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小川毅彦准教授らの研究グループが培養下でマウスの精子幹細胞から精子を造り、健常な産仔に成功 !

〜英科学雑誌『Nature』(3月24日号)に掲載〜

横浜市立大学先端医科学研究センター及び附属病院 小川毅彦准教授(泌尿器病態学・窪田吉信教授)らの研究グループは、培養条件下でマウスの精子幹細胞から精子産生できる技術開発に世界で初めて成功しました。この技術を発展させ、培養条件下でのヒト精子形成が可能になれば、現在有効な治療法のない男性不妊症(精子形成不全)の病態解明や治療法の開発につながることが期待できます。この研究は、理化学研究所バイオリソースセンター・小倉淳郎教授らのグループとの共同研究による成果です。

☆研究成果のポイント
○世界で初めて、培養下で哺乳類の精子幹細胞から精子を造り、健常な産仔に成功しました。
○精巣組織を凍結保存し、解凍後の精子産生にも成功しました。

研究概要

精子形成は、ヒトでは64日間、マウスでは35日間という長期にわたる細胞分裂・分化の過程です。この精子形成を培養条件下で再現しようという試みは、歴史的には約一世紀前にさかのぼりますが、哺乳類においては今まで成功例はありません。またそのことが、精子形成障害に起因する男性不妊症臨床の発展の妨げになっていました。
研究グループは、培養条件下(in vitro)で精子形成を再現できれば、精子形成のメカニズムや精子形成障害の病態の解明に貢献できると考え、数年前からマウスをモデル動物とした研究を開始しました。精子形成にはセルトリ細胞※1を始めとした周囲の体細胞が重要であり、細胞を遊離して培養する細胞培養法よりも、精巣組織の構造がもつ特性をそのまま生かす方が有利であると考え、器官培養法という古典的な手法を再検討することから始めました。器官培養法の王道である気相液相境界面培養法(Gas-liquid interphase method)※2を改良し、寒天ゲル上に精巣組織片を置くだけの単純な方法を採用しました(図1)。また、精子形成の進行を簡便にモニターできる手段として、Acr-GFPとGsg2-GFPという2系統のトランスジェニックマウス※3を用いました。これらのマウスの生殖細胞は減数分裂の特定の時期にGFP※4を発現し、それらは培養実験を継続しながら実体顕微鏡で観察が可能です(図2)。様々な培養条件を検討した結果、培養液の組成が重要であることを再確認し、改良の末減数分裂が完了できることを見出しました。さらに生後間もない精巣組織を培養し、精原幹細胞が分化して精子が産生できることも確認しました(図3)。そこで産生された精子を用いて顕微授精実験※5を行ない、健康な産仔を得ることに成功しました(図4)。さらにそれらの仔マウスは成長し、自然交配にて孫世代の子孫も産生したことから、生殖能も正常であることが確認されました。また、精巣組織を凍結保存し、解凍後に同様の培養をおこなっても精子産生できることがわかりました。この精巣組織の凍結保存はがん患者の生殖能保存や、生殖医療の現場への応用も将来的に期待されます。

In vitroにおいて哺乳類の精子形成が完全に遂行され、その精子から産仔が得られたことは世界初の成果です。さらなる改良により、マウス以外の動物やヒトの精子形成もin vitroで完成できると思われます。この技術を応用することにより精子形成の詳細なメカニズムが解明され、男性不妊症の診断・治療にも貢献できると期待します。

※1 セルトリ細胞: 精上皮の基底側から管腔側に向かって伸びる柱状の細胞。精細胞の支持、栄養供給、種々のタンパク質の分泌などの機能を有する。
※2 気相液相境界面培養法: 組織片を気相と液相(培養液)の境界部位に置き、酸素供給と栄養供給のバランスを図った培養方法。
※3 トランスジェニックマウス: 外来遺伝子が導入された遺伝子改変マウス。
※4 GFP(Green fluorescence protein): クラゲ由来の蛋白質で、励起光を当てると緑色の蛍光を発する。
※5 顕微授精: ガラス針により精子を卵に注入して授精させる方法。

*この研究は、文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「配偶子幹細胞制御機構」および基盤研究(C)、横浜市立大学先端医科学研究センター研究開発プロジェクト、横浜総合医学振興財団からの研究補助金により行われました。