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才津浩智准教授らの研究グループが、孔脳症の原因遺伝子を発見!

―脳性麻痺の遺伝的要因の解明―

横浜市立大学学術院医学群・米田祐梨子(大学院生)・才津浩智准教授(遺伝学教室)らは孔脳症の原因遺伝子を発見しました。この研究は、厚生労働省難治性疾患克服研究事業(孔脳症の遺伝的要因の解明)のもと、宮城県拓桃医療療育センター・萩野谷和裕副院長、森之宮病院小児神経科・荒井洋部長らとの共同研究で行われた研究成果であり、横浜市立大学先端医科学研究センターが推進している研究開発プロジェクトの成果のひとつです。

☆研究成果のポイント
○孔脳症は胎生期における梗塞や出血といった脳循環障害により発生し、脳性麻痺の原因となる
○脈管構造で発現している基底膜タンパク質であるIV型コラーゲンα2鎖をコードするCOL4A2変異を孔脳症患者に同定
COL4A2遺伝子変異は、胎児期の脳出血による脳性麻痺(孔脳症)から左上肢の軽微な単麻痺や無症候性のキャリアーまで、幅広い表現型を引き起こす

研究概要

孔脳症は、大脳半球内に脳室との交通を有する嚢胞又は空洞がみられる先天異常であり、胎生期における梗塞や出血といった脳循環障害により発生すると推測されています。臨床的には、脳性麻痺(多くは半身麻痺)、てんかん及び精神遅滞を引き起こす重篤な疾患です。諸外国では、発症率は10万人に0.5-3.5人程度とされていますが、日本での正確な頻度は不明です。共同研究グループは、IV型コラーゲンα1鎖をコードするCOL4A1変異が孔脳症を起こすことが報告されていたことから、α1鎖とヘテロトリマーを形成し、血管基底膜の安定性に関与するIV型コラーゲンα2鎖(COL4A2遺伝子)に注目しました。そして日本人孔脳症患者35名でCOL4A2の変異解析を行い、2名においてCOL4A2遺伝子のヘテロ接合性変異を同定しました。IV型コラーゲンには、Gly-Xaa-Yaaリピート(Xaa及びYaaは同一又は異なる任意のアミノ酸を示す)が存在し、このリピート領域で2つのα1鎖と1つのα2鎖が3重らせん構造を形成します。Gly-Xaa-YaaリピートのGly(グリシン)の変異は、ヘテロトリマー形成の異常を引き起こすことがよく知られており、2つの変異もこのGlyの変異で、α1α1α2鎖の形成異常を引き起こすことが予想されました。2名のうちの1名は胎児期に脳出血を認めた孤発例であり、COL4A2変異は新生突然変異でした。もう一方は家族例であり、孔脳症の患児、左上肢の軽微な単麻痺を呈する母親、先天性の片麻痺を呈する母方の伯父、明らかな臨床所見を認めない母方祖父にCOL4A2変異を認めました。頭部MRI画像では片側性あるいは両側性の孔脳症が認められ、その程度も様々でした。このことから、COL4A2変異は片側性から両側性まで、また胎児期の脳出血による脳性麻痺から左上肢の軽微な単麻痺や無症候性のキャリアーまで、幅広い表現型を引き起こすと考えられます(図1)。
本研究は孔脳症の新たな原因遺伝子を明らかにしたばかりでなく、脳性麻痺の背景に遺伝的素因が存在することを示しました。また、COL4A2変異が胎児期から成人期における脳血管障害のリスクになることを示唆しています。今後、COL4A2変異が見つかった方の脳出血予防法等の、変異に基づいた治療・管理法の確立が期待されます。

(A) 患者1および(B)患者2の家系図。黒塗りは先天性片麻痺を有することを示し、灰色は画像上異常が認められたことを表す。患児を矢印で示す。変異塩基を赤で示している。患者1の変異は、左上肢の軽微な単麻痺を呈する母親、先天性の片麻痺を呈する母方の伯父、明らかな臨床所見を認めない母方祖父で認められた。患者2の変異はご両親には認められず、新生突然変異であった。(C) 患者1とその母親のT2強調MRI横断像(左、真ん中)と患者2のCT画像(右)。右側脳室の拡大(左、真ん中)と両側脳室の拡大(右)が認められた。

※本研究成果は、米国の科学雑誌『American Journal of Human Genetics』に掲載されます。(米国12月29日:日本時間12月30日オンライン発表)
※この研究は、厚生労働省、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会の研究補助金により行われました。