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国際総合科学群 ゲノムシステム科学専攻 足立典隆教授の研究成果がPNASとJEMに掲載!

学術院 国際総合科学群 ゲノムシステム科学専攻 足立典隆教授のヒト遺伝子改変細胞を利用した研究成果が、権威ある米国科学雑誌2誌に掲載されました。

「重症複合型免疫不全症(SCID)の発症に関わる分子メカニズムに関する研究成果」
“Artemis C-terminal region facilitates V(D)J recombination through its interactions with DNA Ligase IV and DNA-PKcs.”  〜『Journal of Experimental Medicine』に掲載(2012/4/23)〜

「治療関連性の急性骨髄性白血病における染色体転座のメカニズムに関する研究成果」
“Model for MLL translocations in therapy-related leukemia involving topoisomerase IIβ-mediated DNA strand breaks and gene proximity.”
  〜『Proceeding of the National Academy of Science of the United States of America』に掲載(2012/5/21)〜

こうした研究成果は、がんや免疫疾患に関連する遺伝子の機能解析やゲノム異常の解析、発症メカニズムの解明におけるヒト遺伝子改変細胞の有用性を示すものです。なお、本研究は、横浜市立大学戦略的研究推進費、先端医科学研究センター研究開発プロジェクト、文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究、などの助成により行われました。

研究の概要

足立教授らの研究グループは、ヒト細胞の遺伝子を効率良く改変できるシステムを開発し、さまざまなヒト遺伝子改変細胞の作製に成功しています。こうした細胞株は、遺伝子機能解析に有用であるだけでなく、種差を考慮する必要のない優れた疾患モデルや薬効評価ツールとして、医療・創薬分野への幅広い応用が期待されます。

【成果 1 】
ヒト遺伝子改変細胞のこうした特長を活かし、まず重症複合型免疫不全症(SCID)の発症に関わる分子メカニズムを明らかにしました。
SCIDは免疫細胞の異常を原因とする先天性疾患の総称で、10個以上の原因遺伝子が同定されています。その多くは、V(D)J組換えと呼ばれるリンパ球特異的な遺伝子組換えに働くタンパク質をコードしておりARTEMIS もその一つです。ARTEMIS の遺伝子産物ArtemisはDNA切断酵素であり、V(D)J組換えの過程で生じる切断DNA末端の加工に関わっています。DNA切断酵素としての触媒ドメインはArtemisのN末端側にあり、C末端側は酵素活性には関係ないことが知られています。
しかし、SCIDのなかにはArtemisのC末端側の異常を原因とする症例もあるため、本研究では、このC末端領域の機能に着目して研究を進めました。その結果、ArtemisがこのC末端領域を介してDNAリガーゼIV と相互作用していることが初めて明らかとなりました。DNAリガーゼIV はV(D)J組換えに必須のDNA連結酵素であることから、この直接的な相互作用の異常が疾患発症の原因であることが強く示唆されます。

【成果 2 】
さらに、治療関連性の急性骨髄性白血病における染色体転座のメカニズムについても明らかにしました。
エトポシドなどに代表されるトポイソメラーゼII 阻害剤は、がん化学療法剤として小細胞肺がんや悪性リンパ腫、子宮頸がんなど、広範ながんの治療に使用されています。一方で、トポイソメラーゼII 阻害剤はゲノムDNAに傷をつけてしまうため、しばしば染色体転座を誘発し、これが二次発がんの原因となっています。
しかし、そのメカニズムの詳細は明らかになっていません。本研究では、遺伝子ターゲティングによってトポイソメラーゼII の機能を欠損ないし低下させたヒト細胞を作製・解析することで、抗がん剤エトポシドによる染色体転座のメカニズムの一端を解明しました。具体的には、トポイソメラーゼIIβに依存したゲノムDNA鎖切断と転写(DNA情報をmRNAにコピーする過程)が染色体転座の直接的な原因になっていることを初めて突き止めました。

今後の期待

今回、ヒト遺伝子改変細胞を用いた研究によって、免疫不全症の発症の原因や、抗がん剤が誘発する染色体転座の原因の一端が明らかとなりました。いずれの場合においてもゲノムDNA鎖切断とその細胞応答(遺伝子修復)が深く関与していることがわかっています。これらのメカニズムを詳細に解析することで、疾患の予防や治療、また、副作用の少ないがん治療の開発に貢献できると期待されます。