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HOME  >  研究成果  > 松本直通教授らの研究グループが重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!

松本直通教授ら研究グループが重症型もやもや病の遺伝マーカーを発見!

―RNF213遺伝子型と臨床型の関連についての新たな知見―

 横浜市立大学学術院医学群 松本直通教授(遺伝学教室)・宮武聡子(大学院生)らは、重症型のもやもや病の予測因子となる遺伝マーカーを発見しました。この研究は、東保脳神経外科・東保肇院長、東北大学医学部・呉繁夫教授(小児科学教室)、松原洋一教授(遺伝病学教室)、東京女子医科大学統合医科学研究所・山本俊至准教授、横浜市立大学医学研究科・川原信隆教授(脳神経外科教室)、黒岩義之教授(神経内科・脳卒中科学教室)、森田智視教授(臨床統計学・疫学)、利根中央病院脳神経外科脳神経外科・河内英行部長、大阪母子保健総合医療センター遺伝診療科・岡本伸彦主任部長、市川市リハビリテーション病院リハビリ科・森俊樹医師らとの共同研究による成果であり、横浜市立大学先端医科学研究センターが推進している研究開発プロジェクトの成果のひとつです。

☆研究成果のポイント
RNF213 遺伝子の14576多型によって日本人におけるもやもや病発症リスクは259倍に上昇
○14576多型のホモ接合体では、もやもや病の統計学的発症確率は78%以上
○ホモ接合体では、ヘテロ接合体に比べ発症年齢が早く、脳梗塞で発症することが多く、血管病変がより広範であり、いわゆる重症型に一致する病像を呈しやすい
○14576多型は重症もやもや病を早期、または発症前に予測する遺伝マーカーとして早期治療、予後改善に大きく寄与する可能性

研究概要

 もやもや病は、特定の脳主幹動脈の狭窄性変化と脳底部の異常血管網を呈する疾患で、若年性の脳虚血発作や脳出血の原因として日本をはじめとした東アジアで特に頻度の高い疾患です。慢性に進行し繰り返す脳虚血や脳出血による神経学的機能障害や知能低下をきたします。特に、発症年齢が早く初発時より重篤な脳梗塞を呈し、急速に進行し、著しく予後不良の重症群が存在することが臨床的に知られていました。このような後遺症をきたす前に早期の外科的な血行再建を行うことで機能障害を残すことなく治療を行うことが可能と考えられますが、若年者への血行再建術はそれ自体が周術期の脳卒中のリスクとなりうるため、早急な手術適応のある症例を早期に抽出する指標が求められていました。
 もやもや病には何らかの遺伝学的因子が関与していることが想定されていましたが、2010年に東北大学の呉繁夫教授らのグループがもやもや病の疾患感受性遺伝子としてRNF213 遺伝子を同定しました。松本教授らのグループは、日本人もやもや病患者204名について、RNF213 遺伝子の解析を行い、もやもや病の臨床症状との関連を検討しました。その結果、14576多型(c.14576G>A) が、家族歴のあるもやもや病症例の95%、孤発性症例の79%にみられることがわかりました。また一般日本人集団の1.8%がキャリアであることがわかり、この多型を持つことによるもやもや病発症のリスクは259倍と算出されました。この多型を有する症例について詳細にみると、ヘテロ接合体*1、ホモ接合体*2の2通りが存在しました。さらにホモ接合体群では、ヘテロ接合体群に比べ発症リスクが極端に大きく、その発症確率が78%以上であること、発症年齢が有意に早く、初発症状が重篤な脳梗塞であり、病変の範囲がより広範であるなど、従来臨床で経験的に知られていた重症型に一致することが判明しました。
 本研究は、RNF213 遺伝子ともやもや病との強い関連をあらためて裏付けたのみならず、14576多型が重症もやもや病を予測する遺伝マーカーであることを新たに見だしました。これは、臨床現場において、もやもや病患者さんの中で早期の外科的治療が優先されるケースを抽出する一つの判断材料として、あるいは、もやもや病の発症前からのモニタリングや、発症前治療といった予後の大きな改善につながる新しい治療戦略に大いに寄与しうるものと期待されます。

(注釈)
*1ホモ接合体: 父母由来のそれぞれの遺伝子座の両方に同じ変異がある状態。
*2ヘテロ接合体: 父母由来の遺伝子座のどちらか一方にのみ変異がある状態。

※本研究成果は、米国の科学雑誌『Neurology 』に掲載されます。(米国2月29日:日本時間3月1日オンライン発表)
※この研究は、厚生労働省、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会の研究補助金により行われました。