YCU 横浜市立大学

前のページでは、共通教養の3つの科目群がいかに「大学で何を学ぶのか」という問題に関わっているのかを示しました。しかし、中には、大学に入学した時点で大学で学ぶことはおろか、職業まで決まってしまうケースもあります。

たとえば、医学部の医学科などはよい例かもしれません(もっとも将来的には、臨床あるいは基礎医学にするのか、臨床にしてもどの分野の専門医になるかという選択が必要になるかもしれません)。 そういう学科では教養は不要なのでしょうか?

もちろん、そんなことはないという、それなりに無難な解答をすることは容易なことです。人間である以上、人生を生きていくのに問題解決能力は必要だからです。ですから、より限定的に、あるいは、短期的に、教養は在学中に、あるいは、専門の勉強に役立つのか?という問い方に変えてみましょう。

当然のことながら、教養の一部となっているコミュニケーション能力は研究を続けていく上で必須です。レポートをまとめる能力、わかりやすい発表をする能力、そういったものは大学の中のゼミや研究室での論文講読などで絶対に必要になります。事実、論文講読の際に多くに時間が費やされているのは、内容そのものというよりも、発表の仕方などについてです。これに費やされる時間が本来の内容そのものの検討にあてられたら、もっともっと専門の勉強ができるはずです。

あるいは、これでも限定的な状況設定かも知れません。どちらかといえば、講義室で朝から晩まで講義を受ける、知識を吸収するということのほうが多いかもしれません。確かに、教養の一部となっているコミュニケーション能力はゼミ形式、双方向形式の授業では役に立つかもしれません。しかし、普通の(一方的に講義を受ける形の)授業では、そんなことを身につけていったいなんの役に立つのか?というのはもっともな疑問です。

先に答えを提示しましょう。仮に、自分で学ぶことができたとします。そうすると、より多くの知識を得たり、より深い専門の勉強ができるようになります。そして、実は、自分で学ぶ力というものは、実は、教養の一側面に他ならないのです。

なぜでしょうか?自分で学ぶには、最初に何を学ばないといけないのかがはっきりとわかっていないといけません。あるいは、ちょっとした疑問を解決しようと思ったときに、自分がどこがわからないのか、どこが疑問なのかをはっきりさせる必要があります。余談ですが、先生に質問しようと思っても「どこがわからないのか言ってごらんなさい」といわれて、何もいえなくなったことはありませんか?この誰しも思い当たる経験を思い出せば、何を学ぶのか(何がわからないのか)ということをはっきりさせることは、かなり重要なことであることがわかるでしょう。すなわち、これが問題を「正しく」認識するということなのです。

次に、本を読む、ネットで調べる、人に教わるというプロセスが続きます。当たり前のことですが、この調べていく過程で、わかっていることがわからなくなったりして、振り出しに戻る、つまり、問題の立て方の変更を迫られることもあるかもしれません。

最後に、知識、情報、学問などを運用して解決させるわけですが、このプロセスは見やすいと思います。

こうして考えていくと、自分で学ぶということは、自分のわからないこと、疑問に思ったことなどを問題設定して解決していくことの連続から成り立っているといえます。しかも、汎用の問題解決能力という一種いかがわしいものとはちがって、一つの科目や学問の勉強の途上で求められることであるということです。すなわち、問題の認識もそれなりに類型的ですみ、答えを探索する範囲もかなり限られています。もちろん、道具として用いる知識、情報、学問もだいたい限られてきます。

では、なぜ、自分で学ぶことが必要なのでしょうか?大学の講義で先生から教わればよいだけではないか?と思った人もいるかもしれません。

現代は恐ろしい速度で専門化、細分化が進んでいます。最先端のことでも、すぐに古い情報と化してきます。こうなってくると、大学在学中に必要なすべてのことを教わるのは不可能になってきます。こういう状況では、自分に必要なこと、わからないこと、もっと掘り下げたいことなどを自分で補うより他にありません。逆に、将来的には、学生自身の自学自習をある程度前提にしてカリキュラムを組まないと専門性の質の保証ができなくなるのではないかという予感もしてきます。

その意味で、専門性を維持向上させるためにも、きちんと自分で学ぶ力を身につけておく必要があり、どこかで、自分だけで、そいうことを体験しておく必要があります。そして、横浜市立大学では、その一つの体験の場として「教養ゼミ」を用意してあります。

よく、1年次前期から専門の勉強をしたいという声が寄せられます。だったら、それを「教養ゼミ」でやればよいのです(「教養ゼミ」のほとんどのクラスでは自分の好きなテーマを選べます)。

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