さんの予後やQOLに重篤な影響をおよぼす種々の動脈硬化合併症の根源となる肥満高血圧の患者さんの同意のもと、対照治療群(52名、西洋医療単独コントロール治療群)と漢方薬併用群(54名、東洋医療と西洋医療の併用による防風通聖散治療群)とに無作為に割り付け、24週間にわたってプロトコル治療を行い、並行群間比較解析を行いました(図3)。
その結果、コントロール治療群に比較して、防風通聖散治療群では12週後、24週後における体重の減少効果、肥満度の改善効果が認められました。また、糖代謝指標についてはコントロール治療群に比較して、防風通聖散治療群では12週後におけるHbA1c(ヘモグロビンA1c)値の改善効果が認められました。さらに本研究の主要評価項目である、ABPM検査での血圧変動関連指標については、コントロール治療群に比較して、防風通聖散治療群において24週後における血圧変動性の改善効果が認められました(図4)。重回帰分析で解析したところ、防風通聖散による治療が血圧変動性の改善に関与していました。
以上の結果から、肥満高血圧の患者さんにおいて漢方薬防風通聖散の減量効果や高血糖改善作用を明らかにするとともに、さらには、動脈硬化合併症の原因として最近注目されている血圧変動性をも改善することを発見し、肥満高血圧での漢方薬併用による血圧変動性改善による動脈硬化合併症抑制のための治療戦略構築の可能性を明らかにしました。

今後の展開

本研究成果の意義は、作用機序に不明な点が多くまた科学的エビデンスが必ずしも十分ではなく、西洋医療と東洋医療の併用療法(統合医療)を行う上で支障ともなっている漢方薬のあらたな臨床的効果のエビデンスを示した点にあります。
そして、漢方薬 防風通聖散による、動脈硬化合併症のリスクの高い肥満高血圧患者さんに対する臨床的効果として、
1)体重減少効果、肥満度改善効果などの抗肥満作用、
2)HbA1c(ヘモグロビンA1c)値低下効果による糖代謝改善作用、
3)ABPM検査で評価可能な血圧変動性に対する改善作用、
を明らかにしました。
統合医療を保険診療内で行うことができるのは日本独特のシステムであり、日本発の漢方薬のエビデンスを蓄積していくことが今後もより効率的な医療を推進していくために重要であると考えられます。肥満合併高血圧症などの生活習慣病に対する西洋医療と東洋医療の併用療法(統合医療)の推進により、動脈硬化合併症の抑制を介した国民健康レベルの向上および医療費効率化の推進に結びつく可能性があります(図5)。

お問い合わせ先

(本資料の内容に関するお問い合わせ)
○公立大学法人横浜市立大学 学術院医学群 循環器・腎臓内科学 田村 功一
TEL:045-787-2635  FAX:045-701-3738
E-mail:tamukou@med.yokohama-cu.ac.jp

(取材対応窓口、資料請求など)
○公立大学法人 横浜市立大学 先端医科学研究課長 立石 建
TEL:045-787-2527  FAX:045-787-2509
E-mail:sentan@yokohama-cu.ac.jp