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HOME  >  研究成果  > 松本直通教授らの研究グループが、常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症の原因遺伝子の一つを発見!

松本直通教授らの研究グループが、常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症の原因遺伝子の一つを発見!

−病態解明に向けての新たな一歩−

横浜市立大学学術院医学群・土井宏助教、松本直通教授(遺伝学教室)らは、精神運動発達遅滞を伴う常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症の原因遺伝子を発見しました。この研究は、信州大学医学部神経難病学講座神経遺伝学部門・吉田邦広教授をはじめとする脳神経内科グループ、東北大学大学院生命科学研究科・福田光則教授(細胞機能構築統御学講座膜輸送機構解析分野)、東京大学大学院医学系研究科・辻省次教授(神経内科)、理化学研究所脳科学総合研究センター・貫名信行チームリーダー(構造神経病理研究チーム)、横浜市立大学学術院医学群・黒岩義之教授(神経内科学・脳卒中医学教室)らとの共同研究による成果であり、横浜市立大学先端医科学研究センターが推進している研究開発プロジェクトの成果のひとつです。

※本研究成果は、米国の科学雑誌『American Journal of Human Genetics』に掲載されます。(米国8月11日:日本時間8月12日オンライン発表)
※この研究は、厚生労働省、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会の研究補助金により行われました。

研究の背景

常染色体劣性遺伝性小脳変性症(以下ARCA)は、非進行性の小脳低形成や進行性の脊髄小脳変性症(以下SCA)を含む不均一な疾患の総称です。本邦においてはARCAの原因遺伝子の頻度について正確な統計はありませんが、原因不明(原因遺伝子が解らない)の患者さんが多数存在すると推定されています。一方、DNA配列解析能力において飛躍的進歩を遂げた次世代シーケンサーの登場により、これまで解析が難しかった小家系からの疾患責任遺伝子の同定が可能になると期待されていました。

研究の内容

共同研究グループは、近親婚家系に発症した精神運動発達遅滞を伴うARCA罹患者2名に対し次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析*1を行い、患者2名からsynaptotagmin XIV遺伝子(SYT14)のホモ接合性変異を同定しました。SYT14のmRNAはヒト、マウス脳内(特に小脳)において発現することをTaqManTMリアルタイムPCR法で確認し、抗SYT14抗体を使用した免疫染色ではSYT14がPurkinje細胞*2に局在することを確認しました(図1上段)。さらに同変異をもつタンパク質を培養細胞に強制発現すると、野生型では細胞膜近傍への分布が認められるが、変異型は小胞体内に蓄積することもわかり(図1下段)、同定した変異がARCAの原因となっている可能性が強く示唆されました。
本研究では、SNPタイピング*3を用いたhomozygosity mapping*4、連鎖解析*5とエクソーム解析を併用することにより小規模な家系から疾患候補遺伝子を絞り込むことが可能であることを示しました。この発見により分泌小胞、膜輸送系の障害が神経変性疾患を発症する新しい機序となりうることが示され、脊髄小脳変性症さらには精神運動発達遅滞の発症機構の理解がさらに進むと考えられます。

図1

マウス小脳におけるSYT14の局在。Purkinje細胞(緑色に染色、矢印)に選択的に局在していることが確認された。

培養細胞内では野生型SYT14(左、緑色)と変異型SYT14(右緑色)で分布が異なり、変異型SYT14は小胞体マーカー(赤色)と共局在することを示した。

用語解説

*1 エクソーム解析: ゲノムのエクソン領域に対し、プローブを設計してエクソン領域を濃縮し、次世代シーケンサーを用いてエクソン領域を包括的に解析する方法。

*2 Purkinje(プルキンエ)細胞: 小脳にある神経細胞。神経細胞の中でも際立って大きく特徴的な形をした細胞である。

*3 SNPタイピング: ゲノム上に存在するSNP(一塩基多型,single nucleotide polymorphism)の塩基情報を解析すること。

*4 homozygosity mapping(ホモ接合体マッピング): ゲノム上のホモ接合領域を同定することにより、劣性遺伝性疾患の原因遺伝子が存在する部位を明らかにする方法。

*5 連鎖解析: ヒトまたは動物の表現型情報と、いろいろな遺伝子座における対立遺伝子の伝達の様式との関連を遺伝統計学的に解明する方法。