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HOME  >  研究成果  > 薬理学 五嶋教授_アルツハイマー認知症

薬理学 五嶋教授ら研究グループがアルツハイマー型認知症を発症する新たなメカニズムを発見!

横浜市立大学学術院医学群 山下 直也 助教、中村 史雄 准教授、磯野 俊成(大学院生)、五嶋 良郎 教授(薬理学教室)らは、アルツハイマー型認知症の原因分子であるタンパク質が、別のタンパク質のリン酸化を引き起こし脳内に蓄積することで認知機能が低下する、認知症発症のメカニズムを発見しました。
この研究は、名城大学 鍋島 俊隆 教授、ツルスム・アルカム研究員、富山大学 新田 淳美 教授、早稲田大学 大島 登志男 教授、理化学研究所脳科学研究センター 御子柴 克彦 教授らとの共同研究による成果であり、横浜市立大学 先端医科学研究センターが推進している研究開発プロジェクトの成果の一つです。

☆研究成果のポイント
○アルツハイマー型認知症の原因分子であるアミロイドベータというタンパク質が、クリンプというタンパク質のリン酸化修飾を起こすことを発見した。

○遺伝子改変によって、クリンプのリン酸化修飾を受けないマウスを作製し、アミロイドベータの効果を検討したところ、アミロイドベータの持つ学習記憶を抑制する効果が全く見られなくなった。

○アルツハイマー病脳においては、リン酸化修飾を受けたクリンプが蓄積していることが報告されているため、本知見はリン酸化クリンプの抑制がアルツハイマー病の発症や進行の阻止に有効であることを示唆する。

研究概要

アルツハイマー病をはじめとする認知症は、急速な高齢化社会を迎える日本や、世界中の国々で、最も重大な問題の一つです。しかし現在でも根本的な治療には至っていないのが現状です。私達は今までにはない全く新しい治療戦略につながる発見に至りました。
アルツハイマー型認知症の原因はまだ十分に明らかになっていませんが、現在までのところ、アミロイドベータというタンパク質が脳内に蓄積することが原因になっているという説が有力です。このアルツハイマー病の患者さんの脳内に、アミロイドベータに加えて翻訳後修飾であるリン酸化という変化を受けたクリンプ*1と呼ばれるタンパク質が多く蓄積していることがわかっていました。もし、このクリンプのリン酸化修飾をおこさなければアミロイドベータの効果は消失するかもしれません。このことをクリンプのリン酸化修飾が起きないように遺伝子を改変したマウス*2で調べたところ、アミロイドベータというアルツハイマー病の原因を引きおこす物質の効果は、このマウスでは見られないことを発見しました。まず、シナプス長期増強とう、学習の能力を表す一つの指標を用いて検討したところ、アミロイドベータが抑制しているシナプス伝達効率の上昇効果(グラフ上、赤)が、リン酸化がおきないマウスでは全くみられないことがわかりました(図1)。
さらに、認知する能力を新しい物体だとわかる能力を指標に評価しました。予めアミロイドベータを投与した普通のマウスと「リン酸化が起きないマウス」の両方でテストしたところ、クリンプのリン酸化を起こさないマウスではアミロイドベータの認知機能の低下が全くみられませんでした(図2)。これらは動物での結果ですが、ヒトのアルツハイマー病でもクリンプのリン酸化を抑えるという方法が認知機能の低下をおさえるのに有効かもしれないことを示しています。
(注釈)
*1クリンプ:脳内で神経回路を形成するときに必要なタンパク質。神経細胞の形や向きを決める重要な働きがある。類似の機能を持っている分子が10種類あるため、これらの仲間が協働して働いていると考えられる。
*2正常なクリンプはリン酸化修飾を受けて体の中の情報の伝達を担っている。このマウスでは、リン酸化修飾を受けるアミノ酸をリン酸化修飾を受けないアミノ酸に変えた分子をもっているため、クリンプのリン酸化は起きないようになっている。

(図1)クリンプのリン酸化修飾がアミロイドベータの毒性作用の抑制に必要

(図2)クリンプのリン酸化が起こらないマウスではアミロイドベータによる認知機能障害が起きない

※この研究成果は、8月29日付けの『ニューロサイエンスリサーチ』電子版にオンライン掲載されました。

※本研究は、文部科学省「イノベーションシステム整備事業 先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」の一環として、また、独立行政法人 科学技術振興機構、日本学術振興会、公益法人 武田科学振興財団、一般財団法人 横浜総合医学振興財団の研究補助金により行われました。

お問い合わせ先

(本資料の内容に関するお問い合わせ)
公立大学法人横浜市立大学 学術院医学群 薬理学
山下 直也、五嶋 良郎
TEL:045-787-2593 / 2594
E-mail:ynaoya-ycu@umin.net (山下)
goshima@med.yokohama-cu.ac.jp (五嶋)

(取材対応窓口、資料請求など)
公立大学法人横浜市立大学 先端医科学研究課 立石 建
TEL:045-787-2527 FAX:045-787-2509 sentan@yokohama-cu.ac.jp