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HOME  >  研究成果  > 松本直通教授らの研究グループが、先天性大脳白質形成不全症の原因遺伝子を発見!

松本直通教授らの研究グループが、先天性大脳白質形成不全症の原因遺伝子を発見!

−低分子RNAと髄鞘化不全の新たな知見−

横浜市立大学学術院医学群・才津浩智准教授・松本直通教授(遺伝学教室)らは、小脳萎縮と脳梁低形成を伴うび漫性大脳白質形成不全症 (Diffuse cerebral hypomyelination with cerebellar atrophy and hypoplasia of the corpus callosum;HCAHC)の原因遺伝子を発見しました。この研究は、神奈川県立こども医療センター・小坂仁部長、国立精神・神経医療研究センター・佐々木征行部長、亀田メディカルセンター小児科・高梨潤一部長、横浜市立大学学術院医学群・濱田恵輔助教(第一生化学教室)らとの共同研究による成果であり、横浜市立大学先端医科学研究センターが推進している研究開発プロジェクトの成果のひとつです。

☆研究成果のポイント
○次世代シークエンサーを用いた全エキソンシークエンス*1により原因遺伝子同定に成功
POLR3A遺伝子あるいはPOLR3B遺伝子の複合ヘテロ接合体*2がHCAHCを引き起こす
○両遺伝子は、RNA polymeraseⅢ(PolⅢ)複合体のコアになるサブユニットをコードしており、同定した変異は、PolⅢ活性を低下させると予想された
○PolⅢが転写を行っている低分子RNA (tRNAなど)と髄鞘化不全との因果関係を示唆

研究概要

先天性白質形成不全症は、中枢神経系の髄鞘の形成不全により大脳白質が十分に構築されないことによっておこる脳の病気で、多様な疾患が含まれます。小脳萎縮と脳梁低形成を伴うび漫性大脳白質形成不全症 (HCAHC)は、2009年に国立精神・神経医療研究センター・佐々木征行部長らが初めて報告した新しい白質形成不全症です(図1)。3歳頃から徐々に進行する歩行失調、振戦、緩徐言語を認め、軽度から中等度の精神運動発達遅滞を呈します。原因不明で、根本的な治療方法はありません。共同研究グループは、全エキソンシークエンスを3名の患者で行い、1名においてPOLR3A遺伝子の、2名においてPOLR3B遺伝子の複合ヘテロ接合体を同定しました (図1)。POLR3AおよびPOLR3B遺伝子はRNA polymeraseⅢ(PolⅢ)複合体のコアになるサブユニット(RPC1およびRPC2)をコードしています。複合体の3次元モデルの解析から、同定された変異はPolⅢ活性を低下させると予想されました。PolⅢはtRNAと5SrRNAを含む大多数の低分子RNAをコードする遺伝子を転写しており、これらの低分子RNA量が不足することにより髄鞘化不全が起きると考えられます。 本研究はHCAHCの原因遺伝子を明らかにしたばかりでなく、髄鞘化不全の病態に低分子RNAの不足が関与しているという新たな知見を加えました。今後の髄鞘化不全の病態の解明と、治療法の開発に大きく寄与することが期待されます。

注釈

*1全エキソンシークエンス: ハイブリダイゼーションの技術を用い、ゲノム上のエキソン領域(蛋白質をコードする領域)を選択的にキャプチャし、高効率に濃縮してから次世代シーケンサーを用いて包括的に解析する方法。
*2複合ヘテロ接合体: 2つある遺伝子座のそれぞれに変異がある状態。

図1

(A) T2強調MRI横断像。白質に高信号領域があり、髄鞘化障害が認められる。
(B) T1強調MRI矢状断像。脳梁の低形成(矢頭)と小脳の低形成(矢印)が認められる。
(C) 患者で認めた6つの変異とコードする蛋白質上での位置を示す。POLR3BがRPC2をコードし、POLR3AがRPC1をコードしている。すべての変異が複合ヘテロ接合体で認められた。

※本研究成果は、米国の科学雑誌『American Journal of Human Genetics』に掲載されます。(米国10月27日:日本時間10月28日オンライン発表)
※この研究は、厚生労働省、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構、日本学術振興会の研究補助金により行われました。